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ESG情報と企業の任意開示の可能性:第1回 投資の本質と投資家について

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金融庁による日本版スチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コードの策定、経産省による伊藤レポートの公表、そしてGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)中期計画に「ESG投資の検討」が盛り込まれるなど、いま、企業のESG情報開示のあり方が大きく変わろうとしています。
今後、企業はどんな情報を発信するべきか――当連載ではSRI、ESG、統合報告の動向から、任意開示が企業価値に影響を与える可能性について探っていきます。

私は上場企業の任意開示の可能性を探るうえで、まずは「投資とは何か」、投資の本質的な部分を理解することが重要だと考えています。


投資とは何か

そもそも投資とは何でしょうか。
私たちは、日常生活からビジネスの場まで、実にさまざまな投資を行っています。

たとえば、農業は最も分かりやすい例です。農業に従事する方々は、将来に収穫する農作物のために、畑を耕し、種を蒔き、農作物の生育を阻害する要因を取り除き、収穫期を迎えます。農作物は一朝一夕で実がなるものではなく、長期的なプロセスを踏むことでもたらされる成果です。農業は私たちの食生活を支える重要な投資活動と言えます。

教育も投資の一つで、自己投資と言い換えることができます。私たちは資金を教育機関に投資し、その見返りとして新たな知識や資格を手に入れます。
教育もすぐに結果が出るものではなく、数ヶ月から数年かかる場合がほとんどです。

企業経営において最もわかりやすいのは、設備投資や研究開発などです。企業は将来の利益獲得に向けて、経営陣が話し合い、戦略を立てて、何に資金を投じていくかを決定します。例えば、新しい工場を建設して設備投資を増額し、研究開発費を増やすなど、事業基盤の強化や新規事業の開拓をしています。

本質的に、投資には「『未来』により大きな収穫(収益)を得るために、『いま』資金を投じる」という意味が込められています。対して短期で株式を売り買いする行為は、投資ではなく、「投機」という言葉が的確といえます。目先の利益を追う行為は、投資とはいえません。投資と投機の違いを明確に把握しておくべきと私は考えます。

投資という行為は未来に向けて行うもので、不確実性やリスクが表裏一体で伴います。不確実性やリスクは、未来の収穫に対してマイナス要因となる可能性があります。これらをどれだけ予測し、マイナス要因を回避するかが投資意思決定の上での大きなポイントになります。

高崎経済大学の水口剛先生は「投資とは、不確実な環境の下で、社会を持続可能にするための知恵」と著書で述べています。私は投資の本質的な意味を考える上で、この言葉は的確な表現と考えています。


個人投資家と機関投資家

金融市場における投資家は大きく2種類に分けられます。個人投資家と機関投資家です。

個人投資家は、文字通り「個人」がお金を出し、株式などの有価証券や保険などに出資する人です。資金はすべて自前で用意し、投資によるリターンもリスクもすべて個人に帰属します。

一方で、機関投資家には信託銀行や投信・投資顧問のようなアセット・マネージャーと、年金基金や保険会社のようなアセット・オーナーが存在します。アセット・オーナーは自ら運用を行うケースと、アセット・マネージャーへ運用を委託しているケースがあります。例えば、日本の厚生年金と国民年金の積立金の管理・運用を行っているGPIFはアセット・オーナーであり、自ら日本版スチュワードシップ・コードを受け入れ表明するとともに、運用委託先のアセット・マネージャーに対してもスチュワードシップ責任を果たすことを求めています。

機関投資家は個人投資家よりも運用する金額が大きいため、金融市場への影響が大きく、損失リスクへの対応も重要になってきます。そのため、ファンド(投資信託)や債券などに分散して投資を行い、できるだけリスクを回避しながらリターンを上げようとします。

投資における「短期」は当日から数日の売買、中・長期とは数ヶ月から数年での売買をイメージしてください。これは、個人投資家、機関投資家の両方に該当します。

機関投資家には、短期で売り買いを繰り返す短期運用の機関投資家と、中・長期運用の機関投資家の2種類に大別できます。特に中・長期運用の機関投資家については、次回以降に触れるESG情報(環境、社会、ガバナンス情報)を投資判断材料として重視しており、本コラムでは、中・長期運用の機関投資家に焦点を当てていきます。

近年、長期運用の機関投資家は非財務情報を重視し、企業に対して積極的な開示を求め始めています。この動きは、非財務情報を、「長期運用では結果的に、安定的で、より高い利益を上げられる情報源」として期待していることを意味しています。現状は、財務関連以外の情報をどのように伝えるか、任意で作成するアニュアルレポートやCSRレポート、ウェブサイトなどを通じて、各社が工夫を凝らしています。


では、機関投資家は財務以外の情報に、これまでどのような関心を示してきたのでしょうか。次回は、米国教会が宗教的な価値観に基づき、「非倫理的な」企業を投資対象から排除することを発端とした、SRIの変遷について触れていきます。


※ 機関投資家が、投資先企業やその事業環境等に関する深い理解に基づく建設的な「目的を持った対話」(エンゲージメント)などを通じて、当該企業の企業価値の向上や持続的成長を促すことにより、「顧客・受益者」の中長期的な投資リターンの拡大を図る責任(金融庁)


【出張講座のご案内】

「本連載の内容をより深く知りたい、より多くの社員と共有したい」というご要望を受け、執筆者の植木が訪問し、出張講座を行います。

本連載では書ききれなかった情報を、別途オリジナルの資料にまとめ、プレゼンテーションとディスカッションの時間を設けて理解を深めていきます。

基礎講座と特別講座の2種類からお選びいただけます

基礎講座は、なぜ統合報告が議論されるようになったか、基礎編プレゼンテーション(60分)とディスカッション(30分)を行います。
特別講座は、「具体的なレポートの作成事例、作り方を知りたい」というご要望を踏まえ、基礎講座のプログラムに事例紹介(60分)を加えてお伝えします。

受講料/社(人数問わず)

基礎講座(90分)5万円
特別講座(150分)8万円
※いずれも税別。
※交通費について:首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)は上記に含まれます。その他の地域は、別途交通費実費1名分を申し受けます。

お申し込みはCSRコミュニケートお問い合わせフォームよりご連絡ください。


講師:植木 定史

株式会社YUIDEA(旧:株式会社シータス&ゼネラルプレス) CSR革新室長。 横浜国立大学大学院 環境情報学府 修士課程修了。上場企業の広報IR担当を経て、IR系コンサルティング会社にてIRコンサルタント業務に従事。2009年より当社にてCSR・IR領域をはじめとしたコーポレートコミュニケーションのプロデューサーとして活動。日本パブリックリレーションズ協会認定PRプランナー。


参考・引用文献

「CSR革新室」とは?

YUIDEA
「CSR革新室」とは、CSRコミュニケートを運営する株式会社YUIDEA(ユイディア)内にある1つの部署です。よりよい社会づくりに貢献すべく、企業のCSR活動、CSRコミュニケーションの革新を支援しています。

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