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ESG情報と企業の任意開示の可能性:第3回 長期でリターンを得る投資判断材料に

今回は、本連載を通じたキーワードである「ESG情報」について解説します。長期運用の機関投資家は、「ESG情報」をどのように投資判断に利用しているのでしょうか。さらに、ESG情報の活用に関する日本の状況を紹介します。


ESG投資のメインストリーム化が進む

日本では、責任投資原則(PRI)の署名機関は30機関となっています。このPRIでは、冒頭に「私たち機関投資家には、受益者のために長期的視点に立ち最大限の利益を最大限追求する義務がある」と明記しています。つまり、機関投資家は長期で投資リターンを上げていくことが当然の義務であり、責任投資においても同じことがいえると定義しています。そのうえで、責任投資原則では投資手法として、ESGの要素を考慮するよう求めているのです。

日本におけるESG情報活用の現状については、今年3月に経済産業省が「投資家等を対象としたESG情報の活用状況に関するアンケート調査」の結果を公表しています。この結果は、回答した「国内投資家の大半(82.7%)が投資に際してESG情報を重視」するとともに、「その過半(58.3%)が全てのファンドもしくは概ね全てのファンドでESG情報を活用」していると回答しており、「ESG投資の『メインストリーム化』の傾向」が見て取れるというものでした(図1)。

図1

図1(出典:投資家等を対象としたESG情報の活用状況に関するアンケート調査[概要])

また、ESG情報の活用の視点としては、「長期的な投資先の企業の価値創造の向上の要因として捉えるため」という回答が最も多く、「リスク回避やネガティブスクリーンといったマイナス要素の排除の観点よりもポジティブな観点から評価しようとする姿勢」がうかがえるという調査結果を公表しています(図2)。日本において、ESG情報はメインストリームの投資判断材料として活用が進んでいる、という分析です。

図2

図2(出典:投資家等を対象としたESG情報の活用状況に関するアンケート調査[概要])


ESG情報と株価パフォーマンスとの関係

2012年に東京証券取引所グループとグッドバンカーが発表した「ESGで企業を視る」では、ESGスコアの高い銘柄群に投資した際のパフォーマンスを試算したグラフが掲載されています(図3)。

この試算グラフでは、「東証市場第一部銘柄を業種および大型株/中小型株に分類した上で、各区分から2012年5月時点のESGスコアが高かった銘柄を抽出して作成した100銘柄のポートフォリオが、過去5年間に示していた動きをTOPIXおよびTOPIX500(TOPIX構成銘柄のうち時価総額・流動性が大きい500銘柄で構成される指数)と比較」しています。試算上は、ESG銘柄インデックスはTOPIXおよびTOPIX500を上回るパフォーマンスとなっており、ESG情報が株価にも好影響を与える可能性を示唆しています。

図3

図3:ESG銘柄インデックスの試算
(出典:東京証券取引所グループ テーマ銘柄 ESGで企業を視る P.6)

※ 通常の株価指数と異なり、過去5年間の上場・上場廃止企業やESGスコアの変更等の状況を考慮していないため、通常の指数の推移と異なる可能性があります。(注:「ESGで企業を視る」より」


日本の公的年金基金がESG投資を「検討」へ

ここまでは、株式投資におけるESG情報の扱いをみてきましたが、いま日本でESG情報に関係する最も関心の高いトピックといえば、今年4月に発表された年金積立金管理運用独立行政法人(以下GPIF)の中期目標(第3期)における記載ではないでしょうか。

GPIFは、この中期目標で「2.運用の目標、リスク管理及び運用手法」の中の「(6)株式運用における考慮事項」に、「株式運用において、財務的な要素に加えて、収益確保のため、非財務的要素であるESG(環境、社会、ガバナンス)を考慮することについて、検討すること」と記載しています。

運用資産額が137兆円(2014年12月現在)を超える、世界最大の機関投資家であるGPIFが、収益確保のためにESG投資を「実施」する段階に入れば、メインストリームの株式投資におけるESG情報の影響力はさらに高まると私は考えます。

日本においては、ESG情報はまさに今から機運が高まるテーマといえます。

では、機関投資家は「どこから」ESG情報を入手しているのでしょうか。次回は企業が任意で発行する情報開示ツールである「アニュアルレポート」と「CSRレポート」の変遷、ESG情報との関係について取り上げます。


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講師:植木 定史

株式会社YUIDEA(旧:株式会社シータス&ゼネラルプレス) CSR革新室長。 横浜国立大学大学院 環境情報学府 修士課程修了。上場企業の広報IR担当を経て、IR系コンサルティング会社にてIRコンサルタント業務に従事。2009年より当社にてCSR・IR領域をはじめとしたコーポレートコミュニケーションのプロデューサーとして活動。日本パブリックリレーションズ協会認定PRプランナー。


参考・引用文献

「CSR革新室」とは?

YUIDEA
「CSR革新室」とは、CSRコミュニケートを運営する株式会社YUIDEA(ユイディア)内にある1つの部署です。よりよい社会づくりに貢献すべく、企業のCSR活動、CSRコミュニケーションの革新を支援しています。

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