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ESG情報と企業の任意開示の可能性:第5回 統合報告書の役割

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前回は企業が任意で発行するアニュアルレポート(AR)、CSRレポートの変遷と、ESG情報との関係について触れました。今回はこれからのESG情報と企業の任意開示の可能性として、統合報告書の役割について取り上げます。


統合報告書は「ストーリー」を伝えるツール

企業の任意開示の新たな可能性は、統合報告書の活用にあります。企業が機関投資家に対して発行する統合報告書は、どのようなコンセプトの下で、何を開示すべきでしょうか。

今後は、統合報告書は企業の「ストーリー」を伝えるツールと位置づけ、投資判断に直結するESG情報もストーリーに含めて開示することが重要と考えています。

では、なぜストーリーが重要なのかを考えてみましょう。

企業には、経営理念・ミッションが必ずあります。企業は経営理念・ミッション実現のために中期経営戦略を策定し、日々の事業活動を行っています。日々の事業活動は、財源、強み、技術、人材といったさまざまな有形・無形の価値を蓄積します。これらを原資に、企業は未来のさらなる成長を目指してどのように活動していくかを考え、必要な投資を行い、計画を実行に移します。

経済活動がグローバルな規模で連鎖する現代においては、自社だけが儲かれば良いという考えは通用しません。自社が展開する地域社会や従業員との信頼関係の構築や、事業活動で影響を与えざるを得ない気候変動への対応など、社会的課題との関わりを無視できない、つまり稼ぎ方が問われています。

このような社内・社外の状況を「統合的に」考えて、ストーリー化することは、投資家にとってその企業を理解しやすく、有効な投資判断材料になるのではないでしょうか。ストーリー化のプロセスが統合報告書で開示されれば、投資家に「読まれる」ツールとなります。

本コラムの第1回にあるとおり、投資という行為は未来に向けて行うもので、不確実性やリスクが表裏一体で伴います。統合報告書の制作では、リスクと機会の両面を踏まえ、これまでのARとCSRレポートの構成・内容に捉われない新しい発想での構成や、社内・社外の制作体制の抜本的な見直しが必要なのではないでしょうか。


統合報告書に求められるESG情報

「非財務情報」という言葉は非常に広範であり、すべての非財務情報が投資に直結するとは限りません。しかし、第3回で触れたように、ESG情報は機関投資家が長期でリターンを得る投資判断材料としてすでに活用が進んでいます。投資家は、その企業の将来に影響を与え得るリスクと機会の両面を、財務情報に加え、ESG情報も用いて分析するようになってきたといえます。ESG情報もストーリーに含めて開示することで、統合報告書の内容は進化し、ESG投資が促進され、企業と投資家の双方にとってメリットになるものと考えています。

では、具体的にどのようなESG情報が求められるのでしょうか。

これまでは、事業と直接かかわりのない寄付や地域貢献活動も掲載されてきましたが、今後は、投資判断に直結するESG情報の掲載が優先されます。

例えば、E(Environment)は二酸化炭素の排出や温室効果ガス排出に関する情報、資源の枯渇への対応、生態系の変化といった内容です。S(Social)は、動物愛護、児童労働、多様な働き方の支援、長時間労働の見直しなどが考えられます。最後に、G(Governance)は、役員報酬の考え方、経営上の重要な意思決定のプロセス、社外取締役の役割などです。

企業がこれらの情報を時間軸で整理して開示することは、投資家に対して投資リターンとリスク低減の両面において有効な説得材料を提供でき、さらにストーリーの確からしさを高めることにも繋がるのではないでしょうか。

一方、投資家にとっては、ストーリー性の高い情報を統合報告書で入手することで、企業をポジティブに評価する可能性が高まるのではないでしょうか。

昨今、日本版スチュワードシップ・コードやコーポレートガバナンス・コードの発行によって、企業と投資家の対話を求める動きが加速しています。次回(最終回)は、統合報告書を用いた企業と投資家との「対話」について触れていきます。


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「本連載の内容をより深く知りたい、より多くの社員と共有したい」というご要望を受け、執筆者の植木が訪問し、出張講座を行います。

本連載では書ききれなかった情報を、別途オリジナルの資料にまとめ、プレゼンテーションとディスカッションの時間を設けて理解を深めていきます。

基礎講座と特別講座の2種類からお選びいただけます

基礎講座は、なぜ統合報告が議論されるようになったか、基礎編プレゼンテーション(60分)とディスカッション(30分)を行います。
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基礎講座(90分)5万円
特別講座(150分)8万円
※いずれも税別。
※交通費について:首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)は上記に含まれます。その他の地域は、別途交通費実費1名分を申し受けます。

お申し込みはCSRコミュニケートお問い合わせフォームよりご連絡ください。


講師:植木 定史

株式会社YUIDEA(旧:株式会社シータス&ゼネラルプレス) CSR革新室長。 横浜国立大学大学院 環境情報学府 修士課程修了。上場企業の広報IR担当を経て、IR系コンサルティング会社にてIRコンサルタント業務に従事。2009年より当社にてCSR・IR領域をはじめとしたコーポレートコミュニケーションのプロデューサーとして活動。日本パブリックリレーションズ協会認定PRプランナー。


参考文献

「CSR革新室」とは?

YUIDEA
「CSR革新室」とは、CSRコミュニケートを運営する株式会社YUIDEA(ユイディア)内にある1つの部署です。よりよい社会づくりに貢献すべく、企業のCSR活動、CSRコミュニケーションの革新を支援しています。

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