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環境省と経産省の「長期低炭素施策」。その違いは?

2017年3月に環境省が「長期低炭素プラン」を公表してから1カ月も経たないうちに、経済産業省から「長期地球温暖化対策プラットフォーム報告書」が公表されました。どちらも長期的な温室効果ガス排出削減を目的としていますが、何が異なるのでしょうか。

今回は、その違いについて紹介していきます。
各プランの主要な点を、下記にまとめました。

経産省案 環境省案
目標 2050年80%削減は難しいことから、我が国全体の排出量を超える地球全体の排出削減に貢献する「カーボンニュートラル」を目指す。 パリ協定を踏まえて作成した絵姿の実現を目指す。温室効果ガスは、2050年に80%削減を目指す。
政策の方向性 「国際貢献」「産業・企業のグローバル・バリューチェーン」「イノベーション」にまで視野を広げ、地球儀を俯瞰した温暖化対策を長期戦略の核としていく。 ①既存技術、ノウハウ、知見の最大限の活用
②新たなイノベーション創出・普及
③有効なあらゆる施策の総動員
具体的政策案 <地球温暖化対策「3本の矢」>
①国際貢献:JCM、公的ファイナンス等
②グローバル・バリューチェーン:エコカー、グリーンIT、高機能鋼材等
③イノベーション:LED、リチウム電池、CNF等
・カーボンプライシング
・環境情報の整備・開示
・規制的手法
・革新的な技術開発の推進・普及
・土地利用
・世界全体の排出削減への貢献等
カーボンプライシング 現時点で、排出量取引や炭素税といった施策を追加的に行うことが必要な状況にはない。
一方で世界各国が施策を強化することがあった際に備え、今後とも慎重な検討が必要。
低炭素社会実現に向けて有効かつ必要であることに加えて、気候変動問題と経済成長、地方創生、エネルギー安全保障の確保といった課題解決に貢献する可能性がある。
できるだけ早期の実効的な導入が期待される。
環境関連情報開示 バリューチェーン全体における環境負荷を「見える化」することは、リスクの事前把握につながり、企業自身の長期的な投資判断やリスク評価につながる。 消費者が環境の視点を含めて商品・サービスを選択することが可能となるような仕組みが重要。
また、事業者自らの直接排出量のみならずサプライチェーン全体での算定が必要。
おわりに 本報告書で提示した方向に基づき、他の施政策との間で調和をはかりつつ、具体的なアクションを構築していくことが求められる。 本ビジョンを踏まえ、あらゆる主体において、大幅削減に向けた取組が更に加速されることを期待する。

両プランの相違点

「目標」については、環境省のほうが2050年80%削減に対して、本気で取り掛かる姿勢がうかがえます。「政策の方向性」や「具体的な施策案」はそれぞれ違いがあるものの、共通としてあるのは「イノベーション」でしょうか。目標達成を目指す環境省は、施策案の中に「カーボンプライシング」を挙げ、その可能性に期待しています。

どちらも「おわりに」では、パリ協定や伊勢志摩サミットの首脳宣言を踏まえて策定することになる長期戦略策定について触れ、そのために様々なステークホルダとの検討が必要であるという内容が記されています。

日本経済団体連合会「低炭素社会実行計画」の中間レビューと見直し

同じく2017年4月には経団連が2013年にまとめた「低炭素社会実行計画」の中間レビュー結果を公表しました。 これはもともと1997年から「環境自主行動計画」として取り組んできたもので、「日本鉄鋼連盟」「日本自動車工業会・日本自動車車体工業会」「石油鉱業連盟」など業界別に目標を策定しています。中間レビューを経て一部目標が見直され、主体間連携、国際貢献、革新的技術開発の促進による目標達成を示しています。

パリ協定等では、2020年までに長期的な温室効果ガスの排出目標を提出することが求められることから、環境省を中心として2050年及びそれ以降の低炭素社会に向けた長期的なビジョンについて審議が進められています。

中間レビューにおいて目標見直しを行った業種(一部抜粋)

見直し前 見直し後
日本自動車工業会・日本自動車車体工業会 2020年度のCO2総排出量を、1990年度の33%減とする。 2030年度のCO2総排出量を、1990年度の38%減とする
石油鉱業連盟 国内石油・天然ガス開発事業の鉱山施設における温室効果ガス(随伴CO2を除く)の2030年度の排出量を2005年度実績から6万トン-CO2削減する。 国内石油・天然ガス開発事業の鉱山施設における温室効果ガス(随伴CO2を除く)の2030年度の排出量を2013年度実績から28%削減する。

2020年までには、日本としての2050年までの長期削減目標を決定しなくてはなりませんが、経産省と環境省の考え方は異なっており、統一までの道筋は険しいものになりそうです。しかし経団連のように企業の自主的や、金融機関が環境に配慮した投融資を促す動きもあり、今後も関係者の動きを注視していく必要がありそうです。


【参考資料】
経済産業省:長期CO2対策プラットフォーム報告書
環境省:長期低炭素プラン
経団連:経団連低炭素社会実行計画

【参考記事】
環境省が策定した「長期低炭素ビジョン」とは

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