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透明性を欠くバングラデシュのビル監査

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2013年にバングラデシュで起きたラナ・プラザビル崩壊は世界を震撼させる出来事であったが、バングラデシュ政府は未だに縫製業界の捜査結果を公表していない。ヒューマン・ライツ・ウォッチの報告書によれば、事故前日には、ビルの数カ所からひび割れがみつかり、テナントのアパレル工場が避難したが、その翌日、ビル内の工場に来ることを強制された労働者もいたという。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、工場監査結果の詳細が公表されない限り、バングラデシュの縫製業に携わる人々の安全性を確保し、労働者の権利を保護することはできないと主張し、事件後に命じられたバングラデシュの工場の構造・電気・防火検査の政府報告の公表を求めている。そうした情報がなければ、労働者が工場に入り仕事をすることが本当に安全なのかを確認できないからだ。

縫製労働者の活動家グループ、AWAJ基金も当局が工場の現状改善に着手できるよう、監査結果を早急に公表するよう求めている。今までのところ、何が明らかになり、監査を行ったビルのどれほどが危険なのかも全くわからない。

監査報告書の作成を託されたバングラデシュ工科大学ビル監査コーディーター、メハディ・アハメッド・アンサリ教授は、200工場の監査結果を政府に提出したが、その公表を決めるのは政府だという。契約によれば、同大学は200フェイズにわたり約1500工場を監査することになっている。アンサリ教授によれば200工場の監査実施と報告書作成には2、3ヶ月かかるという。

同プログラムは国際労働機関の助成事業のため、すべての作業は資金が提供された後に始まる。人材不足も問題となっており、なるべく早急に監査を進めるためには経験のある監査員の増員が必須である。

監査が不透明で、労働者の健康と安全への懸念が続くことは、バングラデシュで商品を製造するアパレルメーカーにとっても憂慮すべき事態のはずだ。この問題への様々な取組みは遅々として進まず、資金も不足したままだ。

労働者の権利擁護団体は、各アパレルメーカーに対して、監査予定の1,500工場のみならずバングラデシュの4,500の工場の安全性を改善するための資金を出すよう働きかけている。労働者権利組合(WRC)の分析によれば、これらにかかる費用は衣服1点につき10セント、または5年間で30億米ドルだ。たいした額ではないが、労働者の健康と安全にこうした努力が傾けられるかは不明で、実現は疑わしいと私はみている。

しかし、実際のところ、本来であれば安価ではないファッションを好んで買う人が多いことが、状況改善に立ちはだかる障害となっている。小売価格10ドルのジーンズ、また3ドルでTシャツが売られるために相当なコスト抑制が行われているのは事実だ。そうしたコスト管理に向け企業は、よりコスト高になってきた中国各地からバングラデシュに製造を移してきた。しかし、多くの場合、低コストの犠牲となっているのが労働者の健康と安全だ。東南アジアの国々は熟練労働者が自慢で管理職は英語も話せるが、工場の安全基準を遵守する努力はあまりなされていない。

投資家にとってもこれは憂慮すべき問題だ。もしアパレルメーカーが危険な労働搾取や現代版奴隷に関わっていることになれば、消費者の懸念も増す。安価な服の実際のコストを考え始めた消費者はそのブランドの商品を購入しなくなるかもしれない。ブランドの魅力や信頼性は、消費者の見方や気持ち次第だ。ブランドが社会責任を果たせなければ(工場の安全性が確保されていることを示すことも含まれる)、コスト抑制のために大きな代償を払うことになるのは自社だと、企業も気づくことになるかもしれない。



by Richard Welford
CSRアジア週刊ニュース日本語翻訳版

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