Global CSR Topics

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インクルーシブ・ビジネスの機会:生活の再建と災害への強靭化

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12月に開催されるCOP21(気候変動枠組条約締約国会議)を前に、世界各地から異常気象による壊滅的被害が報じられている。エルニーニョ現象が太平洋での台風発生頻度を高め、台風24号(コップ)はフィリピンに豪雨をもたらした。また北太平洋東部で観測史上最強のハリケーンが発生したためメキシコが非常事態宣言を出し、さらに2015年は記録史上、最も高温な年になると思われる。

朗報としては、このような異常気象への備えが格段に増し、多数の犠牲者や甚大な被害・損失の防止につながっている。2013年の台風30号(ハイエン)の教訓から、先週には台風24号(コップ)がフィリピンに上陸する前に50万を超える人びとが避難した。

気候変動と頻発する異常気象の関連については、依然として議論の余地がある。しかしアジア太平洋地域が気候変動と自然災害の影響を特に受けやすいことは明らかである。これには気象災害と地震や火山噴火といった地球物理学に起因するものが含まれる。早期警戒体制や平時における災害対応調整メカニズムの整備など、災害予防と緊急対応の向上により潜在的損失や被害を軽減することが可能となる。一方で、アジアに暮らす大多数の人びとの生活は深刻な危機にさらされている。自然災害や異常気象で最も打撃を受けるのは小規模農家や自給農家である。なぜなら雨が少なすぎても多すぎても収入源が断たれ、家族を養うことができなくなるためだ。

生計を多様化し強化することで、持続可能な収入創出の機会が高まり、小規模農家は将来のリスクに対して強靭化を図ることができる。自然災害などの短期的打撃への脆弱性を低下させるだけでなく、貧困や公共サービス・教育へのアクセス不足といった慢性的な問題の解決へとつながる。企業にとっても、生計の強靭化プログラムを支援することでインクルーシブ・ビジネスに道が拓ける可能性がある。

2013年11月、超大型台風30号(ハイエン)がフィリピンを襲い、国民の5人に1人が生計を立てるココナッツ産業が壊滅的被害を受けた。3,300万本の木がなぎ倒され、それに伴い100万戸の小作農の生計が破綻した。大多数がココナッツを唯一の収入源としていた。ココナッツの木を植えなおして育てたとしても、収益が上がるには6~8年かかる。そこでアメリカの農業大手カーギル社とフィリピン・ビジネス社会開発財団(非営利の民間部門ネットワーク)が協働し、レイテ島で被災した農家の生活再建と生計の多様化の支援を図った。このプロジェクトはココナッツ農家の再建にとどまらず、実験農場で400戸の農家に研修を行い、野菜生産や養殖業、畜産・養鶏業を収入源と食糧源に盛り込んだ統合的な農業経営を推進するものであった。新たに植樹したココナッツの木が実を結ぶまでの間、換金作物を導入することで農家の収入源が広がった。カーギル社はレイテ島では事業を展開していないが、ココナッツ農家を重要なステークホルダーと位置づけている。当プロジェクトを通しカーギル社は、将来的にインクルーシブ・ビジネス・モデルの展開を目指している。ココナッツの原材料と間作物・換金作物からの収穫を自社の第一次製品の加工に活用する可能性も広がる。

小規模農家との協働は、農業産業に大きな利益となる。強靭化へ投資することで、農産物の安定的供給につながるためだ。しかし他の業界のチャンスにもつながる。例えば、今年ネパールを襲った大地震の後にアバリ財団が建設した耐震家屋(earthquake resistant homes built by the Abari Foundation)など、低コストで災害に強い建物への需要は大きい。現場で調達できる粘土や砂、砂利、セメントを活用し、同財団は通常の三分の一のコストで断熱性の高い耐震家屋を建設している。このような再建プロジェクトを活用し、地元の石工へ建築方法改善のトレーニングを行うことができる。さらに大規模災害からの再建の機運をとらえて雇用を創出し、地域の建築基準の改善を図ることもできる。

市場を基盤とした自然災害への対応および復興を支援することも企業には大きなチャンスとなる。企業はバリューチェーンで大きな役割を果たす地域の業者やサプライヤーの再建、さらに地元の魚市場や農産物加工施設といったインフラの復旧を支援することができる。

脆弱な世帯の強靭化を図り、災害が起こる前、災害時、さらに災害後にわたり安定した生計を確立することは理に適っている。脆弱性を高めた要因である貧困やその他の開発課題の解決にもつながる。インクルーシブ・ビジネス・モデルがいかに強靭化への投資向上に貢献できるか、さらに災害対応に費やされる資金の一部を長期的な開発プログラムに活用する方法を模索する必要性が高まっている。

執筆:ヘレン・ロース
CSRアジア週刊ニュース日本語翻訳版

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