Global CSR Topics

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ESG報告を活用し投資家の期待に応える

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ポストCOP21

ESG(環境・社会・ガバナンス)問題に呼応する形で市場/規制当局は取組みを進めつつある。昨年のCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)で採択されたパリ協定の影響は広範囲に及んでいる。例えばフランスでは、グリーンエネルギー法案を可決し、低炭素経済へシフトする姿勢を示した。投資家やファンドマネージャー、保険業に対して投資の過程においていかにESGを組み込んでいるかを報告し、投資による温室効果ガス(GHG)排出の概要を示し、さらに低炭素経済に向けて積極的に融資するよう求めている。アジア地域では香港証券取引所が新たなルールを策定し、2017年3月までに香港の上場企業に対して、ESGの成果を年次報告書と共に公表するよう求めている。メインボード上場ルールの付則27によりESG報告を規定しているため、発行者は「遵守か説明」の義務を負うこととなる。

投資家への配慮

2010年のメキシコ湾原油流出事故や昨年のフォルクスワーゲン排ガス不正事件以降、投資家は投資の長期的インパクトを考慮する際にESGデータを加味する流れである。このような投資家が投資を行う際はリスク管理の改善が需要な要因となっている。こうした中、モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナルが作成しているACWI ESGインデックス(MSCI ACWI ESG Index)のようなESG投資株価指数が、時価総額加重平均型株価指数を0.53%上回った(2016年3月1日を通し)。一方でグリーンボンド市場は、クリーンエネルギー・プロジェクトを後押しするアップル社の15億ドルのグリーンボンド発行により活況を呈した。

こうしたことは、従来の投資家が投資の判断材料にESGを加える流れが広がっていることを映し出している。例えばBNYメロン・グループ傘下の資産運用会社ニュートンは、日々の投資判断においてESGを考慮に入れている。ゴールドマン・サックスは米国証券取引委員会に届出を行い、ESGにフォーカスした上場投資信託に乗り出した。運用資産総額4.6兆ドルに達する世界最王手の資産運用会社ブラックロックは2015年、ポートフォリオを構築する際にESG分析を盛り込むと発表した。スウェーデンにおける公的年金の運用機関AP1(Sweden’s AP1)は、管理する企業の資源効率に注目し、ESGチームが「三角測定方法」を活用して情報の検証、パートナーの多様化と自社の分析を図っている。

責任投資原則(PRI)によると、ESG要因の重要性および投資家への潜在的リスクを考慮するファンドは2006年から55兆ドル増加した。2016年4月にモルガン・スタンレーの「持続可能な投資課題(Morgan Stanley’s Sustainable Investing Challenge) )」でパネリストの一人が発言したように、「投資家として考えてみると、持続可能な投資は世界を狭めているのではなく、広げているのだ。」

2016年4月6日、ニューヨーク・タイムズ紙に掲載されたDavid Gelles氏の記事(recent article by By D. Gelles (April 6, 2016) )は、投資家がESGをいかにして投資判断の本流に組み込んでいるかについて考察している。「サステナビリティ」と「責任ある投資」は定義があまりに広いため、多くの投資家は判断を下す際に自らの検索ツールを作成している。リスクとリターンを理解する上で、多くの投資家がデータの一貫性と信頼性を示す必要に迫られている実態からも伺える。同記事はMSCI社やサステナリティクス、ブルームバーグ、トムソン・ロイター等が企業のESG状況を測定するツールを提供しているにもかかわらず、昨今、多くの投資家がサステナビリティランキングでは飽き足りず、投資に先駆けて追加的リサーチを行う傾向にある点を強調している。

ESG報告の価値を最大化するには

このような状況に照らし、企業はESGに関する情報開示を進めることで投資家を惹きつける大きなチャンスにつながる。ESGにより透明性とアカウンタビリティーが高まり、さらにESG問題への企業の取組みを強調する好機となる。企業は既存の投資家のみならず潜在的投資家に対して、リスクと運用上の諸問題にいかに積極的に対処しているか情報提供することができる。ESG、グローバル・レポーティング・イニシアティブ(GRI)ガイドライン、WWFの新たなレポート、国際統合報告評議会(IIRC)等、多様なツールやガイドラインを活用することで企業は成果を上げることができる。

投資家はESG報告書以上を求めているため、あらゆるコミュニケーション源でESG問題を取り上げることが成功の鍵となる。年次報告書の中に盛り込んだり、CSR/ESG報告書、ホームページやプレスリリース、その他のグループ企業を通して取り上げたりすることができる。例えばリンク・リアルエステート・インベストメント・トラストは主要ステークホルダーである投資家のニーズを満たすべく、統合的アプローチを取った。同社はESG要因がいかに企業の付加価値を高めるかに関する情報をサステナビリティのデータに盛り込み、投資家の理解が深まった。

サステナビリティ分野で先進的な取組みを進める企業の多くは、独自のESG業績報告システムを策定している。例えばユニリーバやマークス&スペンサー、バージンモバイルは、自社のシステムにのっとりESG目標と成果を報告し、他のガイドラインは活用していない。

投資家や株主、ステークホルダーに簡潔な言葉で語りかけ、重要課題を網羅し、データと情報画像を活用することで良いESGコミュニケーションにつながる。

さらに投資家の知識が豊富になり、ESG業績の分析に精通する中で企業が取るべき次のステップは、戦略的にサステナビリティ・イニシアティブを進め、コミュニケーションすることである。

執筆:ユギータ・バレイサイテ
CSRアジア週刊ニュース日本語翻訳版

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