Global CSR Topics

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企業トップにおけるジェンダーの多様性

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世界的広告代理店サーチ・アンド・サーチの会長であるケビン・ロバーツ氏は、先週インタビューの中で女性社員は「垂直的な向上心」を欠いていると発言、これが原因となり休職に追い込まれた。女性社員に管理職ポストを打診しても少なからず辞退されるのは、女性の向上心が「垂直的」でなく「内包的」であるためだとし、女性はキャリアで上り詰めるよりも良い仕事を重んじているとの考えを示した。さらにジェンダー差別を巡る論争は「終わったことだ」と続けた。

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ロバーツ氏の一連の発言を受け、サーチ・アンド・サーチの親会社であるパブリシス・グループの最高経営責任者は、「ジェンダーの平等はトップから推し進めるべきであり、パブリシス・グループとしてインクルージョン(包摂)の重要性を軽んじる発言を決して許さない」と即座に反論を表明した。さらにグループ内の全社員に向け、企業理念および多様性に反する行動やコメントは断固として容認できない点を再確認する内部文書を発行した、と強調した。

これに対し、広告業界のエキスパートで、女性のリーダーシップを提唱している、広告代理店BBH前社長のシンディ・ギャロップ氏は、ロバーツ氏の発言が(アメリカの)広告業界にいるリーダー達の内なる声を代弁しているに過ぎないと主張した。実際に世界の6大広告会社のトップはすべて男性である。広告業界での女性の活用とリーダーシップを図る「3%ムーブメント(3% Movement)」が2016年に発表した調査(study)によると、アメリカの広告業界で女性が占める割合は46.7%であるにもかかわらず、女性のクリエイティブ・ディレクターは11%にとどまるとした。他の業界を見ると、2015年に全米トップ1,000社のうち女性の最高経営責任者はわずか4.6%であった。

香港に本拠をもつNPOコミュニティビジネスが2014年にベンチマーキング調査(benchmarking study)を行い、アジア6ヵ国(中国・香港・インド・日本・マレーシア・シンガポール)に展開する多国籍企業30社のさまざまなレベルでのジェンダー多様性に関するデータを検証した。この結果、トップレベルでの女性人材の定着が大きな課題である点が明らかとなった。

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2014年にマッキンゼーが行った調査(study)が証明しているように、実際には多くの女性がキャリアで上り詰めることを望んでいる。男性社員と比べて女性社員が上級職に対して意欲的でない場合でも、企業は先入観を持たずに自社の多様性を見直し、家族に優しい環境づくりを進めるべきである。社会におけるジェンダーロールを否定はしないが、女性が男性と同じように家庭と仕事を両立させる支援を受けられた場合には、意欲や「垂直的な向上心」がそがれることはないだろう。

ロバーツ氏の主張に反して、女性リーダーの人材不足は、若手・中間レベルに多くの女性社員を抱える企業には大きな問題となっている。社員の65%を女性が占めているサーチ・アンド・サーチを例にあげると、全社員の65%が上級ポストに意欲的でないとするのは非現実的ではないだろうか。

企業が女性社員を活用し、人材の流出を防ぐには、女性管理職の登用に長ける優良事例が参考となるだろう(女性に優しい企業トップ100はここから)。さらに女性社員のニーズと要望を聞き出し、正確に把握する必要もある。女性リーダーの推進はCSRの「必須要件」にとどまらず、企業の人材定着、後継者育成、さらに先々の戦略的発展においても不可欠となっている。

【参考資料】
http://www.businessinsider.com/saatchi-and-saatchis-kevin-roberts-placed-on-leave-after-saying-the-gender-diversity-in-advertising-debate-is-over-2016-7

http://www.businessinsider.com/kevin-roberts-on-women-in-leadership-roles-2016-7

執筆:カレン・ポン
CSRアジア週刊ニュース日本語翻訳版

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