Global CSR Topics

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自然の真価を過小評価する野生動植物の違法取引

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野生動植物の取引は、世界における違法取引の中で麻薬密売、武器密輸、人身売買に続く第4位の規模となり、年間1,600億米ドル(USD$160 billion )を稼ぎ出す市場であると推定される。世界の多くの絶滅危惧種にとり、生存を脅かす最大の脅威の一つとなっている。違法取引の大部分は中国とベトナム、インドネシア、タイで行われているが、実際はアジア各国で輸出入が横行し、ダッカ・バンコク・クアラルンプール・香港が世界的拠点となっている。

一般に最も広く知られている違法取引は、象牙とトラの皮、フカヒレであるが、はるかに多くの様々な野生種と製品が取引の対象となっている実態がある。この中には、世界で最も密売されている動物で、絶滅の危機に晒されているセンザンコウ(pangolins)も含まれている。違法漁業も水産資源にダメージを与え、インドネシアでは5,000隻の外国漁船が地域漁業に年間240億米ドル(USD$24 billion )の損害を与えている。さらに違法伐採も問題であり、中国は年間40億米(USD$4 billion)ドル相当の木材を輸入している。

開発途上国や発展途上市場、貧しいコミュニティが富を見込んで野生動植物を密猟、消費、乱獲して供給源となっているのが現実である。さらに文化的・伝統的な習慣と価値観が社会的通念や行動の変化を妨げ、これに輪をかけて選択肢が限られているため、変化により生計が脅かされる場合が多い。

この結果、タイのエビ産業に見られるように、ダメージは環境面にとどまらない。2014年にロンドンのガーディアン紙が世界で最も名の通った水産加工メーカーと小売業者を、人権侵害と現代版奴隷制に関わっていると報じた(The Guardian newspaper issued a story)ことは周知の通りである。結果的に水産物業界全般とタイ経済に影響を及ぼし、さらに欧州連合(EU)は早急に改善策が取られない場合には、タイからの輸入を全面禁止するとの警告を発することになった。

「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約:CITES)」やIUCNの「絶滅のおそれのある生物種のレッドリスト(IUCN Red List of Threatened Species)」など多角的な取組みは存在するが、消費者や業界横断的な支援が広がらない限り、野生動植物の乱獲は続いてしまう。




中国国境に運ばれる違法な野生動植物製品の量と価格が増大した結果、ワシントン条約を含む取組みは香港にかなりのリソースを投じている。香港は図らずもこの流通ルートの拠点となっているためだ。アジアにある他の拠点と同じく、法規制が緩く、さらに不法製品の監視追跡網が整備されていないため、違法な野生動植物の取引が低リスクで見返りの大きいマーケットを形成している。


サイ角からフカヒレまで野生動植物の最大消費国である中国は、野生生物の取引を監視・調査するトラフィック(TRAFFIC)のような組織と協働し、違法で持続不可能な取引が引き起こす環境的ダメージについて、消費者に情報提供し、意識を高める地域密着型の取組みを進めようとしている。しかし啓発活動や公共政策は道半ばにすぎない、なぜなら必要なリソースを投入し予防措置を講じなければ違法取引が続いてしまうためだ。



市民社会に広く浸透している民間セクターは、違法な野生動植物製品の取引と消費を根絶する上で、極めて重要な役割を果たしている。企業ブランドが消費者の選択と決定を左右するため、消費者が違法な野生生物や木材製品の購買を控えるよう企業側で働きかけることができる。これとは別に、民間セクターは事業リスクも抱えている。なぜなら製品に欠かせない材料の輸送や手配を含む広範なサプライチェーンの中で、知らず知らずのうちに違法製品の運搬に加担しているケースがあるためだ。通関での不正行為やマネーロンダリング、通信不正行為、恐喝などの間接的リスク、さらには企業活動にダメージを与え、評判を失墜させる直接的影響を免れないのだ。

民間セクターは自衛策を講じ、複雑な野生動植物の密売ネットワークの解明を図るグローバル・アイ(Global Eye)のような組織の支援を求め、調達元から経由地、さらに最終地におけるリスクを特定することができる。


企業はさらに社内方針を整備し、業界内での優良事例を生み出すよう働きかけ、サプライチェーンで起こりうる違法な動きを封じ込めることができる。マースク(Maersk)やDHL、エティハド航空(Etihad Airways)といった、運輸業における大手企業は、野生生物の違法取引の流れを断ち切るべく2014年に調印された「野生動物保護連盟運送特別委員会バッキンガム宮殿宣言」に名を連ねている。(宣言調印者の詳細はここからUnited for Wildlife Transport Taskforce Buckingham Palace Declaration。)

DHLの取組みが示しているように、企業はサプライヤーに対して、運送および通関時に特定の要件を義務づけることで、企業が違法を疑われる運送に積極的に関わることを阻止できる。

アジアにおける消費者意識が高まり、公共政策が整備されることで違法な野生動植物製品の需要を抑制できるまでは、水産資源、絶滅危惧種および木材、鉱物、植物を含む自然資本の持続不可能な流れは続くだろう。このため民間セクターはその影響力と活動範囲をうまく活用し、消費者の社会的変化と供給源となっている地域の経済的変革を後押しすべきである。

執筆:ニック・ウェリアス
CSRアジア週刊ニュース日本語翻訳版


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