Global CSR Topics

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炭素税と水道料金の引き上げを盛り込んだシンガポール2017年度予算

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2月20日に発表された2017年度シンガポール予算(Singapore Budget 2017)には、炭素税および水道料金の引き上げが盛り込まれている。これにより、COP21で採択された気候変動に関するパリ協定におけるシンガポールの努力目標の達成にコミットしていくことになる。同協定は、2030年までに2005年比で温室効果ガス排出原単位を36%削減し、2030年ごろに排出量がピークに達することを目標に排出量を安定化させることを目指している。政府による今回の動きは序章に過ぎないだろう。避けて通ることができない変化やさまざまな課題に対して、企業は後手に回るのではなく、先手を打つことが求められている。


2019年に導入される炭素税

2019年より、温室効果ガス1トンの排出に対して10~20シンガポール・ドル(SGD)が課税させることになる。二酸化炭素・メタンガス・亜酸化窒素・ヒドロフルオロカーボン・ペルフルオロカーボン・六フッ化硫黄の6種類の温室効果ガスを大量に排出する発電所などの産業部門が課税対象となる。シンガポール政府はこの炭素税率は他国で導入されている税率と足並みを揃えており、大規模排出事業者が経営上の意思決定において排出コストを勘案する要因となることを期待している。

首相府(PMO)傘下の国家気候変動事務局(NCCS)は、気候変動の解決に向けシンガポール国内外の政策・戦略の策定を担っている。NCCSによると、同国の大規模排出事業者は30~40を数え、その排出量は二酸化炭素25,000トンに匹敵する。2012年、産業部門の温室効果ガス排出量のうち石油精製・化学・半導体部門が大半の59%を占め、炭素税の負担も応分に重くなると見られている。

炭素税に対して真っ先に聞かれたのは、競争力が損なわれると危惧する声(Concern over the impact on Singapore’s competitiveness)であった。しかしシンガポールがより環境配慮型の政策に移行する中で、企業は戦略的チャンスと捉えていくことになるだろう。

先週月曜日、予算案の説明にあたりヘン・スィーキアット財務大臣は、政府は数年かけて炭素税を検討した上で「最も経済効率よく公正に」温室効果ガスを削減できる方法である述べた。

大臣はさらに「炭素税により、クリーンエネルギーのような新たなグリーン成長産業のチャンスに弾みがつく可能性もある。炭素税収を財源に、産業界の排出量削減に向けた取組みを支援する予定である」と述べた。

炭素税額および導入スケジュールは、3月から始まる公の協議とさらなる検討を経て最終決定される。スムーズな導入に向け、政府は企業向けにエネルギー効率改善策への支援を強化していく。これにはエネルギー効率改善のチャンスへの啓発や現行のエネルギー効率奨励策の強化、より効率的なエネルギー管理システムの導入支援などが含まれる。


水道料金は3割増しに

2017年7月より、水道料金は17年ぶりに引き上げられる。

公益事業庁(PUB)はウェブサイトに料金改定の概要を掲載している(on their website)。企業にとり、主な改定点は以下の通りである:
•2017年7月1日より、2年をかけて水道料金が30%引き上げられる。
•衛生器具料(Sanitary Appliance Fee)および下水施設手数料(Waterborne Fee)を一本化し、使用量に応じ課金する。
•2017年7月より、ニューウォーター(下水高度再生水)料金の引き上げおよび10%の保全税を導入する。
•下水施設手数料の引き上げは2017年7月と2018年7月の2回に分けて実施する。
•工業用水料金の引き上げは2017年7月に引き上げられる。

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画像ソース: PUB

シンガポールの水供給システムは(1)ニューウォーター(2)国内の貯水(3)海水淡水化(4)輸入水で構築されている。異常気象が頻発する中で、シンガポールの水消費量の60%を供給しているマレーシア・ジョホール州のリンギウ貯水池の水位が低下している。

シンガポールは1日あたり4.3億ガロンの水を消費し、このうち家庭用以外が55%を占めている。2060年までに水の需要は倍増すると見込まれている。水道料金の引き上げにより、シンガポールの水インフラを維持し、より高額な海水淡水化の財源に充てることになる。


持続可能なビジネスを保証する先手必勝策

シンガポール政府による一連の動きは目新しいものではない。世界銀行(World Bank)によると、中国・インド・日本・韓国・台湾など40ヵ国と20都市・州ではカーボンプライシング(炭素排出量の価格付け)に似た施策を導入し、今後導入していく予定の自治体も多い。企業が環境に責任を持ち、気候変動の影響に備えてプランする動きは世界的にますます広がるだろう。

企業が先手を打つには、新たに以下の5ステップを踏む必要がある。
1.使用量の現状を把握する
2.価格引き上げの影響を計算する
3.削減策を決定し、将来の目標値を定める
4.削減の進捗状況を報告する
5.リスク・シナリオ計画を通し、その他の引き上げに備えて将来的に有効な対策を立て、他社のモデルとなる

シンガポール不動産開発大手のCDL(City Developments Limited)を含む6社は、炭素税導入の発表に先駆けて、社内でのカーボンプライシング導入計画を立案した。サステナビリティ主任エスター・アン氏は「CDL社はビジネスの将来性を確保する重要性を認識し、気候に関連したリスクに対して引き続き先手策を講じていきます。リスクとは建物への物理的リスクにととまらず、カーボンプライシングや炭素税という潜在的な財務リスクも含んでいます」と述べた。同社の戦略的サステナビリティ計画にカーボンプライシングを盛り込むことで、ビジネス活動の健全性審査と、財務的価値に気候の影響をリンクさせることを目指している。「先手必勝策により、気候変動がCDL社の業績に与えうる潜在的リスクを軽減することができるのです」とアン氏は続けた。

企業はますます環境に責任を持つことを期待されている。このため、企業は後手に回るのではなく先手を打つ必要がある。CSRアジアサミット2017では持続可能なビジネスを担保する取組みについて協議する予定である。サミット詳細はこちらからCSR Asia Summit 2017

執筆: セー・ゼン・ウォン
CSRアジア週刊ニュース日本語翻訳版


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