ジェンダー不平等を解消する「大胆な変革」を
国際女性デーにあたり、これまでの進展を振り返ると同時に、さらなる変革を呼びかけ、女性を取り巻く現状と成果について考察したい。
国連は「変化する仕事の世界における女性たち:2030年までにプラネット50:50を実現しよう」というテーマを掲げ、政府と企業双方に対して2030年までにジェンダー平等を加速するよう呼びかけている。
持続可能な開発のための2030アジェンダの中で、ジェンダーに焦点をあてた目標として以下が挙げられる:
- 持続可能な開発目標4「すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進するSustainable Development Goal 4 (ensure inclusive and quality education for all and promote lifelong learning).」の達成に向けて、2030年までにすべての女児と男児が無償かつ公正で質の高い初等教育および中等教育を修了できるようにする。
- 2030年までにすべての女児と男児が、質の高い乳幼児の発達・ケアおよび就学前教育にアクセスすることで、初等教育を受ける準備が整うようにする。
- あらゆる場所におけるすべての女性および女児に対するあらゆる形態の差別を撤廃する。
- 人身売買や性的、その他のあらゆる搾取など、すべての女性および女児に対する、公共・私的領域におけるあらゆる形態の暴力を排除する。
持続可能な開発目標に向けた機運の高まりを追い風に、2030アジェンダは官民セクターのリーダーと革新者に対して、差別化を図ると同時に、変革を起こし、包摂性および平等に根ざした新たなアプローチを取ることを求めている。トップダウン型およびボトムアップ型の2方向のエンパワメントで開発目標の達成を後押しすることができる。
取締役会レベルで企業文化を変えていく
「ニューノーマル(新たな常識)」の確立には、企業文化の進化が要求される。マッキンゼー社の報告書「女性の状況2016:ジェンダー多様性の潜在能力を解き放つ職場改革(‘Women Matter 2016: Reinventing the workplace to unlock the potential of gender diversity’)」によると、職場で女性が直面する伝統的な障壁を乗り越え、ビジネスにおける女性の潜在能力を引き出すには柔軟性と適合性が鍵となる。
取締役会における多様性は企業の業績をアップし、そのプラス面を見落とした場合には競争力を削ぐことになる点を世界各地での研究結果は示している。例えば香港の上場企業を見ると、全労働者の半数は女性であるにもかかわらず、取締役会に占める女性の比率はわずか10%である(10 percent of the board members of listed companies are female)。この状況を改善し、より多くの女性をキャリア推進に向けてエンパワーするには、「ガラスの天井」を打ち破り、プラスの取組みを強化する環境を作り出す必要がある。管理職から新人社員まで組織全体で改革を断行し、社会的・文化的な制約を打破するために企業文化を変えて行かなければならない。賢い企業であれば、このチャンスを捉えて最高の人材を確保し、社員と企業が成長し業績アップを図る可能性を探っていくだろう。
農場レベルでのバリューチェーン
多くのバリューチェーンでの不平等は根深く、女性と開発の真の潜在能力を阻むことになる。ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)や教育、市場へのアクセス不足に加え、職域分離や暴力、差別は企業のみならず社会の瓦解を招くことになる。
例えば農業のバリューチェーンでは、女性は「見えざる労働力」と呼ばれ、大多数はインフォーマル・セクターや無償労働、パート労働、さらに季節労働に従事している。CSRアジアの支援のもと、オックスファムは東南アジアでのジェンダー変革と責任ある農業関連ビジネスへの投資に向けてGRAISEAプログラムを展開している。主要な農業バリューチェーンの中で女性に公正なアクセスと機会を確保するよう、企業による活動の支援を働きかけている。企業が「ジェンダー・スマートな解決策(‘gender smart solutions)」を打ち出し、女性の潜在能力開花を実現する製品とサービスの創出を呼び掛けている。
ビジネス面での有効性は折り紙つきである。女性は企業の労働力およびサプライチェーンの生産性を高め、製品と市場の質を向上させる一方、ブランドの評判を上げ顧客ロイヤルティーを促している。

出典:国際金融公社(IFC)
取締役会レベルか農場レベルかにかかわらず、民間セクターは国連の2030アジェンダ達成のために不可欠な変革を起こすリソースと影響力を持ち合わせているのだ。 CSRアジアはすべての企業に対して、変革を推し進め、知識へのアクセスと機会均等を通してエンパワメントを図るよう求めている。紋切り型のビジネスでは、世界人口の半分を占める女性を活用し損なった社会経済的チャンスやコストをカバーすることができない。進歩やイノベーション、「ジェンダー・スマートな解決策」を講じることに尻込みする企業は、成長と開発を蔑ろにし、時代遅れのビジネスアプローチを優先することになるのだ。 国際女性デーを機に、よりジェンダー・インクルーシブな世界を目指すキャンペーンへの参加はこちらから#BeBoldForChange。
執筆:ニック・ウェリアス
CSRアジア週刊ニュース日本語翻訳版
CSRアジア
CSRアジアは、国内外でCSR、サステナビリティ戦略の普及・推進事業を行っている企業、組織と連携し、持続可能な社会の実現を目指しています。企業の社会的責任(CSR)における各種コンサルティング、リサーチ、研修等を通じ、持続可能なビジネスを実現できるよう支援しています。
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