Global CSR Topics

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コーヒーと気候変動

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この数十年、コーヒーの生産と消費量は大幅に増加し、世界中で毎日22.5億杯にあたるコーヒーが消費されている。しかし今後は気候変動の影響を受けてコーヒーの安定した供給と価格が脅かされ、栽培農家は生活の糧を失う危険性が待ち受けている。

コーヒーはブラジルやベトナム、コロンビア、エチオピア、インドネシアを含む約70ヵ国にまたがる「コーヒー・ベルト」一帯の、主に途上国で栽培されている。2015年のコーヒー産業は190億米ドル規模にのぼり、1億2500万人の生計を支えている。世界での生産量の50%以上はブラジル、ベトナム、コロンビアが占めている。

現在世界で流通するコーヒー豆の約7割は、中南米・ベトナム・インドネシア・インド・東アフリカの熱帯高地で栽培される高品質のアラビカ種である。アラビカ種よりも低高度で育成可能なロブスタ種は、エスプレッソとインスタントコーヒー市場向けである。アラビカ種の栽培に最適な気温は18-21℃、23℃を超える環境では生育が早すぎるために収穫量が減り、香りと味が落ちてしまう。気温の影響を受けにくいロブスタ種は、果実の熟成が早く、病害虫に強い品種であるが、品質はアラビカ種に比べて劣るため安価である。

コーヒーの経済

アラビカコーヒー豆の価格は、2014年に前年の2倍近い1ポンド当たり2米ドルをつけた。これは世界のコーヒー豆の40%近くを生産しているブラジルでの天候不順が主な原因であった1。ブラジルのコーヒーの約25%を生産する南東部のミナスジェライス州では、雨季にあたる12~2月の雨量が通常のわずか10%であった。さらに気温も高く、1月の平均最高気温が長期平均気温を3-4℃も上回る地域があった。これに追い打ちをかけたのが、中米で蔓延したコーヒーさび病である。ベトナムでは長引く干ばつと季節外れの低温により、ロブスタ種の収穫減が予測されている。さらに東アフリカでも雨不足がコーヒー生産地に打撃を与えた。

ベトナムを含むアジア地域を襲った干ばつにより、2016年にはコーヒー豆の価格が高騰した。さらに日照りに見舞われたブラジルでは、ロブスタ種の生産量が11年ぶりの最低水準となる940万トン(m.t.)を記録し、サン・ガブリエル・ダ・パーリャでの生産量は30%も落ち込んだ。ブラジルのコーヒー・ベルトを襲った3年連続の干ばつにより、ロブスタ豆の在庫は枯渇し、国内価格は44%も上昇した。世界最大のインスタントコーヒー生産・輸出国であるブラジルの業界団体は、9月以降、新規の輸出契約締結を停止している2

降水パターンの変化が収穫量に影響

コーヒーの種類により適応する気候帯が異なるため、その栽培は気候の変動に大きく左右される。温暖化と大雨や渇水などの降水パターンの変化は、コーヒーの収穫量や質、病害虫に影響を及ぼし、すでに栽培農家は悪影響を被っている。2014年には干ばつによりブラジルの収穫量は3分の1に落ち込み、2012年には異常高温と高地での降雨によりコーヒーさび病が中南米で蔓延した。これまでは低温でさび菌の生息には適さないとされたコロンビアの山岳地帯で発生した疫病により、5億米ドル相当の作物の損失を招き、グアテマラでは作物の50%に壊滅的な打撃を与えた。コンゴで発生し、その後コーヒー・ベルト一帯に広がったコーヒーノミキクイムシにより、年間5億米ドルを超える損害が出ている。2001年以降、気温と降水量の上昇によりタンザニアやウガンダ、インドネシアなどに広まり、今世紀に入りこれまでより300メートルも標高の高い地域にも生息し、キリマンジャロ山でも確認されている。

気候変動による打撃を最も受ける可能性が高いのは、2,500万の栽培農家を抱えるアラビカ種の栽培地帯である。メソアメリカなど、緯度と標高が低い地域が最大のリスクに晒される一方で、緯度と標高の高い地域では目に見えるダメージは比較的小さいだろう。2050年までにコーヒー栽培に適した地域は半減し、現在ブラジルや中米、ベトナムでアラビカ種を栽培している地域の80%が栽培に不適となる恐れがある。赤道付近に分布している生産地に変化が生じ、より標高の高い山へ移るだろう。しかしながら、東アフリカやアジアにおける森林など他の土地活用との軋轢が生じ、コーヒー生産国からの移民労働者の流失を招くだろう。さらにより標高の高い場所へ生産地が移ることで、コーヒー栽培の80-90%を担う小規模農家は苦境に立たされることになる。3,4,5

スパイスへの切り替えは解決策のひとつ

2080年までには、栽培農家にとり貴重な遺伝資源である野生のコーヒーが絶滅する恐れがある。同時に、気候変動に対して最も脆弱な国々の多くがコーヒー輸出国である。2015年に60キロ入りコーヒー豆を1,000万袋輸出したホンジュラスとニカラグア、グアテマラは、ベトナムと共に1990年代以降に気候関連の損害額が大きいトップ10に名を連ねている。6

コーヒーに依存する国々と農家は気候変動に適応しなければならない。ニカラグアのコーヒー業界は4億米ドルに上る輸出収入を稼ぎ出し、何十万人もの雇用を生み出している。これまでアラビカ種を栽培してきたニカラグアは、2年連続の干ばつと胴枯れ病に見舞われ、ほとんどのコーヒー農園と何百もの小規模生産者がダメージを受けて以降、ロブスタ種の栽培に力を入れている。こうした変化によりアラビカ種の生産とブランド力が損なわれることを危惧する声が生産者からあがっている。

コスタリカではコーヒーが輸出農産物の第3位を占め、40,000軒の農家を支えている。アラビカ種の栽培のために、プランテンなどの果樹をコーヒー農園に植えてマイクロクライメイト(微気候)を創り出し、土壌の流失を食い止め、水の濾過の改善を図っている。しかしながら植生を変えてから、最初の収穫には3年を要するため、農家は1ヘクタール当たり8,000米ドルの資金援助を必要としている。農家は雨水を活用し、施肥方法にも注意を払い、いわゆるF1種と呼ばれるハイブリッド品種であるコスタリカ95やブラジル・オバタ種などの病害虫に強い品種に乗り出している。さまざまな取組みを進めているが、急変動する気候の中でコーヒー栽培を続けて行くには早急な解決策を特定する必要がある。7

近い将来、コーヒー生産に適さない地域が出てくるだろう。中米にある農家の中にはコーヒーの木に替わり、カカオの木やターメリックや生姜などのスパイスへの切り替えを図っているところもある。

1. Climate Change Impacts to Drive Up Coffee Prices, 2014
2. Biggest Instant-Coffee Exporter Shuns New Sales as Drought Bites, 2016
3. Bunn, C. et al., 2015: A bitter cup: climate change profile of global production of Arabica and Robusta coffee, Climatic Change, 129: 89. doi:10.1007/s10584-014-1306-x
4. Bunn et al., 2015: Multiclass Classification of Agro-Ecological Zones for Arabica Coffee: An Improved Understanding of the Impacts of Climate Change. PLoS ONE 10(10): e0140490.https://doi.org/10.1371/journal.pone.0140490
5. Ovalle-Rivera, O. et al., 2015: Projected Shifts in Coffea arabica Suitability among Major Global Producing Regions Due to Climate Change, PLoS ONE 10(4): e0124155.
6. Kreft, S. et al., Global Climate Risk Index 2017: Who Suffers Most From Extreme Weather Events? Weather-related Loss Events in 2015 and 1996 to 2015 (Bonn: Germanwatch e.V., 2017).
7. Coffee Producers in Costa Rica Use Science to Tackle Climate Change, 2016

執筆:リタ・ユー
CSRアジア週刊ニュース日本語翻訳版


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