Global CSR Topics

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子どもの権利の企業部門

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アメリカの歌姫ホイットニー・ヒューストンは1980年代を代表するバラード曲「最も素晴らしい愛(The Greatest Love of All)」の中でこう歌った:「子ども達は、私達の未来だと私は信じている;道を切り拓いていかれるように 丁寧に教えるの」。強い信念を歌い上げたが、メッセージ自体は目新しいものではない。なぜなら子ども達はこれまでも常に私達の未来であったからだ。しかし誰が、いかにして「道を切り拓いていかれるように 丁寧に教えるの」かについては、目新しい変化が見られる。

企業部門では、子ども達と子どもの権利をビジネスの一環として捉える機運が高まっている。利益と事業目的は相反するのではなく、企業の成長は短期的利益のみならず、長期的な社会的発展にも左右されることを理解している。さらに子ども達の課題に取り組むには、チャリティー活動に限るのではなく、若者が現在直面している喫緊の課題の解決に真摯に取り組む必要があるとの認識が高まっている。教育へのアクセスや性的搾取の撲滅、オンラインでの誹謗中傷、強制移住、清潔で安全な環境へのアクセス、そして忘れてならない児童労働の問題と多岐にわたっている。

子どもの権利が事業活動の中でいかなる役割を果たしているか理解する上で、子ども達をステークホルダーとして捉える視点が出発点となる。子ども達は消費者であり、社員の家族であり、将来の働き手とリーダーになっていくのだ。子ども達の成長を支援し、子どもの権利を事業および地域社会に組み込むことは、社会だけでなく企業としての成功の鍵となる。事業活動とサプライチェーンの中で子どもの権利を無視した失敗を裏付ける事例を戒めとすべきである。

子どもの権利においての企業

昨年発効した持続可能な開発目標(SDGs)の中では、目標を2030年までに達成するには、企業が変化を起こす機動力である、もしくは機動力となるべきだという点が強調されている。事業を展開する地域社会において、企業は雇用を生み出し、人的資源や環境資源を消費するなど、経済を牽引する要となっている。政府が全てを一手に担うことは不可能であり、NGOも制約を抱えている中、企業はノウハウとリソースを持ち、さらに変化を起こす意識も高まっている。しかしこの意識を実際の行動に移す必要があるのだ。

グローバル・チャイルド・フォーラムが発行したベンチマーク報告書「東南アジアにおける企業部門と子どもの権利」は、同地域での進捗状況と展望を測定する起点となる。ボストン・コンサルティング・グループと協働し、同地域に展開する約300社のトップ企業が、いかに子どもの権利に取り組み、報告しているかの評価を行った。(レポート(英文)はこちら

調査結果から、多くの企業が子どもの権利に関するプログラム支援やコミュニティ投資を進めていながら、取締役会や戦略的なビジネス分析のレベルではまだ子どもの課題について取り上げられていないことが分かる。主な調査結果は以下の通りである。

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子どもの権利確立を目指す企業例

「事業活動に上手く子どもの権利を組み込み、サステナビリティの取組みの最優先課題としている企業は、取締役会レベルでも率先して支援していることを示しています。企業システムの最高レベルから取り組むことが不可欠です」と、グローバル・チャイルド・フォーラムのリサーチ部長フィオーナ・ロットバーグ氏は述べている。

では企業には何ができるのか。ユニセフと国連グローバル・コンパクト、セーブ・ザ・チルドレンが2012年に策定した「子どもの権利とビジネス原則(The Children’s Rights and Business Principles。)」は、企業が職場や商業界、地域社会において子どもの権利にどう取り組んだらよいかの行程表を示している。企業が子どもの権利を尊重し、推進する具体策が10原則にまとめられている。

2016年5月に開催された「東南アジアに関するグローバル・チャイルド・フォーラム」の場で、アジアで最大規模の多国籍企業サイム・ダービー社でグループのサステナビリティを統括するサイモン・ロード氏は、10原則を実践に移す必要性を強調した。「多国籍企業である当社は、地域の視点を通してグローバルな視野に立つべきだ。SDGsが横串となり、コミュニティ・レベルで推し進める『子どもの権利とビジネス原則』が当社のフレームワークとなる。全社員のために、子どもに安全で優しい職場環境を整えていく」とした。

課題解決のためには

ボストン・コンサルティング・グループ・マレーシアの共同経営者で代表取締役のリック・ラムリ氏は、ベンチマーク報告書からの考察を基に、今後の取組みの方向性について次のように言及した。「東南アジアに展開する企業は戦略的プログラムやチャリティー寄付を通して子ども達の課題に貢献をしているのです。多くの企業は教育や健康、栄養などの活動を支援するCSRプログラムを展開しています。」これらは素晴らしい取組みであるが、企業の日常業務や中核的事業からかけ離れた活動となっている点をラムリ氏は指摘している。例えば製品の安全性と安全なマーケティングを確保しつつ、児童労働と性的搾取を予防する仕組みを導入するなど、新たな取組みを生み出すチャンスがあるのだ。

では企業が取りうる中核的活動とはどういうものか。いくつかの実例から検証できる。ある建設会社は、移住労働者の子ども達の存在に配慮しつつ、子どもの視点を現場に活かしている。またあるテレコム大手企業は、サステナビリティを越え、子ども達と教員向けの教育・トレーニングのためのオンライン学習チャンネルを提供している。従業員の子ども達が児童労働に従事することなく、必ず学校に通えるよう生活賃金を保証している靴メーカーがある。さらに子どもの安全を守り、児童虐待と人身売買のリスク削減に向けて地域のNGOとの協働を図るホテルチェーンもある。他にも多くの実例が挙げられるが、フォーラムが開催された5月を通して、ソーシャルメディアで#30ways30daysキャンペーンを展開し、様々な企業の活動をクローズアップした。アジア企業が国内市場を越えて国外に成長の活路を見出す中で、子どもの権利により積極的に関わるようになっていることは朗報である。子どもの権利を擁護することで、より広い市場への道が拓け、株主とステークホルダー双方に価値を創出することができるという認識が企業部門で高まっている。こうした機運こそ、歌のメッセージとなるだろう。


グローバル・チャイルド・フォーラムについて

グローバル・チャイルド・フォーラムは、9月26-27にバンコクで開催されるCSRアジアサミットで、子どもの権利についてのセッションを行う。この中で企業の実例を検証し、画期的なリサーチや先進事例、さらにリスク評価やプラニング向けの様々な無料オンラインツールを紹介する。本セッションの詳細については近日中に発表予定。

グローバル・チャイルド・フォーラムは2009年にスウェーデン王室により創設され、革新的な考えと知見の共有、ネットワーキングに尽力する企業が、子どもの権利について活発に討議する場となっている。カール16世グスタフ国王が名誉会長を務める同フォーラムは、世界の子ども達のために豊かで持続可能、公正な社会を実現すべく、企業は連携を図っていく力と責任があるとの信念のもと、企業が事業活動と地域社会に子どもの権利を組み込むチャンスを模索している。会議の開催に加え、リサーチやベストプラクティス、リスク評価のツールを提供しているグローバル・チャイルド・フォーラムの詳細はこちら

Resources:
To download the Corporate Sector and Children’s Rights in Southeast Asia benchmark report, please visit:www.globalchildforum.org
For more information on how Sime Darby integrates children’s rights into their work, read Global Child Forum’s Sime Darby deep Dive at www.globalchildforum.org

執筆:リンダ・ロディング(グローバル・チャイルド 広報マネージャー)
CSRアジア週刊ニュース日本語翻訳版


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