Global CSR Topics

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ステークホルダー・エンゲージメントによる価値の創造

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ステークホルダー・エンゲージメント抜きにCSRは成功しない。上手くエンゲージメントを図ることで、企業はビジネスの成功を左右しうる人々が何を期待しているか理解することができる。アジアの証券市場がサステナビリティに関する一層の情報開示を迫るのに伴い、ステークホルダー・エンゲージメントも進歩している。残念ながら多くの企業にとりステークホルダー・エンゲージメントとは、サステナビリティ報告書の中でマテリアル(重要)な課題を特定せよとの要件を満たすためだけの通過儀礼的なものであり、その重要性が見落とされている。では企業は見栄えのよい重要課題のマトリックスを作成する以上に、ステークホルダー・エンゲージメントからいかなる価値をどのように生み出すことができるのだろうか。

サプライチェーンにおける透明性確保

まず、ステークホルダー・エンゲージメントを怠った場合のダメージは、5年近く前のアップル社の事例からも明らかである。とりわけ事業とサプライチェーンの持続可能性について疑問視する声への対応の遅れから、アップル社は批判されてしまった。例えばノースカロライナ州のデータセンターでのクリーンエネルギーについて、裏づけとなる情報をグリーンピース側に提供せず(not prorviding Greenpeace with full information) 、さらにサプライヤー工場からの汚染について調査を行った中国の環境団体に対してすぐに回答しなかったのだ(not responding at first to environmental groups in China)。一連の調査がメディアを騒がせてから初めてアップル社は反応したが、すでに評判を損なってしまった。しかし、2016年になると、アップル社はサプライチェーンの透明性を高める取組みを飛躍的に進めている。サプライヤー上位200社のリストを公表し、協働して環境パフォーマンスの改善を図るようになった。2010年からアップル社が関わるようになった前述の中国の環境NGOは、昨年「企業情報透明性指標(Corporate Information Transparency Index)」を発行し、同社が中国の中で「最もグリーンな」サプライチェーンを展開し、「中国にあるアップル社のサプライヤーの環境マネジメントは他社のベンチマークとなる」と評価した。

地域住民との真摯でオープンな対話

ステークホルダー・エンゲージメントを怠った場合、最終損益に多大なダメージを与える業界もある。例えば鉱業の社会的責任センター(CSRM)が2014年に行った調査(2014 study)によると、プロジェクト計画から予測される環境もしくは社会的影響により、採掘業者と地元住民が対立した場合、プロジェクトの進行を遅らせたり、企業に多大なコストを強いたりすることになる。調査回答の中には、30~35億米ドル規模の設備投資を伴う大型鉱業プロジェクトが、社会的対立から生産が遅れた結果、毎週22億円にも上るコスト負担を強いられたケースもある。計画の初期段階から地域住民とオープンで真摯な対話を図ることで、住民側の懸念を把握し、解決策を探り、社会的対立と大幅な遅延がもたらすリスクを軽減することができるのだ

真の価値を生み出すステークホルダー・エンゲージメントとは

一口にステークホルダー・エンゲージメントと言っても、その形態と対象には幅がある。現在アジアの多くの企業で見られるように、一握りのステークホルダーを対象とし、対話というよりは情報を一方通行に発信する限定的なエンゲージメントが一つである。この中では企業は報告書を通してCSR実績を公表し、電子メールやアンケートによりステークホルダーからの反響を集めている。しかし定期的に意見収集を行うことでステークホルダーはアンケート疲れを起こし、企業も時間とリソースをかけるメリットを見いだせないという限界がある。これと対極をなすのが、企業とステークホルダーが積極的にエンゲージメントを図り、真の価値を創造している形である。このためには企業は以下の点を考慮する必要がある。

  • インクルーシブであること
  • 広範囲にわたるステークホルダーの参画を図り、中でも批判的な声を上げる者や、企業の行動や決定に大きく左右されながら意見を述べるチャンスのない者を意識的に取り込む。

  • オープンで誠実であること
  • 自らの意見とは異なる主張に耳を傾けて検討し、自社の取組みの成果だけでなく、改善の余地のある点と真摯に向き合う。関係を強化するには透明性が鍵となり、有意義なステークホルダー・エンゲージメントにつながる信頼の土台をなしている。

  • プランを持つこと
  • 主要なステークホルダーグループを把握し、対象とする個人を特定し、エンゲージメントの目標およびスケジュール、必要とされるリソースを設定した上で、その達成に最適なアプローチを検討する。

  • 対応を怠らないこと
  • 継続的なエンゲージメントを希望するステークホルダーは、自らの意見が聞き入れられている実感を持つ必要がある。ステークホルダーに対して優先事項や行動計画を説明するなど、寄せられた意見に回答することが、よいステークホルダー・エンゲージには最も重要である。

先進的企業の取り組み

先進的な企業は、ステークホルダー・エンゲージメントを事業に取り込むことで価値の創造につながることに気づき始めている。企業内の各部署は、例えば調達部はサプライヤーと、顧客サービスは顧客と、人事部は従業員というように、主要なステークホルダーとのエンゲージメントをすでに継続的に行っていることだろう。より体系的で戦略的なアプローチを取ることで、必要とされるリソースを削減し、ステークホルダーからの反響を整理し、ビジネスの決定に有益な情報に仕立てることが可能となる。ユニリーバ(Unilever)や(IBM)といった企業は、さらに先を行く取組みを進め、オンラインを活用してのエンゲージメントでグローバルな課題への解決策を協働して探り、世界各地のステークホルダーからの提案や意見をクラウドソーシングにより募っている。

9月26~27日にバンコクで開催されるCSRアジアサミット2017では、シェルやIBM、ファーウェイからの代表を招き、進化するステークホルダー・エンゲージメントについて討議を行う。コミュニケーションから共創へ、さらに上手くいった場合に企業にもたらす価値、または計画通りに進まなかったケースからの教訓について意見交換を行う。 サミットの詳細についてはこちらからCSR Asia Summit 2017

執筆:サマンサ・ウッズ
CSRアジア週刊ニュース日本語翻訳版


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