Global CSR Topics

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グローバル・ファッション・システムが取り組むサステナビリティ

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世界銀行(World Bank)の推計によると、この15年で衣料品の需要と購入が倍増する一方、衣料品が廃棄されるまでの利用回数は大幅に減少した。

エレン・マッカーサー財団(Ellen MacArthur Foundation)の循環型経済の専門家チームが昨年発行した「新しいテキスタイル経済報告書(New Textiles Economy report)」は、衣服の着用回数が世界平均で2000年代初めから36%減少したと報じている。

グローバル・ファッション・アジェンダ(Global Fashion Agenda (GFA))の最新研究では、聞き取り調査を行ったアパレル企業の四分の三が、昨年同時期と比べて環境・社会的実績が改善したと回答し、その有効性もかつてないほど強まっている。世界に名立たるブランドや中小規模のアパレル企業において、サステナビリティ問題を担当する90人以上の幹部職員に対して毎年行う聞き取りに基づく結果である。

ファッション・システムが抱える廃棄物問題

1.3兆ドル規模のアパレル業界では、3億人がバリューチェーンに従事し、世界経済の一翼を担っている。しかしながらエレン・マッカーサー財団の報告書1によると、リサイクルが機能していないため、着用可能な衣服が廃棄されることで年間5000億ドルを超える損失が出ているという。

これは2000年代初めから拡大を続けるファーストファッションに拠るところが大きい。衣類は使い捨てとなり、莫大な量の廃棄物が生み出されているのだ。ドイツを含むヨーロッパの複数の国では、未使用の衣料品の約四分の三を再利用のために回収しているが、中国やアフリカ各国ではリサイクルシステムが未整備のため、衣料品は埋め立て処分されているのが現状である(図1)。

香港環境保護省(Hong Kong Environmental Protection Department)が2011年に行った調査によると、香港だけでも、平均217トンの繊維製品が毎日埋立地に運び込まれている。人口密度ランキング世界第4位(fourth most densely populated region)の香港において、固形廃棄物の問題は大きな脅威となっている。

図1: 2015年、ファッション業界における素材の一方向的な流れ

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出展: エレン・マッカーサー財団「新しいテキスタイル経済報告書2017年度版」

閉ループ型ファッション・システムの将来性

これまで衣料品業界では、製品のパッケージの変更や流通における交通手段を切り替えることで、バリューチェーン内のサステナビリティ改善を図ってきた。2018年度版GFAの報告書では、こうした従来の一方向的モデルから脱し、サステナビリティの観点をデザインや開発段階から盛り込む新たな動向を報じている。

ファッション業界のステークホルダーに対して、製品寿命に働きかける取組みを教育していることも大いなる前進である(図2)。デザイナーはより耐久年数の長い、高品質な衣料品を提供し、ブランド側も消費者に再利用を働きかけるよう修繕やリメイクのサービスを生み出している。グリーンピース(Greenpeace)の報告書「岐路に立つファッション業界(Fashion at the Crossroads)」は、ファッション・システムから無駄を「省くデザイン」でそのバリューチェーンのスピードを緩め、素材を活かす教育の必要性を指摘している2。

図2: バリューチェーン・プロセスの改善に向けたアパレルブランドの取組み。製造と輸送、加工段階で最も大きな改善が見られた。2018年には「製品寿命」および「デザイン・開発」段階における改善に乗り出している。

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出展: グローバル・ファッション・アジェンダ「ファッション業界の動向2018年度版」

主要ステークホルダーの啓発

閉ループ型システムとは、製品使用後の回収・リユース・リメイク・リサイクルにより廃棄物のゼロを目指すビジネスモデルである。これを実現するには、デザイナーや消費者に対して、デザインや購買行動がバリューチェーンに及ぼす影響について配慮するよう啓発する必要がある。社会・環境的な変革に注目し、デザイナーに限らず消費者にも情報提供する新たな教育モデルが生み出されている。

消費者の啓発

英国発祥のファッション・レボリューション(Fashion Revolution)は、消費者と衣料品メーカーの対話を図り、大きな動きとなっている。オンラインのソーシャルメディア・キャンペーンを展開し、世界中の消費者に対して自分のクローゼットがサプライチェーンの基本要素だと意識するよう啓発している。これに応える形で、サプライチェーン全体を通して透明性とアカウンタビリティ(説明責任)の徹底を求める声が消費者から高まっている。

デザイナーの啓発

デザイナーは利益率を上げながら、デザインを通して社会・環境的なインパクトを変えることができる。グッチやアレキサンダー・マックイーン、ステラ・マッカートニーなどトップブランドを擁するサステナブルなラグジュアリーグループであるケリング(Kering)は、世界中のデザイナーに対して大規模公開アクセス・デジタルコースを通して自己啓発のチャンスを提供している。

ロンドン・カレッジ・オブ・ファッション(London College of Fashion)と協働して開発されたオンラインコース「ファッション&サステナビリティ:変化する世界のラグジュアリー・ファッションを学ぶ(Fashion & Sustainability: Understanding Luxury Fashion in a Changing World)」である。ファッションにサステナビリティを盛り込むことを目指す世界中のデザイナーやブランド、消費者の要求に応える形で、従来の講義形式から今年はバージョンアップを果たした。

教育だけでグローバルなファッション・システムの再設計は困難であるが、消費者教育と併せることで素材が流れるスピードを緩め、「資源利用―製造―廃棄」という直線的な衣料品消費パターンを「閉ループ型」に変えていくことができる。

新たなパラダイムへ向けて行動する

グローバル・ファッション・アジェンダ(GFA)が発行する年次報告書である「ファッション業界の動向」は、同業界の環境・社会的な実績を詳細に検証し、サステナビリティの取組みに乗り出す、もしくは改善を図る企業に対して具体的な行動を提示している。企業がサステナビリティを上手く組み込みながら、ベストプラクティスと足並みを揃えて行く具体策を以下のように詳述している。

測定可能な目標を盛り込む戦略の策定:企業の中核的ビジネスモデルを反映し強化する明確な戦略を打ち出し、目標を統合させる。戦略について社内での周知徹底のため、組織で意思決定権を持つ上層部が戦略に合意して推進、さらに社員と取引関係に対する広報が不可欠である。

協働態勢:サプライチェーンの改善に向けてマルチステークホルダー・イニシアチブで同業他社と協働を図る。サステナブル・アパレル連合(Sustainable Apparel Coalition)が手がけたヒッグ指数評価(Higg Index)は、ブランドや小売、メーカーの能力を強化し、製品ライフサイクルおよびバリューチェーンのあらゆる段階での環境・社会・労働インパクトを測定する取組みである。バリューチェーンに沿ってパートナシップを組むことで、環境対策や生産・製造工程、労働者の権利および労働条件の改善を推し進めることができる。

破壊的技術の活用:革新的技術は閉ループ型ファッション・システムに向けた抜本的変革をもたらしうる。3Dプリンターやマッピング・追跡を可能とするセンサー、さらにIoT(モノのインターネット)を活用することで、使用済み素材のリサイクルと再利用を促進する「スマート」な回収・リサイクルシステムを構築することができる。生物工学による革製品や海藻繊維(kelp fibres)など、持続可能かつリサイクル可能な素材ミックスの開発により、綿花のように栽培に大量の水を必要とする素材がもたらす環境インパクトを相殺することができる。生分解性素材ミックスの普及により、埋め立て処分される繊維製品量を削減することで閉ループ型のファッション・システムへの切り替えを促進できる。革新的技術を活用する際、企業は官民セクターのステークホルダーとの協働を図り、インパクトを高める一方で、進歩を妨げるインフラや資源の課題を防ぐことが求められる。

優先事項のバランスをとる

繊維製品の廃棄を防ぐ閉ループ型は、グローバルなファッション・システムでのサステナビリティを高める有効なアプローチである。真にサステナブルなファッション・システムを達成するには、環境面での進歩とバランスが取れるよう、縫製労働者の生活も改善する必要がある。

GFAのレポートは、環境面でのサステナビリティが進む一方、労働者の福祉など社会的課題とのギャップを埋めて行く必要があると結論づけている。縫製労働者の主張をすくい上げ、サプライチェーンに潜む人々の課題についてブランド側に正確でタイムリーな情報を提供するには協働態勢が不可欠である。

企業のサステナビリティやサプライチェーンのコンサルティングを専門に手がけるCSRアジアと親会社のエレベイト社は、企業の価値体系の中にサステナビリティを組み込む戦略の策定、さらには目標の再設定を数多く手がけている。
戦略策定を含むCSRアジアのコンサルティング業務詳細についてはHPをご覧ください:

【推奨文献】
●Fung Global Retail & Technology, (2017). Deep Dive: An Overview of Digitalization of the Apparel Supply Chain. [pdf] Available at:
●Global Fashion Agenda and The Boston Consulting Group (2018), Pulse of the fashion industry 2018. [pdf] Available at:

【参考文献】
1. Ellen MacArthur Foundation. (2017). A new textiles economy: Redesigning fashion’s future. [pdf] Available at:
2. Greenpeace International. (2017). Fashion at the crossroads. [online] Available at:

執筆:ケリー・クーパー

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