Global CSR Topics

Global CSR Topics

バックナンバー一覧

野宿者問題解決に向けた取り組み

イメージ

2018年、英国政府は2027年までに野宿者問題を根絶する目標を打ち出しました。2018から2020年で1億ポンド(約143億1,434万円)を投資する予定です。 目標達成のために社会的投資を拡大することを宣言しており、2018年には、野宿者支援に関わるソーシャルインパクトボンド(SIB)を3件立ち上げています。 (英国では、”Homeless”ではなく”Rough sleepers”といいます。その人たちが置かれる状況がより伝わるワードだと思います。)

人が路上で生活することを余儀なくされるのは、基本的な人権の視点でも許されるものではありませんが、社会全体のサステナビリティの視点でも放置しておいてよい問題ではありません。

英国や米国、豪州では、野宿者の方が緊急医療にかかることや、刑事司法サービスの保護下におかれることなどによる財政コストが増え、問題そのものを解決するためにソーシャルインパクトボンド等を活用した官民連携プロジェクト(身体/精神医療や、セラピーや職業訓練、安全な住まいの提供など)がここ5年ほどで急速に増えています。 2016-18年には隔月に1件はプロジェクトが実施されていたように思います。

野宿者問題は、SDGsの1(貧困をなくす)、2(飢餓をなくす)、3(健康・福祉)、10(不公平をなくす)、11(まちづくり)など多くの目標達成にも関わり、この問題の解決なしにSDGsを達成することはできません。

広がる企業の取り組み

企業でもそれぞれの強みをいかした取り組みが増えてきています。

ユニリーバは、事業戦略の一つ「水と衛生」に沿い、NPOと連携して公衆シャワーの設置を進めています。野宿者の方は、身体を清潔に保ちにくくなることから人と接することを恥じ、人間としての尊厳を失うことが多いため、暖かいシャワーを浴びられることで社会復帰の第一歩を支援することが狙いだそうです。

写真:ユニリーバプレスリリースより

M&Sは2018年、ある店舗の外で夜に野宿者の方が寝られないようにアラームをつけたことがメディアから大きく批判され、デパートDebenhamsや、メトロ銀行など複数の企業と協働で、支援キャンペーンを行いました。 店頭での就業トレーニング提供のほか、M&Sからの寄附とクラウドファンディングを通して50万ポンドを集め、食事や医療サービス、就労支援等を提供するホステルを建築する予定です。

IKEAは「世界中の人々が、より健康的でより持続可能な暮らしを送るためのソリューションの提供」をミッションのひとつに掲げ、途上国の貧困だけではなく販売店が多く存在する先進国のローカルコミュニティの人々の生活改善も重要である、としています。

例えば米国で、野宿者や、虐待を受けて行き場のない子どもが滞在できるシェルターに、IKEAの家具や家電、寝具、キッチン用品、勉強道具等を、従業員が組み立て・導入し、部屋をデザインする取り組みを行っています。 このプロジェクトは従業員のアイデアで始まり、毎年支援する団体も従業員が自分たちで決めます。2011年から2億円以上を投資し、このような施設を少しでも”Home”に近い空間にすることを目指しています。

写真:IKEAプレスリリースより 寄付受付部屋のbefore / after

野宿者問題を日本ではどのように解決するのか

近年、英国の野宿者支援団体にヒアリングをする機会が多くありました。 英国では全体的な社会の意識として、人々が路上で生活する状態におかれるのは「国のシステムの欠陥」と考える人が多く(近年はそう考える人が特に増えている)、また一人の人間として、他の人が寒い中食べ物もなく眠っているなんて、何かしないわけにはいかない、という意見も多いと聞きます。

日本でも「貧困」は「途上国」など遠くの問題ではなく国内にも関係があると認識する人は増えていると感じますが、野宿者問題については理解が少なく「自己責任」と考える人も多いようです。 野宿されている方一人ひとりにお話を伺ってみると、日雇いなどの雇用形態で長年一生懸命働いてきて怪我や病気で働けなくなった方もいれば、子どもの時から頼れる人がいなかった方など本当に多様な方がいます。 いまの日本の公的サービスの内容・仕組みでは、働けなくなったときに頼れる家族がいなければ、簡単に野宿者になってしまう現実があります。

日本政府は2020年のオリンピック・パラリンピックに向けて訪日者や外国メディアから野宿者を隠すことに力を入れていますが、社会を良くすることを考えれば、課題解決に一刻も早く取り組む必要があるのです。

日本でも、寄附だけに頼らないビジネスモデルを確立していることで知られるHome doorさんや、野宿者の方が路上で社会課題等について取り上げる雑誌を販売するビッグイシューさんなどのNPOが、一人でも多くの人が人間らしく生きられるように支援活動を行っています。 上記のNPOのサイトでも問題について知ることができるので、まずもっと多くの日本の方に関心を持ってほしいと強く願っています。

EcoNetworks
Sustainability Frontline [原文はこちら]


    エコネットワークス

    イメージ

    エコネットワークスは、CSR・サステナビリティに関する調査、言語、エンゲージメントを支援しています。また、世界に広がるパートナー・専門家のネットワークを通じて、各地の課題や先進企業の動向をウォッチし、情報発信をしています。

    エコネットワークスのホームページはこちら

このページの先頭へ