マテリアリティとは

マテリアリティとは

近年、幅広いCSR活動のなかでも重要な課題「マテリアリティ」を軸にCSR活動をマネジメントし、そこにフィーチャ―して報告する考え方が拡がりつつあります。なぜ今注目されているのか、その背景から導入の方法についてご紹介します。

マテリアリティの概念

「マテリアリティ」という用語は、そもそも財務に重要な影響を及ぼす重要な要因として、会計領域における「重要性の原則」として使用されています。その用語がCSRの議論に導入された背景には、CSR活動が長期的視点で財務や企業経営に影響を及ぼす重要な要因であり、将来の企業価値を左右するものと認識されるようになったことがあります。

英国の非営利組織アカウンタビリティ社が中心となり2006年に「マテリアリティ・レポート」が公表されました。そこでは次のようにマテリアリティが定義されています。

  • マテリアルな課題とは、組織のパフォーマンスに大きな違いをもたらす可能性のある課題である。
  • マテリアルな情報は、ステークホルダーや経営層が彼らにとって重要な事柄に対して、健全な判断を下し、組織のパフォーマンスに影響を及ぼす行動をとるためのベースを提供するものである。

その後、グローバルで利用されているサステナビリティ情報開示のフレームワークにも、同様の概念が盛り込まれています。


GRIガイドラインのマテリアリティ

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GRI「G4 SUSTAINABILITY REPORTING GUIDELINES
Part2-Implementation-Manual」p.37 2013

2006年改定の第3版(G3)は「重要性(マテリアリティ)」原則を導入したことが特徴でしたが、開示レベルを示すアプリケーション・レベルが報告書の優劣を評価する印象を与え、結果としてCSR報告は網羅的になる傾向がありました。

そこで2013年の改定(G4)で、いっそうマテリアリティが強調されており、サステナビリティ報告書では次に該当する側面を取り上げるべきであるとしています。

  • 組織が経済、環境、社会に与える著しい影響を反映している
  • ステークホルダーの評価や意思決定に実質的な影響を与える

GRIガイドラインについて、詳しくはこちら


IIRCのマテリアリティ

報告書の内容及び情報の表示方法に関する情報を開示している「指導原則」の1つに、「重要性」が挙げられています。「統合報告書は、組織の短・中・長期の価値創造能力に実質的な影響を与える事象に関する情報を開示する」としており、重要性の決定プロセスについても記載されています。

IIRCの「国際統合報告フレームワーク」について、詳しくはこちら


SASBのマテリアリティ

米国の非営利団体SASB(Sustainability Accounting Standards Board)であり、米国証券取引所に上場する企業に対して、重要なサステナビリティ情報の報告を義務付けることをめざしています。2016年3月に、10分野79業種すべての基準が発表されました。

SASBは5factorテストを行うとともに、産業別調査⇒審査⇒マテリアリティ基準の開発⇒パブリックコメント⇒専門家による標準化というプロセスをへて、産業別のマテリアルな項目として特定されています。

【5 factor test】
factor1:財務面での影響とリスク
factor2:法、規制、政策的要因
factor3:産業規範/競争優位性に関するテーマ
factor4:ステークホルダーの意向や社会傾向
factor5:イノベーションへの機会

また、Financial Impact:各産業における3つのバリュードライバーについて考慮する、としています。
1)売上とコスト
2)資産と負債
3)資本コスト

上場企業に提出が義務付けられている財務書類(Form10-K、20-Fなど)に記載できるようにしています。

一説には、IIRCとSASBは投資家視点のマテリアルイシューについてのみ「マテリアリティ」であるとしているのに対し、GRIは全てのステークホルダーにとって価値があるならば「マテリアリティ」とみなされる、という解釈もあります。しかし、若干の概念の違いはあれど、基本的な考え方は共通と理解して問題ありません。

SASBについて、詳しくはこちら

【Point】 企業・ステークホルダーの「関心の高さ」ではなく、将来の企業価値を左右するような「影響の大きさ」に基づいて特定する


導入のポイント

導入のメリット

マテリアリティを特定することで、CSR活動と報告書は組織とステークホルダーにとって重要なトピックに重点が置かれます。そのため、組織は社会への影響を管理するために真に重要な取り組みに集中することができ、サステナビリティ・CSR報告書はより使いやすいものになります。

また、GRIガイドラインとIIRCのフレームワークでは、共通して重要課題の特定プロセスの開示が求められています。


マテリアリティ特定のプロセス

G4では、マテリアルな側面とバウンダリーの確定プロセスとして次の4つのステップを提示しています。

  • 特定
  • 優先順位付け
  • 妥当性確認
  • レビュー

GRIガイドラインの指標やISO26000であげられている取り組み、SASBが特定しているKPIなど国際的なフレームワークで整理されたイシューに加え、業界や操業地域の特性を踏まえた独自の項目を洗いだし、優先順位づけ、社内での承認・レビューを経て、開示情報を特定します。


ステークホルダー・エンゲージメント

特定プロセスには主要なステークホルダーの見解を理解し、意見を組み込むことが必要であり、そのためには双方向のコミュニケーションを通じたエンゲージメントが重要です。G4ではエンゲージメントの方法について次のプロセスが提示されています。

  • ステークホルダーを特定し、優先順位付けをする(選定にあたり、責任・影響・近接・依存・代表性を考慮すること)
  • ステークホルダーと対話する(ステークホルダーのグループによっては、直接の対話だけでなく、Webアンケートのような方法をとることも考慮する)

企業がエンゲージメントを行うには、顧客満足度や従業員満足度といった既存の調査を活用しつつ、潜在的なニーズを捉えることができるように配慮することが求められます。

さらに、単年のプロジェクトではなく、経営計画やレポート制作フローに統合することにより、継続的に見直し・改善されることが望ましいです。むしろ最初から完璧なマテリアリティ特定をめざすよりも、ステークホルダーと定期的にコミュニケーションをとり見直すことを前提とするほうが、柔軟に対応できるでしょう。

前述の英国アカウンタビリティ社は、世界最初のサステナビリティ報告に関する保証基準といわれる「AA1000 Account Ability原則」を公表しています。この中で、組織体が重要性の原則を満たしているといえる基準として下記のような項目を挙げています。

  • 重要性決定プロセスは、組織体に広く適用され、組織体に組み込まれた継続的なものである。
  • 組織体は、重要性決定プロセスを適用するために必要な能力および経営資源を整備しているか、またはそれらを利用できている。
  • 重要性決定プロセスは、ステークホルダーのニーズおよび関心事、社会的規範、財務的な考慮事項、同業他社の規範および方針に従ったパフォーマンスを含む、広範な情報源からの課題を識別しかつ適切に表現しており、また、当該課題にかかるサステナビリティの状況を理解している。
【Point】 プロセスを開示し、どのようなステークホルダー・エンゲージメントに基づいているかを示すことが重要。単年度で完結はしない継続的なものである。


企業の対応

ステークホルダーとの意見交換の過程など、マテリアリティ特定プロセスを丁寧に報告している事例として以下があげられます。

大和ハウス工業株式会社
マテリアリティの見直し

SOMPOホールディングス株式会社
グループCSR重点課題の見直し

大阪ガス株式会社
マテリアリティの特定


【参考記事】

主要ガイドラインの「マテリアリティ」比較

表彰されるCSR報告書の10要件

来年に向けた準備に!GRIを使ったCSRレポート自己診断

マテリアリティはなぜ必要か

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