グットプラクティス

第13回 前田建設

独自のエコポイント制度『Me-pon』で社員と家族が楽しくエコ活動

CSR・環境への取り組みをいかに社内に浸透させ、社員一人ひとりの活動として広げていくか。これは、さまざまな企業にとって大きな課題になっているのではないだろうか。そうした中、大手建設会社の前田建設工業は2010年1月、社員はもちろんその家族も含めて日々のエコ活動を活発化させていくため、独自のエコポイント制度『Me-pon(ミーポン)』をスタートさせた。開始から1年、日経エコロジー賞を受けるなど社外からの評価も高いこの制度について、前田建設工業CSR・環境部の秋山直一氏と林昌明氏に詳細をお聞きした。

家族との絆を強めるきっかけになれば、という思いも込めて

Maeda eco-Point

Me-ponの運用フロー図。愛称Me-ponは「Maeda eco-Point」の略。家族や子どもたちにも愛される名前でもあり、エコ活動は結果的に自分たちのためなんだ(for Me Point)という思い・意味が込められている。

全社員とその家族を対象に、エコ関係の資格取得、日常的なエコへの取り組み、エコな社会活動などを行うごとに申請してもらい、所定のポイントを付与する。そうして貯まったポイントは、事務局が用意するエコ商品との交換や、NPOなどの環境活動への寄付、エコ体験イベントへの参加や、家族と過ごすための休暇取得にも使うことができる。これが2010年1月から運用を始めた前田建設独自のエコポイント制度『Me-pon(ミーポン)』。ポイント制度という仕組みを軸に、社員とその家族の、日常生活におけるエコ活動を活発化していこうというものである。
Me-pon誕生の背景には、まず前田建設の経営方針があった。同社は2009年度から3年間の中期経営計画において「環境経営No.1といわれる建設会社をめざす」ことを定め、環境経営を第一の柱とする姿勢を鮮明にした。そして、地球も前田建設のステークホルダーと位置付け、連結純利益の2%相当を地球への配当として、地球環境に貢献する事業外活動に配当(拠出)することを決めた。エコポイント制度の運用には財源が必要になるが、この地球への配当の一部がMe-ponの基盤を支えることになったのである。
「“環境経営No.1といわれる建設会社”といっても何をすればよいのか、我々も最初から具体的なイメージを持っていたわけではありませんでした。それで、社員へ環境問題に対する意識付けを行うためにeco検定など環境資格の取得を推進しました。しかしこれだけでは、資格を取って終わりにもなりかねません。そこで出てきたのが、エコポイント制度という仕組みの導入でした」(秋山氏)
企業独自のエコポイント制度は、すでにデンソーや中部電力などが設けており、前田建設もそうした先行事例を参考にしつつ自社に適した制度を設計していく。その中でも、当初から社員の家族にも積極的に参加してもらう点が前田建設の特徴である。
「環境経営の宣言でも、全事業、全社員・家族で環境活動を推進すると謳っているので、家族を含めた活動にすることは当初からの目標でした。また、社員が家族と過ごす時間を増やす機会にもなれば、という思いもMe-ponには込めています」(林氏)
「私たち建設会社の社員は、家族の皆さんに我慢を強いることが相対的に多い業種といえましょう。家族の支えがあって初めて仕事ができると考えています。Me-ponへの参加を機会に、家族との絆を強めるきっかけにもなればと。そういう思いがあるのは確かです」(秋山氏)

制度スタートから9ヵ月で8割以上の社員が参加

CSR・環境部 秋山直一氏

CSR・環境部
秋山直一氏

前田建設は、CSRと経営は切り離せないものとの考えからCSR部門と経営企画部門の連携を密にしており、Me-ponの企画・運営もCSR・環境部を中心にしつつ、総合企画部や総務・人事部からもメンバーを集めた全社横断的なワーキンググループによって進められた。ポイントが付与されるエコ活動の一つになっている自転車通勤も、自転車通勤手当を新たに設けるなど社内制度との連携があって実現したものである。
制度の大枠が固まった2009年の秋に、一度社内に公開して社員から広く意見を集めて修正を加えた後、2010年1月からMe-ponの運用は始まった。この制度設計から立ち上げまでにどのような苦労があったのか、気になるところだ。

CSR・環境部 林昌明氏

CSR・環境部
林昌明氏

「制度を考えるにあたり、参加する社員や家族が自発的に活動を行なってもらうとともに、その活動や結果を見える化し、楽しく環境活動に取り組むためにお手伝いできることはなにかという視点で制度設計を進めてきた。」(秋山氏)
Me-ponの特色の一つに、一般にも公開されている専用ホームページがある。社内イントラネットだけだと、参加する家族の方がアクセスできず活動状況が見えない。自発的に環境活動に取り組んでいただくためには、活動の見える化が非常に重要と考え社外ホームページを立ち上げた。さらにホームページを公開することで、社員や家族の活動ぶりを社会に公開しMAEDAの活動を知っていただく機会も増えた。
「見せ方など課題も多いとは思いますが、社内で活動を広げるだけでなく、それを社外の方たちに知っていただくことも大切です。その意味でもMe-ponのホームページは重要なツールの一つになりました」(秋山氏)
制度立ち上げ後の周知活動としては、秋山氏らCSR・環境部のメンバーが全国10支店を回って社員への説明会を開いた。さらにその後は、各支店の環境統括マネージャーがMe-ponの推進役を務めている。
そうした細かな努力の甲斐もあり、スタートから半年で社員約2,700人のうち1,800人が活動に参加、2010年10月には2,200人までに達している。見事な広がりぶりだが、秋山氏は「うちの社員は真面目なので」と、会社の風土があってのことだと話す。

地域のエコ活動で指導者として活躍できるような社員を

『Me-ponイキイキ写真図鑑 みつけた!小さないのちイチオシ写真』ホームページ

Me-pon専用ホームページにある『Me-ponイキイキ写真図鑑みつけた! 小さないのちイチオシ写真』。身近な生きものたちの不思議さや面白さ、家族のつながりを感じられる写真がたくさん。

順調に回り始めた前田建設のMe-ponだが、1年を経て感じる課題と今後についてお二人に聞いてみた。
「先ほどこれまでの考え方や経緯をお話ししましたが、本当に大変なのはこれからだと思っています。2年、3年と続けると、どうしても惰性になりがちです。参加者が継続的に楽しく活動をしていただくためには、どんな工夫が必要なのか、何を改善していけばいいのかなど、まだまだやっていかなければならないことがあります。」(秋山氏)
「今期は活性化を図るため、2010年も9~10月を『MAEDAエコアクション推進期間』として、eco検定合格者の登録や、各地で行われているエコイベントへの参加の呼びかけを積極化し、身近な生き物を撮影し投稿してもらう『イキイキ写真図鑑』という独自企画も実施しました。こうした活性化の仕掛けは、今後も随時行っていく予定です。」(林氏)
2010年6月末までで家族の参加人数は600人ほど。まだ掘り起こしの余地が大きいのは確かなようだ。
「お子さんに興味を持ってもらえれば一家での参加も増えるので、そうしたイベントを開くことがきっかけになるかもしれません。それと、環境活動をもっと広げていくために、全国各地のNPOや地方自治体のチャネルを広げることも課題の一つだと思っています」(林氏)
エコポイント付与の対象となるイベントやボランティア活動は当初、CSR・環境部が探し出して登録してきたが、その後は参加者からの申告で対象を広げてきた。Me-pon自体の内容を充実させる上でも参加者をもっと深く巻き込んでいく必要がある。
「単にエコ活動に参加するだけでなく、資格や経験を持った社員が各地域のエコ活動で指導的な役割を果たすなど、一段高いレベルで環境貢献活動に加わるようになることを目指しています」(林氏)
「そんなふうに、社員たちが自主的・積極的に環境活動に参加していただくことが、エコポイント制度のゴールかもしれませんね。」(秋山氏)
はじめて間もないMe-ponが、2010年度の日経エコロジー賞や、エコユニットアワード(東京商工会議所主催)大賞を受賞するなど大きな評価を得たことで、秋山氏・林氏はプレッシャーを感じつつも今後への意欲を燃やしている。前田建設の全社員とその家族を巻き込んだエコ活動は、さらなるレベルアップを目指してこれからも走り続ける。

前田建設ファンタジー営業部
遊び心に溢れた活動、これも立派なCSR

アニメやマンガ、ゲームなど、空想の世界に登場する建造物を実際につくるとしたらどうなるのかを前田建設の社員たちが真剣に検討し、ホームページなどで報告しているのが前田建設ファンタジー営業部。2003年に始まり、第1弾で「マジンガーZ」の格納庫、第2弾で「銀河鉄道999」の地球発進用高架橋、第3弾で「グランツーリスモ4」のサーキットを取り上げて注目を集める。2006年に行ったロボット救助隊の組織検討からしばらく休止していたが、2010年、「機動戦士ガンダム」に登場する基地ジャブローをテーマに活動を再開した。
前田建設の遊び心を感じさせる活動だが、CSRの視点からも「外部からは見えにくい建設業の仕事の“見える化”」という役割を担っている。 ちなみにこのファンタジー営業部、現在の小原好一社長が総合企画部長時代に活動が本格化したもので、今回取材に対応していただいた秋山氏も初回のマジンガーZプロジェクトに参加したという。

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