グットプラクティス

第14回 ガリバーインターナショナル

震災の被災地支援のニーズ・アイデアを具現化

2011年3月11日に発生した東日本大震災では、多くの企業がその直後から、そして今も、さまざまな形で復旧・復興のための支援を行っている。そうした中、中古車の買取・販売のガリバーインターナショナルは、3月14日に自社で扱う中古車の中から1,000台を被災地支援のために無償提供することを発表。さらに、実際の提供先の決定でツイッターの活用も行い注目を集めた。どのようなプロジェクトで成果や苦労はどうだったのか、ガリバーインターナショナルのマーケティングチームの北島昇氏にお聞きした。

震災発生の3日後、中古車1,000台の提供を決定

中古車の世界に馴染みの薄い方には、「社名や中古車を扱っていることは知っているけど」という程度の認識かもしれないが、ガリバーインターナショナル(以下ガリバー)は、“画像販売”というビジネスモデルにより中古車販売の世界を大きく変え、今やこの業界で販売実績No.1となった企業である。直営・フランチャイズを合わせて全国に約420店舗を展開し、実車展示も行ってはいるが、基本的にはパソコンから、豊富な在庫車両を収めた画像付きのデータベースにアクセスして、希望に合った1台を選ぶ、というのが販売の核になっている。

マーケティングチーム チームリーダー 北島昇氏

マーケティングチーム
チームリーダー
北島昇氏

経営陣が現場を熟知していることや、創業17年の若い会社でフットワークが軽いこともあり、ガリバーの東日本大震災での支援の動きは速かった。震災が発生した金曜午後から週末をはさんでの月曜日、朝一番に開いた役員会で、被災地の復旧・復興支援のため中古車1,000台を提供することを決めたのである。中古車の提供という支援内容については、“自分たちにできることで貢献する”“貢献するならやり切る”との考えから、事業の枠組みの中で行えるこの形にしたという。
そして役員会後すぐ実行責任者として呼ばれたのが、今回お話を伺ったマーケティングチーム(※1)のチームリーダー、北島昇氏だった。 「自動車の流通に疑問を感じ、ユーザーのために革命を起こしたいというのが起業の原点になっていて、この会社には社会の問題に積極的にコミットする気質があるんです。だからこそ、今回の震災支援にも素早く動くことができました」

ツイッターを通じて困っている人・支援したい人が1つになっていく

1,000台の提供車両を、できるだけ早く、きちんと渡し切ること。経営陣から与えられたミッションはシンプルなものだったが、大混乱の只中で実行するのはそう簡単ではない。まず、順当なルートとして岩手・宮城・福島3県の災害対策本部に打診するが、行政自体が大きな被害を受けていることもあって、なかなか話が進まない。そんな状況が数週間にわたって続く中、北島氏が思い当たったのがツイッターの利用だった。
「実は去年、マーケティングでのツイッターの活用を探るため、今回と同じBlabo!(ブラボ)のプラットホームで2度ほどトライアルを行っているんです。震災発生の3月11日の午前中に、新年度からこの仕組みを本格的に採用したいと経営層に提案していて、奇遇にもこの被災地支援が最初の実施例になりました」

ツイッターを通じて、クルマ100台の使い道についてのニーズやクルマを活用した復興支援のアイデアが寄せられた。

そうして4月11日に、ツイッターを使って支援車両の提供先と活用アイデアを募集する、ガリバーの「TAG PROJECT(タッグプロジェクト)」がスタートしたのである。
被災3県との車両提供についての調整も続けており、「TAG PROJECT」向けには当初、1,000台のうちの100台が充てられた。ツイッター上に「現地入りした医師たちの移動をサポートするためのクルマが足りず困っています」といった具体的なニーズと、「クルマで移動図書館をやってみては」などの活用アイデアを書き込んでもらい、内容や参加者の反応を見ながら提供先を決めていく。最終的な判断は北島氏が行っていたそうだ。ニーズの受け付けは活動実績があるNGO・NPOからのものに限っており、虚偽の申請などへの安全策は講じられている。

避難所を訪れたメンバー

ツイッターで募集した被災地復興への想い(メッセージ)を書き込んだ提供車で、インストラクターを連れて避難所へ行き、ヨガ・マッサージを実施。写真は、避難所を訪れたメンバー。

「目的も内容も明確だったので、ツイッターを使うことに不安はなかったし、実際、特別な問題は1つも起きていません。むしろ、支援車両の提供先の決定を任されて、どう優先順位をつければいいのか悩むところがあったのですが、その助けになったのがツイッターでした。ニーズは主に被災地からの切実なもので、アイデアは被災地以外からのものが多い。そこに我々が提供するクルマがあって、困っている人、支援したい人が1つになっていくのを肌で感じられたのは特別な体験でした」
そうして、「ツイッターで募集した被災地復興への想い(メッセージ)を提供車の車体に書き込み、その車で現地の避難所までインストラクターを連れて行ってヨガ・マッサージを行う」などの具体的な活動に結び付いていった。

企業がソーシャルメディアで生活者と相対するのは決して冒険ではない

「TAG PROJECT」による支援車両の提供は当初100台だったが、5月になって100台追加され、ツイッターでのやりとりは6月いっぱい続いた。この間、「TAG PROJECT」と、被災地の災害対策本部経由の両面から支援車両の提供を行ってきたが、震災発生から4カ月が経って現地の状況も変わり、行政とNGO・NPOが一体となって活動を行うことも増え始めた。緊急の用途では、「TAG PROJECT」に書き込まなくても、行政へ提供したクルマがNGO・NPOのニーズを満たすことにもなってきたのである。書き込みの様子から、そうしたニーズの変化を敏感にキャッチできるのもツイッターのようなソーシャル・メディアの大きな利点になるようだ。
東日本大震災という大きな混乱の中で、ツイッターの利用に踏み切って約3カ月。北島氏にこの間の経験で得たものを聞いてみた。 「生活者に広く呼びかけて声を聞くからには、その声を活かして、必ず実行する“覚悟”が必要だと感じました。また、“自分たちにできることを、どれだけわかりやすく伝えられるか”が、いかに重要か。そして、ソーシャルメディアを通じて生活者と相対するのは、決して“冒険”ではないこともよくわかりました」
今回の支援車両には譲渡と貸与があるものの、6月末で1,000台のうちの半数は提供が済んだ。残りの500台について、北島氏は「できれば持続可能な形で被災地に置いていきたい」という。
「被災地のニーズに従うべきで、自分たちの考えで決めるものではないのですが、今後の復興に役立つような形で車両提供ができればと思っています。例えば、現地の雇用を伴うカーシェアリングサービスの立ち上げとか、生活のインフラとして活用してもらえれば良いですよね」
具体的な方法はまだ計画中とのことだが、継続する復興支援なのか、当初目的としていたマーケティングも含めるのか、いずれにしてもガリバーは、今後もツイッターなどソーシャルメディアを活用していくのは間違いなさそうだ。

※1:ガリバーのマーケティングチームは2011年4月の組織変更から、マーケティングも宣伝、広報、CSRも、生活者・顧客とのコミュニケーションを図るものという考えから同じ部署内にまとめられている。

Blabo!(ブラボ)

株式会社ビオピオが企画・運営する“コラボレーションプラットフォーム”。生活者と企業、行政などを結び付ける仕組みを企画し提供している。

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