レポート事例集

ユニリーバ、M&Sなどが別冊の人権報告書を発行

2015年2月、ビジネスと人権に関する指導原則(以下、UNGPs)に沿った人権の取り組み状況に関する世界で初めての包括的な報告フレームワークである「国連人権報告フレームワーク」が公表されました。このように、世界的にサプライチェーンの見直しやサステナビリティを視野に入れた際の取り組みとして、人権課題に注目が集まっています。

この流れを受け、2015年、世界に先駆けてユニリーバから人権報告書が発行されました。また今年6月には、マークス&スペンサーも人権に関する独立した報告書を発行。各報告書では、人権に関する目標や、サプライチェーン全体での課題と取り組みがまとめられており、人権に関する報告だけで60ページを越える情報量となっています。

このほか、アップルが発行した「サプライヤー責任報告レポート」も人権に重点を置いた内容となっています。

そこで、今回は人権に特化したこれらの報告書を紹介していきます。


ユニリーバ「Enhancing Livelihoods, advancing human rights」

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オランダと英国に本拠を置く一般消費財メーカーのユニリーバは2015年6月、人権に関する報告書を発行しました。同社は「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン(USLP)」を2010年から開始し、事業を通じてサステナビリティな取り組みを生活に根付かせることを掲げています。本報告書では「国連人権報告フレームワーク」に準拠した活動について、68ページにおよび報告されています。

同社は、人権課題に取り組むうえで、透明性、ステークホルダーとの協働、連帯責任モデル、官民連携事業、能力育成のための新事業モデルという5つの領域に重点を置くと宣言しています。

加えて、8つの深刻な課題を定義。差別、適正賃金、強制労働、団結の自由、ハラスメント、健康と安全、土地の権利、労働時間を課題ととらえ、取り組み状況を報告しています。

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表2、p.1 報告書の導入として、世界における人権課題をまとめている。


マークスアンドスペンサー「M&S Human Rights Report 2016」

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英国小売大手のマークス&スペンサーは2016年6月、人権に関する報告書を発行しました。人権課題へ取り組んだ経緯や、2020年までに達成すべき目標を示した全60ページの報告書です。

同社は2007年から、独自の長期的サステナビリティ計画「プランA」を推進しています。プランAはこれまで、環境や社会課題への取り組みが中心でしたが、この理念をより進めるための「次のステップ」になるとして、人権課題への意欲を示しています。

ユニリーバのような重点領域を特に定めていないものの、深刻な課題を独自に設定してレポートしています。具体的には、差別、強制労働、団結の自由、生活賃金、水と衛生、労働時間の7つです。レポートの内容は、項目ごとの選定理由やリスクの程度、現状の取り組みや協働事例に至るまでを詳細に報告しています。


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p.17-18 7つの深刻な課題のうち「差別」を報告したページ。
課題設定の理由やポリシー、取り組みの実態などを整理しながら報告。


アップル「Supplier Responsibility 2016 Progress Report」

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米国IT企業のアップルも、サプライヤー責任に関する進捗報告書という形で人権への取り組みを報告しています。この年次レポートは今年で10号目です。冒頭には「製品を製造するための健全な手段があり、これは製造にかかわる人の権利から始まる」とあるように、サプライチェーン上の課題として人権を強く意識しています。

レポートは、労働者と人権、雇用、環境・安全・健康の3つで構成されており、ケーススタディー形式で労働者個人に焦点を当てながら、課題や取り組みを紹介しています。この中には、長時間労働や紛争鉱物、児童労働などが含まれますが、厳しい監査やペナルティを科しています。

たとえば、未成年者就労防止プログラムであれば、未成年(15歳以下)の就労が発覚した場合、その従業員の就労を止めるだけでなく、教育を受けるための費用をアップルが負担し、サプライヤーには、労働者が受け取っていたのと同額の賃金を支払うことを求めています。紛争鉱物に関しても、第三者機関による監査では不十分とし、独自調査も実施するなど改善を重ねています。


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p.11-12 台湾で働くRechel Ragasさんの例をもとに、
フィリピンにおける強制労働の課題と取り組みを紹介。


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【参照ページ】The UN Guiding Principles Reporting Framework

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