レポート事例集

持続可能なアジア太平洋に関する国際フォーラム(ISAP2016) 参加報告②

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2016年7月12日~13日にかけて、第8回持続可能なアジア太平洋に関する国際フォーラム(ISAP2016)が開催されました。今回ご紹介する2日目のダイアログでは、SDGs(国連持続可能な開発目標)をビジネスと経済界の具体的な行動にいかにして繋げていくかという議論がされました。
ここでは、議論の焦点となった「SDGsへの貢献をどのようにしてビジネスチャンスに結びつけるのか」「企業と政府や市民社会団体間でどのような連携を行うべきなのか」に関して、フォーラムで紹介された具体的な事例を交えてご報告します。


SDGsへの貢献をどのようにしてビジネスチャンスに結びつけるのか

企業のSDGsへの理解

SDGsは広範かつ複雑であるが、企業は以下のような多様なメリットを受けることができる:

  • 将来のビジネスチャンスの見極め
  • 企業の持続可能性に関わる価値の向上
  • ステークホルダーとの関係の強化、 新たな政策展開との同調
  • 社会と市場の安定化
  • 共通言語の使用と目的の共有(*1)
主力事業に最適なSDGsを選定

SDGsがもたらす機会や課題を活かすためには主力事業に最適なSDGsを選定する必要がある。 そのためには主力事業のバリューチェーンをマッピングし、正の影響を拡充する分野と、負の影響を低減もしくは回避できる分野を特定することが重要。


レポート内でSDGsとの関連性の記載はない

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【ISAP2016で紹介された事例】

主力事業の負の影響を低減できる分野を特定し、
企業の持続可能性に関わる価値の向上に成功

-株式会社小松製作所-

建設機械を製造する小松製作所は、主力事業に係る環境への負の影響を検証した結果「建設機械の使用時に排出するCo2が最大である」という結論に行き着いた。
解決策としてCo2削減建設資材の開発に加え「建設現場での効率的な使用方法の研究開発」も同時に実施。負の影響を低減することで、建設コストの削減という顧客メリットにもつながり持続可能な新たなビジネスモデルの確立に成功した。


企業と政府や市民社会団体間でどのような連携を行うべきなのか

パートナーシップに取り組むことの必要性

2014 年に実施されたある調査によれば、調査対象となった3 万8,000 人の企業の役員・管理職およびオピニオンリーダーのうち、90%が持続可能性に関わる課題は企業単独では効果的に対処することはできないと回答(*2)。また、協働を重視する姿勢はSDGs の内容にも明示的に反映されている。たとえば、目標17 には、分野横断的なパートナーシップに関するターゲットが多い。

どのようなパートナーシップを検討すべきか

以下のようなパートナーシップの可能性が考えられる:

  • バリューチェーン・パートナーシップ
    バリューチェーン内の企業が相互補完的な技能・技術・資源を組み合わせて市場に新しいソリューションを提供
  • セクター別イニシアチブ
    業界全体の基準・慣行の引き上げと共通の課題の克服に向けた取組みにおいて、業界のリーダーが協力
  • 多様なステークホルダーによるパートナーシップ
    業界全体の基準・慣行の引き上げと共通の課題の克服に向けた取組みにおいて、業界のリーダーが協力

【ISAP2016で紹介された事例】

多様なステークホルダーによるパートナーシップでフィリピンの貧困に対処

-富士ゼロックス株式会社-

複合機メーカーである富士ゼロックス社はCSR活動としてフィリピンの貧困解決に従事。
長年の活動の結果、初等教育の欠如が貧困の連鎖を生み地域社会の持続可能な発展を阻害しているという事実に行き着き、教育格差を支援するための教材提供プロジェクトを立ち上げることとなった。 しかし教材提供といっても同社が単独で行うには内容的にも量的にも限度があった。
そこで同社は地元NGOにニーズ把握や配布対象者の特定を、地場のコンテンツパートナーに教材内容を、印刷などにかかるコストはフィナンシャルスポンサーを募ることで、提供する教育内容の充実と量の確保を図った。
貧困解決という共通の社会課題を通じて、NGO×地場企業×日系企業という多様なステークホルダーによるパートナーシップを確立し、雇用創出や事業機会の発見に成功した。(*3)


まとめ

2日目のフォーラムでは、SDGsの課題解決に資する企業の貢献は、事業機会の拡大や持続可能なビジネスを促進するための共通言語として機能し得ることが共有されました。
また、日本企業が強力なコミットメントとリーダーシップを発揮し、SDGsへの貢献を世界に発信して欲しいという期待が伝えられました。

今回のフォーラムでは、SDGsが採択されてからまだ日も浅いため、どの目標を企業が設定し活動を進めているか、といった具体的な事例は挙がっていませんでしたが、SDGsに取り組むことが企業としての責任を果たすだけでなく、企業にとっても有益になり得ること、ということが紹介されていました。
また、そのためにはSDGsを正しく理解し、どのように考え、進めていくのか、といったガイダンスとなる内容が紹介されました。


*1 出典:SDG Compass SDGsはなぜ企業にとって重要か
*2 出典:SDG Compass SDGsパートナーシップに取り組む
*3 参考:富士ゼロックス「サステナビリティレポート2014」ハイライト3 貧困地域の児童に学ぶ機会を提供する

聴講したダイアログ

【アジアにおけるSDGsの革新的な取り組みの開始:主要ステークホルダーの役割】
[フレーミングプレゼンテーション]
・エリック・ザスマン IGES持続可能な社会のための政策統合領域エリアリーダー/上席研究員
・ダラ・リー アジア欧州財団(ASEF)政治経済部プロジェクトオフィサー
[ダイアログ]
・カーベー・ザーヘディ国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)持続可能な開発担当事務局次長
・有馬 利男 国連グローバルコンパクトボードメンバー/グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン代理理事
・エレニタ・ダノ エロージョン・テクノロジー・コンセントレーションに関する行動グループ(ETCグループ)アジア地域ディレクター/技術促進メカニズム(TFM)支援のための国連10メンバーグループ委員
・山内 邦裕 国際協力機構(JICA)地球環境部部長
モデレーター
・森 秀行 IGES所長

【ビジネスアクションの強化:挑戦と解決策】
・フィリッポ・ペグリオ 持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)グローバル&ソーシャルインパクト マネージングディレクター
・シンタ・カニアワティ ユニリーバインドネシア財団局長
・安藤 祥一 住友林業株式会社資源環境本部・エネルギー部長
・坪田 晴弘 株式会社小松製作所環境管理部長
・山岸 誠司 株式会社三井住友フィナンシャルグループ企画部グループCSR室長/株式会社三井住友銀行経営企画部CSR室長
モデレーター
・小林 光 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授

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