レポート事例集

WICIジャパンの「統合報告優良企業賞」、
大賞に伊藤忠商事とオムロン

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WICI (世界知的資本・知的資産推進構想)は、知的資産/資本やKPIの開示改善を目指す国際団体で、WICIジャパンはその日本組織に当たります。「知的資産経営」の理解や実践を進めるための啓蒙活動などを行っており、その一環として統合報告書のアワードを実施しています。

そこで、国内上場企業の優れた統合報告書を表彰する「第5回WICIジャパン統合報告優良企業賞」(WICIジャパン主催)の審査結果が公表されました。

最高賞の「統合報告優秀企業大賞」には、伊藤忠商事とオムロンの2017年度統合報告書が選ばれ、ともに大賞受賞は初めてとなります。

両社の報告書は、「ステークホルダーが企業活動の将来を見通せるようにした報告の模範例」であり、かつ「この5年間毎年改善を重ねて……完成度を高めてきた」ことが評価され、今回の大賞を勝ち取りました。

今回は、この両社の統合報告書について、WICIジャパンの評価項目に該当する部分を中心に、特徴的なコンテンツをご紹介します。

伊藤忠商事「統合レポート2017」

レポートPDFはこちらから

  • 歴史記事「受け継がれてきた理念」では、企業理念(コーポレート・メッセージ)を軸に、同社の創業時と現在の姿を対比した構成。歴史であるセピアから、ロゴカラーの青へと色彩が展開していくデザインで対比構造が見た目からも伝わる。また、「150年を超える変革の歴史」でも、伊藤忠商事の長い歴史と変革の様子を見ることができる。

表2-p.1 歴代の経営者を紹介することで、企業理念が受け継がれる様子を表現

p.16-17 自社の変革と社会的背景を一覧化

  • 「持続的な企業価値拡大を目指して」として、22ページに及ぶボリュームで、価値創造のストーリーを財務と非財務の関係性を整理しながら、また客観的に判断可能な数値をふんだんに盛り込み納得感を持たせながら展開している。

p.20-21 企業価値拡大に向けて、ドライバー、強み、非財務資本、財務資本等の関係性を整理

p.22-23 前ページに続き、本ページでは非財務資本を紹介。
「内的経営資源」と「外的経営資源」に分けて丁寧に紹介

  • トップメッセージである「株主・投資家のすべてのステークホルダーの皆様へ」は、8ページあり、トップ自身の言葉で、戦略の過去・現在・未来が語られており、経営者の想い、 人柄までが伝わる。

オムロン「統合レポート2017」

レポートPDFはこちらから

  • 「価値創造モデル」のページでは、ビジネスモデルや事業環境などを、コンパクトかつ分かりやすく集約。各資本や目標、KPIについて具体的な数値や格付などが盛り込まれ、客観的判断やインパクトの把握が可能になっている。

p.2-3 価値創造モデルの全体像がすっきりと整理

  • 「サスティナビリティ課題と目標」のページでは、財務面での目標のみならず、非財務での2020年目標を掲げ、両面でもって「社会的価値の創出を通じた企業価値の向上」としている。

p.16-17 非財務目標には、「販売台数」など経営に直結するものから、
女性の管理職比率まで多面的に設定

  • 「ROIC経営」のページでは、オムロンが掲げるROIC経営について、なぜROICなのか、ROICを各部門のKPIに分解してマネジメント指標としている点、事業ポートフォリオをどう管理しているかなど、ROICに関わる取り組みを丁寧に説明。価値創造過程の可視化を図っている。

p.50-51 トップメッセージでも言及されている「ROIC経営」についての詳細

WICIジャパン統合報告優良企業表彰授賞式では、統合報告書の発行数も増え、特に「アウトカム」「ガバナンス」「ポートフォリオ」「ESGと経営の結びつき」などはレベルが高くなってきているとのことでした。また、「トップメッセージ」「社外取締役のコメント」「取締役会の評価などガバナンス関連」などは、フレームワークに沿うだけではなく、フレームワークを消化したうえでオリジナリティを出せるようになってきている、と講評されていました。

その一方で、特に以下のような改善点も指摘されていました。

  • 自社のPRだけでなく、ネガティブ情報やリスクなど重要なものを掲載
  • 業界として重要な項目(化学ならPRTR、食品なら原料調達など)をおさえた情報開示
  • 経営全体としてのマテリアリティ特定
  • ESGと経営戦略の結びつき

さらに、情報開示をより良くするだけではなく、統合報告書を活用してほしい、と言う意見もありました。例えば、投資家や評価機関との対話や社員との情報共有に活用し、その結果をマテリアリティ特定に反映するといった方法が挙げられます。

当記事では、「統合報告優良企業賞」に受賞した2社の特徴的なページを紹介しましたが、冊子全体を通じての読み応えはまた異なり、他のページでもさまざまな工夫が凝らされています。是非、冊子全体をご覧ください。



CSRコミュニケート 編集長コメント

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年々、統合報告書に記載されている内容は投資家向けに専門性を増していると感じています。 専門的な内容を表現面で工夫しつつ、戦略を分かりやすく見える化することはとても重要です。
その一方で、紙面の内容と、従業員や各事業現場との間でかい離が起きてしまっては意味がありません。

外部に向けて情報発信する際は多くの読者(主には機関投資家、専門家など)にある程度比較が可能で理解しやすい表現を試みることは重要ですが、その一方社内向けには、共通認識をもっている言葉を使ってその内容を共有することは外せません。

統合報告書の表現が外部に発信するという意味で卓越してきたからこそ生まれてしまう、現場とのギャップ。 しかし、企業と投資家が直接的に、ESG対話を行う機会も増えています。
よくわかっている投資家にはこのギャップが伝わり、折角素晴らしい統合報告書を発行していても、結果的に不信感を買ってしまいかねません。

是非、社外へのわかりやすい発信のみならず、社内で共有できる言葉や認識で、内実を伴った取り組みも進めていただければと思います。

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