レポート事例集

第21回環境コミュニケーション大賞 表彰式参加報告

イメージ

2018年2月21日、環境省及び一般財団法人地球・人間環境フォーラムが主催する第21回環境コミュニケーション大賞授賞式に参加してきました。

環境コミュニケーション大賞は「環境報告書部門」と「環境活動レポート部門」の2つの部門に分かれています。 当日は、各賞の表彰式と、「環境報告書部門」の選考ワーキンググループ座長の後藤敏彦氏、副座長の村上智美氏、また「環境活動レポート部門」の選考ワーキンググループ座長の奥真美氏による講評が行われました。

今回は、受賞されたレポートの傾向や評価のポイント、審査委員の方の総評を紹介します。

今年の特徴と評価のポイント

  • パリ協定やSDGsを受け、レポート報告は急激に活発化。現在、報告形式、手法、内容において、考え方や取り組みは非常に流動的で、いわば過渡期を迎えていると言える。
    一定の落ち着きを見せるまでには、2~3年かかる見通し。
  • 今回のアワードでは、こうした不確実性の高まりにおいても持続可能な社会の形成を目指し、「気候変動への対応」などを積極的に経営戦略に取り組んでいる報告書を評価。
  • 具体的には下記要素の有無とその内容面の充実度を評価:
    ①マテリアリティを踏まえた目標設定
    ②エネルギー/資源に関わる中長期戦略と目標との関係性
    ③グリーン調達、CSR調達

受賞レポートの傾向

環境報告書部門

①コーポレートガバナンスの記載強化
  • 国際責任投資(PRI)にもとづいたESG投資の拡大によって、ガバナンス項目への記載強化が見受けられた。
  • 会社法の改正やコーポレートガバナンス・コードの策定といった近年の制度整備を踏まえ、中長期的に企業価値を向上させるためにコーポレートガバナンスの実践を後押しする環境整備が重要。
②報告書の形式
  • 統合報告書/サステナビリティ報告書「のみ」、あるいは、統合報告書+サステナビリティ報告書+データブックなどの複数媒体発行と、報告の形式は二極化。
  • 報告の目的と、報告形式が備える特性・位置づけを踏まえ、適切で効果的な報告形式を選択していくことが重要。
  • なお、以下の点は留意の必要がある
  • ・統合報告は、投資家向け、とりわけ年金基金などのアセットオーナを対象としている。ESG関連情報について細かな点に注目することを目的としたものではなく、企業概要などを一覧列挙で把握できるよう、財務・非財務を統合し、簡潔な形でまとめた、20~30ページ程度の報告書を想定している。

    ・ESG報告の観点では、金融調査機関によるネガティブスクリーングにあわないよう、アニュアルレポートやCSRレポートなどの分厚い報告書を活用していくことが重要。

③長期ビジョン・ガバナンス
  • 長期ビジョン・ガバナンスについては、取り組んでいる姿勢は見受けられるものの、依然多くの企業は、3年程度の中期計画に留まる。
  • 長期ビジョン作成のためには、本社の中で「経営企画・IR・環境CSR・財務といった部門の横のつながりを形成すること」がポイント。
  • 今後は組織強化を図り、企業として一丸となって「長期計画」を立案していくことを期待。

環境活動レポート部門

評価ポイントは下記

  • 環境経営を実践しているか(本業に即した取り組み内容か)。
  • 社員全員が取り組み参加しているか:代表者だけでなく社員一人ひとりの顔が見えるか。
  • レイアウトの工夫、写真や図表の効果活用、ステークホルダーを意識したストーリー形成をしているか。また、そうした工夫で、事業内容、環境経営、目標や取り組みの実績および課題を「見える化」しているか。

企業の情報開示において、今後の期待

イメージ

後藤氏と村上氏の総評では、今後の企業の情報開示への期待が語られた。
以下に、大きく3つのポイントをまとめる。

①ストーリーテリング
  • GRIスタンダードなどの国際的なレポーティングの枠組みへの準拠が求められる一方、ガイドラインやイニシアティブに寄り過ぎたために、企業の独自性が報告から抜けてしまってはならない。
  • 自社のサステナビリティ活動の意義や効果をステークホルダーに伝え、共感を得るには、読み手の関心を惹きつける「ストーリーテリング」の手法が有効。「ストーリーテリング」とは、伝えたいコンセプトや事実をストーリー(物語)として伝えることで、聞き手に内容を強く印象づける手法のことを指す。
  • 今後は、企業理念や企業戦略における「エッセンス」を、読み手視点で分かりやすいストーリーに落とし込まれているかが、良い報告書のひとつの評価ポイントに。この時に大事なのが、使いまわされた言い回しや、当たり障りのない表現ではなく、自らの言葉で、「環境及び経済価値の観点」から、読み応えのあるオリジナルのストーリーとして語っていくこと
②サプライチェーン
    サプライチェーン上での「人権や労働」への配慮は、まだ十分とは言えない。環境やコンプライアンスだけではなく、人権への配慮を心がける「CSR調達」の考え方が非常に重要。
  • CSR調達を心がけることにより、社会の成長に寄与するだけではなく、自社および取引先企業の社会的価値の向上にも貢献。
③パリ協定・SDGs対応

■パリ協定

  • トップメッセージなどで「パリ協定への対応」といった文言が見受けられるが、いざ推進している活動内容に目を向けると、依然として省エネレベルの活動にとどまっている。今後は「パリ協定対策はリスクと機会への対策」と言えるような施策の表明に期待したい。
  • 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の報告書において、シナリオ分析にもとづく情報開示が推奨されたことで、「シナリオ分析」の具体的な方法が注目されている。
  • またTCFDでは、売上高10億ドル以上の企業に対しては、たとえ気候変動がマテリアルな項目ではなく、法定開示書類の中でも開示が義務化されていなかったとしても、いずれかのツールにて「戦略(Strategy)」と「指標と目標(Metrics and Targets)」を開示することを推奨している。
  • 実態をおさえた上で、世の中の変化とその影響に対する洞察力や感度を高め、またそういった感覚を社内に浸透させることで、気候変動をはじめとする様々な変化に対する「レジリエンス」が高まり、企業の持続可能性に大きく寄与することとなる。

■SDGs

  • 採択された当初、政府から企業への明確な要請がなく、いかにして企業によるSDGsへのコミットを促進するかが大きな課題だった。しかし、SDG Industry Matrix(産業別SDG手引き) などの事例ベースのガイダンスの登場により、企業が実施することのメリットが具体的に示され、2017年の報告書では多くの日本企業が何らかのかたちでSDGsについて触れていた。
  • しかし、多くの日本企業は従来実施していること(社会貢献レベルの活動)へのタグ付け、あるいは「中長期の目標を考慮し、169ターゲットとの照合」の取り組みに留まり、2030年を見据えた「長期的な計画と戦略への落とし込み」までは推進できていない。
  • 今後は、世界的な視点で何が必要かについて検討し、目標を設定。あるべき状況と現状とのギャップを埋めていく「アウトサイドイン」の考えを持って、SDGsへの取り組みを推進していくことを期待。
  • また、得意分野での社会課題へのコミットにとどまらず、コア事業から離れた馴染みのない社会課題に対しても接点を探り当て、社会課題の解決を通じて、事業分野の拡大や技術革新に努めて欲しい。

第21回環境コミュニケーション大賞の受賞レポートは こちら


関連するページ

このページの先頭へ