レポート事例集

WICIジャパン統合報告優良企業賞から見た、これからの統合報告

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2018年11月、優れた統合報告書を表彰する「WICIジャパン統合報告優良企業賞 表彰式」が開催されました。 表彰式では受賞企業代表の挨拶と審査委員3名からの講評がありました。

今回は、審査委員からの講評のポイントを抜粋してご紹介します。

■出席した審査委員

  • 松島憲之氏(三菱UFJモルガン・スタンレー リサーチ&コンサルティング チーフアドバイザー)
  • 河口真理子氏(大和総研調査本部主席研究員)
  • 冨田秀実氏(ロイドレジスタージャパン(株)取締役)

本表彰制度の概要や、最新の受賞企業レポートはこちらをご覧ください↓
「WICIジャパン統合報告表彰」

受賞企業の評価点

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表彰されたレポートの特長として、下記のような説明がありました。

  • CEOや社長メッセージなどで、リーダーシップを出している
  • リスクと機会について、具体的に特定し描かれている
  • 企業理念からミッション、ガバナンスの仕組みへと、「情報の筋道」がしっかりしている
  • 企業の良さや事業の価値など、「企業の良さや事業を理解してもらいたい」という作り手の思いが伝わってくる
  • 事業が及ぼす影響と、ESGを関連付ける試みがみられる

また約20名の審査委員は、研究者やコンサルタント・金融機関など立場も経歴も異なっていますが、大賞をMS&ADに授与することは意見が一致し、他社とは一線を画す高い評価を得たようです。

統合報告書全体の傾向

今回応募があった報告書全体についての傾向としては、下記のような説明がありました。

  • 受賞企業も含めて、過去の振り返りが弱い。過去の財務資本政策に対して結果どうだったのか等の過去情報があると、将来の見通しにも説得力が増す。これまでの中期経営計画を見比べるのも効果的。
  • 既存事業にSDGsの各目標をラベリングするだけのフェーズはもう終わっている。次のフェーズとして解決に向けた具体的取り組みを進めて欲しい。
  • 情報ニーズは毎年変わるので、時流に応じた重要テーマ・トレンドを踏まえた開示が期待される。今年はTCFDが重要テーマだったといえるが、各社とも十分に開示できているとは言えない。
  • 「ビジネスモデル」や「戦略」の中にもっとESGをとけこませた開示ができるとよい。
  • ESGにかかわるリスクと機会を、トップメッセージなどを通じてもっと大胆にリーダーに語ってほしい。

今後期待すること(各審査委員から)

松島氏

  • 今後「無形資産」や「非財務資産」といわれるものを投資対象としていくためにも、投資家等との対話を進めてほしい。
  • 統合報告書を作って終わりにするのではなく、社内浸透などにも活用してほしい。

河口氏

  • 外部の評価視点や社会の潮流の変化は非常に早く、これに対応していく必要がある。例えば環境の分野ではこれまでIPCCが2℃目標を掲げおり、環境省などもそれをベースとして動いてきたが、現在は2℃ではなく1.5℃以内にすべきといわれている。
  • 脱炭素や脱カーボンと同様に「プラスチック」の問題も大きな動きとなっており、TCFDも含めてこういったダイナミックな動きを捉えて欲しい。

冨田氏

  • まずは社内の意識を統合していくことが重要。社内の理論がまとまっていないと、筋道の通った報告書を作成するのは難しい。
  • マテリアリティの深化も期待したい。社会的インパクトと財務的インパクトがバランスよく書けているかが重要になってくる。
  • 統合報告書意外にも、企業が情報を開示する媒体は色々あるので、それらの媒体間の連動をスムーズにしてほしい。すみわけが明確になっていると、読み手は求める情報を入手しやすくなる。その際は、情報の整合性にも配慮が必要。


講評内容とともに、実際に受賞された企業のレポートを見ていただくと、一層理解が進むかと思います。
アワードは「目的」ではなく、改善の先の結果です。ですが、アワードで紹介されていた注目ポイントやこれからの期待は、投資家が求める視点や情報になっています。今回のWICIジャパン統合報告アワードの講評内容も、ぜひ情報開示の1つの参考にしていただければと思います。

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