レポート事例集

第22回環境コミュニケーション大賞 表彰式参加報告

イメージ

2019年2月25日、環境省及び一般財団法人地球・人間環境フォーラムが主催する第22回環境コミュニケーション大賞授賞式に参加してきました。

環境コミュニケーション大賞は昨年度に続き2つの部門に分かれていますが、今年度からは「環境報告書部門」と、「環境活動レポート部門」から名称を変更した「環境経営レポート部門」の2本柱となりました。

当日は各賞の表彰式の他に、「環境経営レポート部門」では同選考ワーキンググループ座長の奥 真美氏から、「環境報告書部門」では同選考ワーキンググループ座長の後藤 敏彦氏及び副座長の村上智美氏から講評が行われました。

今回は、受賞されたレポートの傾向や評価のポイント、審査委員の方の総評を紹介します。

今年の特徴と評価のポイント

イメージ

環境報告書部門

今年は環境省の「環境報告ガイドライン」2012年版と2018年版のどちらに沿ってレポートを作成しても評価対象になりました。

しかし、GRIのスタンダード化など世界的な流れを鑑み、ガバナンス状況についての記載の強化、マテリアリティに基づく開示の強化、統合思考の強化、バリューチェーン思考の強化、の4つの視点が特に重視されました。

イメージ

第22回環境コミュニケーション大賞環境報告書部門講評 p22より

環境経営レポート部門

今回、部門名称を変更したのは、新しいガイドライン「エコアクション21ガイドライン2017年版」が、環境経営を通して企業価値向上を目指す事業者を支援・発展させることを目指しているためです。レポートの名称も「環境経営レポート」に変更となりました。

そのため採点も新ガイドラインに準拠した要素を取り入れており、2017年版ガイドラインで応募した事業者も多かったようです。(応募118社中25社、受賞29社中は11社)

新しく追加された項目は以下の2つです。

  • 組織の価値を高めて、より積極的で高度な取り組みを行っており、実態と実績、効果などを分かりやすく記載しているか。
  • エコアクション21で言及されている、代表者による全体の評価と見直しに加えて、更に代表者による具合的改善指示がレポートに反映されているか。

受賞レポートの傾向

イメージ

環境報告書部門

日本企業の情報開示のバウンダリーは「連結」で報告するなどあいまいで、世界的な基準から遅れているとされる中、今回受賞した企業はその点でも情報開示が進んでいると評価されました。

全体傾向として、優秀賞の常連化が進んでいること。また現実の取り組みは素晴らしいが、残念ながら「長期的ビジョン」を持たない受賞企業もあるとの指摘がありました。

以下、受賞企業の評価された点について、審査委員の方の総評を紹介します。

●長期ビジョン策定、未来からのバックキャスティングがされているか?

  • 長期ビジョンがないとバックキャスティングできない。
  • 経団連加入企業のうち長期ビジョンをもつ企業は66社、これから作る予定の企業は150社。上場企業の3~5割しか中期計画しかもっていない。
  • 長期ビジョンに向けたマイルストーン設定や不確実性への対応力(レジリエンス)の評価において、シナリオ分析を活用。何かが出来上がった状態になってからではなく、「検討中である」ということでも開示することが、投資家に評価される。自らのハードルをあげすぎない。
  • 受賞企業では、脱炭素ビジョン2050(長期ビジョン)⇒2030年目標の策定 ⇒RE100への参加 ⇒店舗での再エネ転換表明など、長期ビジョンからのバックキャスティングとして中期目標、現在の取り組み…という流れが整理されている企業がある。REに加盟しなくても、再生エネルギーへの切り替え宣言ができるはずである。

●冊子全体を通したストーリーが分かりやすく作られているか?

  • トップメッセージから、各種環境・社会課題認識を踏まえた目指す社会像、そこへ向けて価値創出していく企業像・企業戦略を強く訴える内容構成、さらに具体的にどうするかを伝えるまでの流れが出来ていると良い。

●統合報告では、価値創造ストーリーの中に、非財務(社会価値)と財務(経済価値)指標が腹落ち感をもって連動しているか?

  • 「アニュアルレポート」と「サステナビリティレポート」の上に、そのエッセンスとして統合思考でまとめたものが統合報告書となるべき。
  • 受賞企業のレポートには、財務と非財務情報をうまくつなげてバランスがとれている先進例がある。一番避けるべきは統合報告書のみの発行によって、企業としての情報開示量を減らすこと。
  • *ESG投融資がすすめばもっと情報量が必要とされるようになる。

環境経営レポート部門

環境経営レポート部門には中小企業からの応募が多く、以下のような点が評価されます。

  • 組織の規模にあった創意工夫がされているか
  • 組織ならではのレポートになっているか
  • 業種と本業との関連や取り組みが盛り込まれているか
  • オリジナリティーがあるか

バリューチェーンの中で、エコアクション21を活用しながら積極的に取り組み、情報開示をすることが奨励されていました。

以下、受賞企業の主な評価ポイントです。

  • 社員一人ひとりの顔が見え、それぞれの役割や立場によって責任を明確化し、当事者として理解し取り組んでいるか。本来の業務とエコアクションを関連づけて運用し、成果や課題を外部に伝えていくということを意識的に行われていることが高く評価。
  • コミュニケーションツールとしての「活用」を意識し、読み手の側に立ったつくりになっているか。ステークホルダーとのコミュニケーションを深めることを意識しているか。
  • トップがSDGs等、今後に向けた取り組みについて言及し、積極的な環境経営への姿勢が見られるか。振り返りだけでなく、未来を見ていることがうかがえると良い。
  • エコアクション21のガイドラインの言う「経営と環境の統合」が、意識されているか。

企業の情報開示において、今後の期待

後藤氏と村上氏から、今後の企業の情報開示への期待が語られました。

●非財務情報を財務情報として換算する

世界的に、非財務情報の財務情報化の流れがあり、ESG投融資による更なる情報開示への圧力が増す。この世界の流れに遅れをとっていた日本も、やっとスタート地点に立てたという状況。

●未来に向けた情報

これまでは過去情報のみ報告していればよかったことが、過去情報+将来情報(中長期情報)開示が求められる。

●リスク対応から、戦略展開へ

トップランナー企業は財務リスクへの対応レベルから、戦略的施策レベルに進みつつある。また、TCFDを念頭に対応強化を図る企業の多くが、社会的責任レベルから気候変動を財務リスク捉え戦略を考えるレベルに向かうための試みを始めたところ。シナリオ分析をスタートした企業もその一環。 これらを自社の健康診断と肯定的に捉え、シナリオ分析による戦略強化の役割として取り組むことを推奨したい。

■参考:非財務情報 開示 関連動向

  • 環境省環境報告ガイドライン2018策定(2018.6)
  • 作成ガイド、解説書を引き続き策定中(春公表予定)
  • GPIFグローバル環境株式指数“カーボン・エフィシェント指数”選定・公表(2018.9)
  • 経済産業省気候関連財務情報開示に関するガイダンス策定(2018.12)
  • 金融庁企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(2019.1)
  • 有価証券報告書への記載強化に関する改正

関連記事:

このページの先頭へ