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フェア・ディスクロージャー・ルールとは何ですか?

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「フェア・ディスクロージャー・ルール」(以下FDルール)とは、投資者に対して公平な情報開示を行うことを目的としています。

「上場企業等」は、証券アナリストなどの「取引関係者」に未公表の「重要情報」を伝える場合、同時に(意図的でなく伝達された場合も速やかに)その重要情報を「公表」しなければならないというルールです。

現在IR協議会は、ESG情報は「他の情報と組み合わさることによって投資判断に影響を及ぼし得るものの、その情報のみでは、直ちに投資判断に影響を及ぼすとはいえない情報」であり「重要情報」に該当しないとしているため、ESG情報開示の担当者には直接かかわりませんが、新たな情報開示のルールとしてFDルールの概要をご紹介します。


◆ルールの対象となる企業は?

上場企業等(有価証券の発行者)が対象となります。

◆適用はいつから?

2017年の金融商品取引法の改正でこのルールが導入され、2018年4月1日付で適用されることになりました。(第27条の36に定められています)

◆対象となる重要情報とは?

「公表されれば有価証券の価格に重要な影響を及ぼす蓋然性のある情報」が対象です。

さて、上記の対象となる重要情報について。前述のとおり、IR協議会では、ESG情報を以下のように捉え、「重要情報」には該当しないとしています。

ESGに関する情報(ガバナンスに関する情報を含む)は、近時の建設的対話において特に重要項目となっている。しかし、①インサイダー情報に該当したり、②公表前の確定的な決算情報で、「公表されれば確実に株価に重要な影響を及ぼす情報」に該当するような、特段の事情が存在することがあまり想定されないことから、基本的に「モザイク情報等」に該当すると考えられる。

また、金融庁のガイドラインでも、工場見学や事業別説明会で一般に提供されるような情報を「その情報のみでは、直ちに投資判断に影響を及ぼすとは言えない情報」で重要情報には該当しないとしています。

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FDルールを踏まえたベストプラクティスに関する行動指針
(主要情報ごとの建設的対話の実務対応方針)の概念図
(IR協議会「開示と対話のベスプラ指針」より)


◆罰則は?

金融商品取引法では、ルールに沿って重要情報が公表されていないと判断された場合、公表するよう指示(従わない場合は命令)できることになっています。それでも従わない場合は6月以下の懲役若しくは50万円以下の罰金に処し、またはこれを同時に刑に処すすることができるとしています。(指示・命令は第27条の38、罰則は第205条)

◆情報開示ポリシーの策定

IR協議会によるFDルールの指針には、「自社の持続的成長と中長期的な企業価値向上に向けた取り組みを、積極的に発信しかつ投資家等と深い対話を行うこと」を目的に、企業に対して情報開示ポリシーの策定を促しています。
そして、この情報開示ポリシーの内容として検討すると良い事例として以下の5項目をあげています。

  1. 「重要情報」の定義や考え方、開示の要件、「重要情報」か否かを判断するための基準や仕組み(情報開示委員会の設置等)
  2. 公表前の「重要情報」を「取引関係者」に伝えた場合の取り扱いの方針と手続
  3. 上場企業を代表して投資家等と対話するスポークスパーソンズの考え方(人物を特定するか否かの方針等)
  4. 投資家等からよく聞かれる財務情報等についての開示・説明方針
  5. 関連部署の連携体制や情報開示と対話方針の理解度向上

ポリシーを策定している事例として、下記企業が紹介されています。

■アステラス製薬「情報開示に関するポリシー」

■三井物産「投資家に対する開示の基本原則」



CSRコミュニケート 編集長コメント

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「マテリアリティ」と「重要情報」

アメリカのSASBは、「マテリアリティ」を「省略された事実がもし開示されていたら、合理的な投資家にとっては、利用する情報の総合的な判断に大きな影響を与える可能性あるもの」と捉え、フェア・ディスクロージャー・ルールにある「公表されれば有価証券の価額に重要な影響を及ぼす蓋然性のある情報」に該当しうるものであると考えています。 そしてSASBは財務に直結する重要なESGテーマを産業ごとに特定し、企業はそのマテリアルなテーマを最低限含めた形で、企業側が独自に選定したマテリアル情報の開示を求めています。

一方で、日本では日本版SASB(明確な特定)が存在せず、企業は独自にマテリアリティを決定している状況でのため、マテリアリティをFDルールの「重要情報」と同一視することは難しいと言えます。
むしろ現時点では、昨今のESG投資の流れを生かし、中長期的な企業戦略・計画等に関わる情報、すなわち「モザイク情報」としてESGテーマを扱い、投資家と企業が対話の材料として積極的に利用していくことが有効だと思われます。

「重要情報」とESG情報(マテリアリティ)の関係性について、今後もその捉え方や動向を見つつ、まずは幅広い対話の促進と、具体的な企業価値判断に利用していくことが重要でしょう。

【参考】
金融商品取引法第27条の36の規定に関する留意事項(フェア・ディスクロージャー・ルールガイドライン)」(金融庁)
情報開示と対話のベストプラクティスに向けての行動指針~フェア・ディスクロージャー・ルールを踏まえて~(「開示と対話のベスプラ指針」)」(日本IR協議会)
金融商品取引法(全文)

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