CSRレポート調査データ

環境報告書/CSRレポート2005 白書

企業が「重視」し、読者が「納得」できる情報が掲載された報告書が持続可能な社会をつくる

弊社では2002年から当白書を発行しており、今回で4年目となる。この間、環境報告書は大きく変化した。
もともと企業の環境負荷削減活動について報告することが環境報告書の目的であったが、CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)への関心の高まりに伴い、「社会性報告」を記載する企業が増加している。事実、本年度の報告書のタイトルは、「環境報告書」は426社中132社と31.2%にとどまり、そのかわり「社会環境報告書」が164社(38.5%)、「CSRレポート」が81社(19.0%)、「サステナビリティレポート」が21社(4.9%)という結果になっている。

「社会性報告」増加のに背景には、周知のとおり、全世界で適用可能な報告書のガイドライン作りを推進するGRI(Global Reporting Initiative)による「GRIサステナビリティ・リポーティング・ガイドライン」において「経済」「環境」「社会」の3つの分野について報告を奨励していることがあげられる。その結果、環境省の「環境報告書ガイドライン2003」においても環境報告に加え、社会性報告の項目が追加された。また、財務面だけでなく、環境や社会への取り組みを考慮し、投資先を決定するSRI(Social Responsibility Investment:社会的責任投資)の拡大も挙げられる。
一方、残念ながら相次ぐ企業の不祥事も大きな理由の一つといえる。コンプライアンス(遵法)について記載する企業は7割以上見られた。「社会性報告」についても、顧客、従業員、取引先、地域社会、株主といった企業活動を行ううえでかかわりのある人々、いわゆるステークホルダー(利害関係者)への取り組みを記載する企業も増加傾向にある。

しかし、確かに記載する項目が増え、ページ数も増加傾向にあるが、中身は昨年度と大きな差はないように筆者には見受けられる。例えば従業員への取り組みで人事制度の方針や仕組み、施策は掲載されているが、それに対し従業員やその家族はどう思っているのか、従業員やその家族の意見を採り入れてどのように改善したか、そもそも従業員やその家族に対して企業はどう考えているのかについては書かれていない場合が多い。つまり、PDCAサイクルのDo(実施)はあるが、C(Check:点検)、(Action:改善)がなく、CheckとActionを行っていないからPlan(計画)の立てようがないというふうに読めてしまう。
さらに環境省やGRIのガイドラインで奨励されている記載項目は網羅的に満たしているが、その企業や環境・社会への取り組みに対して何を重視しているのか見えづらい内容にとどまっていると筆者は感じる。例えば従業員への取り組みをみても、その企業の業種、業態によって重視すべきことは異なるはずだ。また、少子高齢化や格差の広がりなど、社会環境の変化に応じて、従業員への取り組みも変わるはずである。

このようにいま自社が重視していることは何なのか、また、その重視しているものは社会にとって納得のいくものなのか、という視点をもって企業は報告書を作成することが求められていると筆者は感じる。また、それに対し「読者」が反応し、さらには報告書の記載情報をもとにその企業を支持したり、変化を求めるようになったとき、読者は企業にとって真の「ステークホルダー(利害関係者)」になるだろう。
CSRのResponsibilityは「責任」と訳されるが、そもそも「respond(反応)」と「ability(能力)」という言葉からきている。企業も、読者も「反応」する「能力」を互いに持ったとき、初めて報告書は企業とステークホルダーをつなぐコミュニケーション・ツールとなり、持続可能な社会をつくる原動力になると、筆者は信じたい。

株式会社YUIDEA(旧:株式会社シータス&ゼネラルプレス)企画調査室
主任研究員/シニアプランナー
筑紫 透

このページの先頭へ