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ESG情報と企業の任意開示の可能性:第2回 SRIの基本と変遷

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ESG情報と企業の任意開示の可能性を考える上では、まずSRIの基本を把握しておくことが必要です。なぜなら、SRIは企業の収益性や成長性だけでなく、社会性や倫理性も考慮して社会貢献度の高い企業に投資していこうという流れを受けたものであり、ESG投資の源流とも言えます。

第2回は、SRIの基本と、欧米と日本のSRIの違い、責任投資への変遷について整理します。


SRIの基本

SRI(Socially Responsible Investment)とは、企業がCSRに取り組むのと同様に、年金基金、金融機関、個人などの投資家が投資の社会的役割を考え、企業の社会課題への取り組みを評価して銘柄選択などをする投資です。SRIは、1920年代の米国においてキリスト教教会などの宗教基金が、『教義に反する事業を行っている企業には株式投資しない』という投資方針を打ち出したことが始まりと言われています。SRIは社会性、倫理性に反する企業は投資対象から排除するという、「ネガティブ・スクリーニング」の動きから始まっています。

SRIの投資手法は、上記のネガティブ・スクリーニングに加えて、環境対策に積極的に取り組むなど、企業の良い面を評価して投資する「ポジティブ・スクリーニング」、既存の財務分析に加えて投資意思決定プロセスにESG要因を組み込む「インテグレーション」、株主として企業経営者と対話し、経営改善を求める「エンゲージメント」などに広がっています。近年は、ネガティブ・スクリーニングとインテグレーションが主流となっており、このインテグレーションにおいて、ESG情報が投資リターンに直結する要因として、重要性が高まっています(図1)。

図1

図1:投資手法・地域別SRI資産残高
(出典:The Global Sustainable Investment Review 2014,P8)

欧米と日本のメインプレーヤーの違い

SRIは、欧米では機関投資家がメインプレーヤーであるのに比べて、日本は個人投資家がメインプレーヤーとなっています。

図2

図2:地域別SRI運用資産残高(2014)
(出典:The Global Sustainable Investment Review 2014,P7)

欧米では、機関投資家である公的年金基金がSRIに基づいた運用を行っており、SRIの地域別資産残高を見ると欧米が圧倒的に多い状況です(図2)。これは、年金運用と社会的・文化的背景との関係があります。『国民から預かったお金を倫理性に反する企業に投資するとは何事か』という一般市民からの声の高まりに、年金基金が配慮せざるを得なくなった、というものです。

例えば、オランダではドキュメンタリー番組で「大規模な年金基金が、クラスター爆弾などの兵器を生産する企業や環境汚染をしている企業に投資している」と報道され、SRI市場の拡大に影響を与えています。米国では、ベトナムの反戦運動や南アフリカのアパルトヘイト政策への反対運動など、社会的関心の高まりを背景にSRIの関心や手法が大きく広がった経緯があります。

一方で、日本のSRIは1999年に発売された「エコファンド(国内株式投資信託)」が始まりとなっています。これは個人投資家向けの商品です。


Sの意味が変化

SRIは、「社会的責任投資(Socially Responsible Investment)」の略語でしたが、近年はSの意味が変わり、「持続可能性と責任ある投資(Sustainable and Responsible Investment)」に呼び名が変わっています。

この背景には、「持続可能性」について国連を中心に議論が行われたこと、気候変動や貧困問題などの地球規模での問題が顕在化し、特に欧米の機関投資家の考え方に変化が表れ、金融ビジネスを通じて持続可能な社会を構築できないかという動きが生まれたことにあります。

現在では、企業の持続可能な社会構築を支援する投資活動としてのSRIが認知されています。


責任投資へ

さらに、近年はSもなくなり、RI(責任投資)と呼ばれています。きっかけは2006年に国連環境計画・金融イニシアチブと国連グローバル・コンパクトが推進し、当時のコフィー・アナン国連事務総長が提唱した責任投資原則(PRI: Principle for Responsible Investment)です。この原則では、責任投資を「投資の意思決定や株式所有活動においてESGの要素を考慮する投資手法」と明記しており、機関投資家にPRIへの署名を求めています。

青山学院大学の北川哲雄氏は「ESG投資とSRIは全く異なるものである。SRIは投資先企業が社会・倫理・環境などの項目で社会的責任を果たしているかどうかが重要な投資基準となる。一方、ESG投資は長期的な投資パフォーマンスに重点が置かれる」と述べています。

責任投資は、投資運用においてESG課題を考慮することと運用パフォーマンスの最大化は相反するものではなく、長期的な投資パフォーマンスを向上させることが目的です。ここにメインストリームの投資家からの賛同を得たことが大きいと言えます。現在、PRIに署名する機関投資家は1,374機関となっており(4月23日現在)、着実に増加しています。

次回は、機関投資家がこのESG情報をどのように利用しているのか、ESG投資の現状について触れていきます。


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参考・引用文献

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