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ESG情報と企業の任意開示の可能性:最終回 すべての道は「対話」に通ず

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日本版スチュワードシップ・コードの策定とコーポレートガバナンス・コードの施行によって、企業と投資家の「対話」を求める動きが加速しています。本連載の最終回として、企業と投資家の対話と統合報告書について触れていきます。


企業と投資家の「対話」を促進する2つのコード

2014年2月に公表された日本版スチュワードシップ・コードは、機関投資家が企業との対話を通じて企業価値向上や持続的な成長を促し、顧客や受益者などに対する責任を果たすための原則を7つにまとめたものです。

スチュワードシップ・コードの発祥は英国ですが、日本版では、アベノミクス「第3の矢」、つまり日本経済成長戦略の一翼を担うものとして定められています。「建設的な対話」の活発化が、企業収益・株価の上昇を促し、日本経済の発展に資するとの考えに基づいています。

一方、2015年6月1日から上場会社に施行されたコーポレートガバナンス・コードは、実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめたものです。コードの冒頭には、主要な原則が「適切に実践されることは、それぞれの会社において持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のための自律的な対応が図られることを通じて、会社、投資家、ひいては経済全体の発展にも寄与することとなるものと考えられる」と記載されています。

これら2つのコードの目的は、企業と投資家との対話の促進です。日本版スチュワードシップ・コードは金融庁から機関投資家に対して対話を求め、コーポレートガバナンス・コードは金融庁から上場企業に対して対話を求めています。

日本IR協議会の佐藤淑子氏は、著書のなかで次のように述べています。
――「投資家というのは将来を見据えて企業を評価しますので、その視点はトップの目線とかなり重なると思います。したがって、経営トップの方が投資家と対話するとき、日頃から考えている経営課題とか問題意識とかを投資家と目線を同じくして語ると『気づき」が生まれたり、投資家の発言をうまく活用したりということにつながります」――

このように、企業と投資家の双方で対話を促進することで「気づき」が生まれ、企業の持続的な成長を促すことが期待されます。


統合報告書は対話を促進する有効なツール

経済産業省が行ったESG情報の活用状況に関するアンケート調査によると、ESG情報は過半数の投資家(58.6%)が統合報告書から収集しており、企業との対話、外部(ESG情報提供機関等)の活用と並んで主要な情報源となっています。

図1:ESG情報をどのように収集しているか

図1:ESG情報をどのように収集しているか(複数回答可)
(出典:投資家等を対象としたESG情報の活用状況に関するアンケート調査2014報告書 P.10)

統合報告書の活用方法については、「企業との対話に用いるという意見も多く見られ、統合報告書を通して、投資家・企業間の対話が促進される」という回答も得られたとのことです。

一方で、投資家の視点から、ESG情報を重視する投資家を中心にガバナンス、ストーリー性を重視するべきという回答が多く、投資家が求める情報については、現状では充分に記載されていないという状況が見受けられます。

図2:投資家の視点から、統合報告書はどのような情報開示を行うべきと考えるか

図2:投資家の視点から、統合報告書はどのような情報開示を行うべきと考えるか
(出典:投資家等を対象としたESG情報の活用状況に関するアンケート調査2014報告書 P.15)

以上のように、統合報告書の内容を改善し、対話のツールに用いることで、投資家と企業の情報の「ギャップ」を埋めることにつながるのではないでしょうか。このギャップを埋めるための任意開示のあり方はさまざまな可能性があり、唯一の正解はありません。各企業の理念、中期戦略、社会・環境とのかかわり、戦略を支えるガバナンスなどをストーリーとして統合的に「考え続ける」ことが重要であると考えます。

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参考文献
  • 「IRの成功戦略」 佐藤淑子、日経文庫、2015
  • 「スチュワードシップ・コード時代の企業価値を高める経営戦略」 藤井智朗・笹本和彦[監修]、ニッセイアセットマネジメント株式会社[編]、中央経済社、2014
  • 「コーポレートガバナンス・コードの実践」 武井一浩[編著]、日経BP社、2015
  • 「責任ある機関投資家」の諸原則≪日本版スチュワードシップ・コード≫~投資と対話を通じて企業の持続的成長を促すために~」 日本版スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会、平成26年2月26日
    http://www.fsa.go.jp/news/25/singi/20140227-2/04.pdf
  • 「コーポレートガバナンス・コード原案~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~」 コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議、平成27年3月5日
    http://www.fsa.go.jp/news/26/sonota/20150305-1/04.pdf
  • 「投資家等を対象としたESG情報の活用状況に関するアンケート調査2014報告書」 経済産業省 産業技術環境局 環境政策課 環境経済室、2015
    https://www.ecosearch.jp/ja/images/eqpdf/report_150306.pdf

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