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どこまで出来ていますか?気候変動を踏まえた、財務情報の開示

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パリ協定が採択され、今後国ごとの削減計画が策定されることになります。低炭素社会への移行が確実となってきましたが、投資家にはどの企業が気候変動に脆弱で、どの企業が対策をとっているかを知ることは困難です。
そこで、金融システムの安定化を図る国際的組織、金融安定理事会(FSB)は、2016年に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」を始動。そしてTCFDは、以下を目的とした提言を公開しました。

・気候関連のリスクと機会について情報開示を行う企業を支援すること
・低炭素社会へのスムーズな移行によって金融市場の安定化を図ること

今回は、このTCFDの提言の内容について、紹介していきます。

提言の内容

気候関連の「リスク」と「機会」が、財務に及ぼす影響

下図のように、気候関連のリスクと機会が財務に及ぼす影響を整理しています。 例えば気候関連の「機会」には、「効率的な輸送手段の利用」「より効率的な生産・流通プロセス」などの資源の効率をあげています。 一方これに対して、「操業コストの削減」「生産力の増大」といった潜在的な財務上の影響が存在するといった、具体例が説明されています。


気候関連のリスクと機会、及び財務上の影響


開示が推奨される情報(全セクターと業界別に)

すべてのセクターに対して開示が推奨される情報と、業界別のガイダンスが用意されている情報との2つがあります。
すべてのセクターを対象とした情報としては、下記があがっています。


全セクターを対象とした開示情報


一方、金融業界と、気候変動リスクの類似性に基づいて分類された4つのグループごとに業界別ガイダンスも用意されています。
どの分野に業界別ガイダンスが存在しているかがマッピングされており、金融業界では「戦略」「リスク管理」、金融以外の業界では「戦略」「指標と目標」が中心となっています。

業界別での開示情報


「シナリオ分析」による情報開示を!

CDPやGRIも気候関連リスクや機会に関する企業の情報開示を求めていますが、気候関連のリスクや機会は中長期的に現れる場合が多いことから、戦略分野にある「シナリオ分析※」の手法を取り入れた情報開示を推奨していることがこの提言の特徴です。

※シナリオ分析:戦略を立案する上で、不確実性(リスク)要因に対応するために、複数の異なる条件での戦略を分析する手法。事前にシナリオ分析をしておくことで、変動があった場合の対応策を事前に検討し、適切な準備をしておくことが出来る。

TCFDでは地球の平均気温上昇を2℃までにとどめる「2℃シナリオ」を目指しており、さらに「国別約束(NDC)シナリオ」、「なりゆき(ビジネス・アズ・ユージュアル)シナリオ※」など、複数のシナリオを検討した上で、シナリオを選定することが重要だとしています。

そして、気候関連のリスクの影響を大きく受ける組織は、以下のような情報の開示を検討する必要があるとしています。

1. 利用したシナリオ、各シナリオの基本となる重要な想定、「なりゆき」から大幅に乖離するシナリオを検討したかどうか

2. 使用した「2℃シナリオ」について、既存「2℃シナリオ」から調整した点

3. 以下の要素など、使用したシナリオの重要なインプット・パラメータ、想定、分析上の選択

-内部炭素価格とそれがどう変化するかの想定

-政策的対応・技術的対応のタイミングの想定

4. 時間枠(短・中・長期マイルストーン、どのようなタイミングで影響が現れると想定したか)

5. 検討されたシナリオのもとで可能性が高いとされる組織の戦略的成果、重要な財務的影響など、シナリオ分析から導かれる結論

※なりゆきシナリオ:温暖化対策をせず、現在の延長線上にある未来像を描いたシナリオ。なりゆきシナリオの場合、4度以上の温度上昇が起こるともされている。

今後の予定

この提言が制度的開示として採用されるか、ガイドラインレベルでとどまるかは不透明ですが、企業の情報開示に少なからず影響を及ぼすことが予想されます。2017年2月にパブリックコンサルテーションが終了しており、2017年6月までに最終提言が公開される予定です。


【参考サイト】

●提言本文「 Implementing the Recommendations of the Task Force on Climate-related Financial Disclosures」(TCFD)
●「気候関連財務情報開示タスクフォースによる提言」(提言の日本語版)
●Sustainable Japanの関連記事
●IGESによる解説
●KPMG による解説

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