「グローバルリスク報告書2018」解説 3つのポイント
世界経済フォーラム(WEF)は、パブリック・プライベートの両セクターの協力を通じて、世界情勢の改善に取り組む国際機関です。
1971年に設立されて以来、独立した公正な組織として主要な国際機関と連携して活動しており、毎年1月にダボスで開催する年次総会に合わせて「グローバルリスク報告書」を発表しています。
この報告書の中心である「リスク」、リスク特定の背景にある「トレンド」、特集が組まれている「Future Shocks」の3項目について、ご紹介します。
1. グローバルリスク
本報告書のメインは、このグローバルリスクです。全体で30のリスクが挙げられており、これを影響の大きさと発生可能性でマップしたものが、以下の図となります。
最も影響が大きく、発生可能性が高いと位置づけられるのは「異常気象」となり、次に「自然災害」「気候変動緩和適応への失敗」と環境関連事項が続いています。
■発生可能性が高いリスクTop5
- 異常気象
- 自然災害
- サイバー攻撃
- データ詐欺・データ盗難
- 気候変動緩和・適応への失敗
1位は2年連続「異常気象」、さらに昨年3位だった「自然災害」は2位となり、気候変動へのリスクが強く認識される結果となりました。また「サイバー攻撃」「データ詐欺・データ盗難」が3位4位となり、情報セキュリティに関する項目が続いています。
■負の影響が大きいリスクTop5
- 大量破壊兵器
- 異常気象
- 自然災害
- 気候変動緩和・適応への失敗
- 水の危機
5位までに入った項目は前回と同様でした。1位と2位は2年連続「大量破壊兵器」「異常気象」となり、「水の危機」は前回の3位から5位に下がりました。
2. 13のトレンド
「トレンド」は「リスクを増幅させたり、リスク同士の関係性に変化を与えたりする長期的な傾向」と定義されており、2015年の報告書から紹介されるようになりました。 本報告書に掲載されている下図は、13の各トレンドが周囲にひし形として表現され、中心の正方形が各リスクとなっており、トレンドとリスクの関連性を図示されています。
例えば、リスクとの関連性が高いトレンドはより大きいひし形で色濃く表現され、「Rising cyber dependency(サイバー依存度の上昇)」と「Changing climate(気候変動)」は特に大きく表現されています。(図の一番下と左上)
「Ageing population(高齢化)」「Increasing polarization of societies(社会の分極化)」「Rising income and wealth disparity(富と所得の格差拡大)」がそれに続きます。

3. 10の「Future Shocks」
報告書では、いくつかすでに予兆がみられるものもあるとしたうえで、下記の10の「Future Shocks(将来突然起こりうる危機)」も掲載されています。
- Grim Reaping:穀倉地帯が同時に機能障害に陥り、世界的に食糧難になる
- A Tangled Web:人工知能(AI)が増殖し、インターネットが機能不全になる
- The Death of Trade:国際機関対応できなくなり、貿易が成立しなくなる
- Democracy Buckles:新たなポピュリズムが、既存の自由民主主義の脅威になる
- Precision Extinction:AIとドローンによって、水産資源が乱獲される
- Into the Abyss:政策では対応しきれない経済・金融危機が生じる
- Inequality Ingested:バイオ工学と人間の能力を高める薬品を持つ者と持たざる者の差が拡大する
- War without Rules:国家間のサイバー攻撃が、エスカレートする
- Identity Geopolitics:自国や地域を守るための紛争が増加する
- Walled Off:規制、セキュリティ強化、保護主義がインターネットを分断する
まとめ
ご紹介したリスクやトレンド、Future Shockは必ず起きると断言できるものではありませんが、ダボス会議に参加するリーダーや、シンクタンク・学術機関へのヒアリングなどを踏まえて特定されたものです。
ただの「予測」として認識するだけでなく、現実にならないように何ができるのかを考え、どのように行動に移せるかが問われています。
【参考記事】
【参考リンク】
The Global Risks Report 2018 13th Edition
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