GRI共通スタンダード(101、102、103)の改定はどうなるのか?ドラフトのご紹介
GRI では、共通スタンダードの「101基礎」「102一般開示事項」「103マネジメント手法」の改定を進めており、ドラフト版が公開されました。
改定の目的は、報告の質と一貫性を改善し、組織が経済、環境、および人々への影響を開示する基準の使用方法を改善するためだとしています。
実際の改定版は2021年の公開を目指しているため、今回ご紹介する内容は確定事項ではありません。
ですが参考として、改定が検討されている内容の中から、レポーティングの基本的要素に関わる以下についてご紹介します。
●100番台の改定概要
●101基礎に関する改定
100番台の改定概要
現状 | 改定案 | |
---|---|---|
100番台の構成 | 101基礎 102一般開示事項 103マネジメント手法 |
101GRIスタンダードの使用 102組織について 103マテリアルな項目 |
使用する スタンダード |
共通スタンダード(100番台) +項目別スタンダード(200~ 400番台)の中から重要なもの |
共通スタンダード100番台 + セクタースタンダード +項目別スタンダード(一本化される予 定)の中から重要なもの |
セクタースタンダード
セクター別でのガイドラインは、GRIスタンダートになる以前から既に作成されていました。しかし今回の改定では、「業界別に重要な項目を特定することが有効」という考えから、改めて「GRI Sector Program」として、セクター別スタンダードの作成が進められています。
セクター別スタンダードの作成は、「持続可能な開発」への影響が大きいセクターからスタートしており、 影響の大きいすべてのセクターのスタンダード作成が予定されています。 2020年10月の時点では、「石油とガス」「石炭」「農業と漁業」のセクタースタンダードが作成中となっています 。
では続いて、101基礎(改定後:GRIの使用)にフォーカスして、改定内容を見ていきましょう。
101基礎(→「GRIスタンダードの使用」)の改定内容
現状 | 改定案 | |
---|---|---|
構成 |
【1】報告原則 【2】サステナビリティ報告におけるGRIスタンダードの使用 【3】GRIスタンダードの使用に関する主張 ・重要用語 |
【1】イントロダクション 【2】GRIスタンダードの主要コンセプト 【3】サステナビリティ報告におけるGRIスタンダードの使用 【4】報告原則 【5】サステナビリティ報告への追加の推奨事項 |
1.報告原則 |
・「報告内容に関する原則」として4つの原則 ・「報告品質に関する原則」として6つの原則 |
・「報告内容に関する原則」に記載 されていた「ステークホルダーの包摂」と「マテリアリティ」 は、 上記の「【2】GRIスタンダードの主要コンセプト」に含まれる ・「報告内容」「報告品質」の区別がなくなる |
3.GRIスタンダードの使用 に関する主張 |
・準拠または参照 ・準拠には2つのオプション(中核オプション、包括オプション) |
・準拠(アプローチA)または参照(アプローチB)
・準拠のオプションは廃止 |
重要用語 |
101の理解に役立つ用語を、用語集 の中から抜粋して紹介 |
― |
GRIスタンダードの主要コンセプト
上記表の構成の【2】GRIスタンダードの主要コンセプトでは、「インパクト」「マテリアルな項目」「デューディリジェンス」「ステークホルダー」の4項目を解説しています。
「1.報告原則」にこれまで含まれていた「ステークホルダー」「マテリアルな項目」ですが、「GRIスタンダードの主要コンセプト」に移り、下記のような説明がされています。
・ステークホルダー
ステークホルダーとは、組織の活動や決定によって影響を受ける、または影響を受ける可能性のある利害関係を持つ個人またはグループです。組織の利害関係者の一般的なカテゴリには、ビジネスパートナー、市民社会組織、消費者、顧客、従業員その他の労働者、政府が含まれます。
ステークホルダーは、複数の利害関係を持つことができます。すべての利益を同様に重要とする必要はないため、同じように扱う必要はありません。
一方、人権などの利益に関しては、組織の活動や決定によって悪影響を受けている、または悪影響を受ける可能性がある個人またはグループを特定することに重点を置いています。
利害関係者は、組織と直接の関係を持つ必要はありません。たとえば、組織のサプライチェーンの労働者や、自分の見解を明確にすることができない人々(例えば、将来の世代)、ステークホルダー自身が特定の組織の利害関係者であることに気付いていない可能性があります 。
・マテリアルな項目
組織は報告すべきインパクトを特定する必要があります。GRIスタンダードを使用する場合、組織は経済・環境・人権を含む人々への最も重要なインパクトを反映するトピックスの報告を優先します。
インパクトに優先順位を付けるためには、その重要性を評価する必要があります。
負のインパクトの重要性は、重要度と発生可能性に基づいて評価されます。人権に負の影響を及ぼす可能性がある場合、インパクトの重要性は高くなります。
正のインパクトの重要性は、その規模・範囲・可能性に基づいて評価されます。
サステナビリティ報告への追加の推奨事項
この項目では、サステナビリティレポートを他の種類のレポートと整合させること、およびレポートの信頼性を高める方法として「内部統制」「外部保証」「ステークホルダーや専門家パネル」について紹介されています。
GRI共通スタンダードの改定は、GRIがガイドラインからスタンダードになって初めてということで、心配に思う方も多いかもしれません。しかし、GRI共通スタンダードの改定版が公表されるのは、来年(2021年)中となっており、今すぐに対応が求められるものではありません。また、GRIはSASB等と情報開示のフレームワークを統合する取り組みも進めています。
2021年の報告に向けては、このような改定動向を把握しつつも、まずは既に改定・公開されている下記のスタンダードへの対応を進めていくと良いでしょう。
■2021年以降、改定版の使用が必要なスタンダード
GRI207:税
GRI303:水
GRI403:労働安全衛生
■2022年以降、改定版の使用が必要なスタンダード
GRI306:廃棄物
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ガイドライン解説:GRIスタンダード
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100 101 102 CSR ESG GRI グローバルレポーティングイニシアティブ スタンダード 一般開示項目 改定
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