「グローバルリスク報告書2022」環境面のリスクがより深刻化
世界経済フォーラム(WEF)は、公共・民間両セクターの協力を通じて、世界情勢の改善に取り組む国際機関です。1971年に設立されて以来、独立した公正な組織として主要な国際機関と連携して活動しており、毎年年次総会に合わせて「グローバルリスク報告書」を発表しています。
※グローバルリスクとは、「発生した場合、今後10年間に複数の国または産業に著しい悪影響を及ぼす可能性のある不確実な事象または状況」のことです。
期間ごとの主要なグローバルリスク
グローバルリスク報告書2022年版は、最新のグローバルリスク意識調査(GRPS)の結果を示し、現在の経済、社会、環境、テクノロジーの問題から生じる主要なリスクを分析したものです。
2022年になっても新型コロナウイルスの感染拡大は世界に重大な経済的・社会的影響を及ぼしています。ワクチン接種の不平等と、その結果生じる不均衡な経済回復は、社会の分断と地政学的緊張をさらに悪化させる危険性があります。パンデミックの連鎖的な影響によって、気候変動対策の強化やデジタル・セーフティの向上、生活と社会の一体性の回復、宇宙での競争の管理といった世界共通の課題への対応が遅れる危険があります。
今後10年間でのリスク
直近の2年間では、パンデミックが始まって以降、最も悪化したのは「生活破綻の危機(0-2年の第2位)」「社会的結束の侵食(0-2年の第4位)」「メンタルヘルスの悪化(0-2年の第6位)」といった社会リスクでした。また、今後世界が前向きで楽観的だと感じている人は16%に過ぎませんでした。
今後5年間については、再び社会および環境リスクを最も懸念すべきものとして挙げている一方、今後10年間という長期的展望では、環境リスクが上位を占めました。環境リスクは、世界にとって最も重要な長期的リスクであると同時に、人々と地球に最も損害を与える可能性があると認識されており、「気候変動への適応(対応)の失敗」「異常気象」「生物多様性の損失」が上位3項目に挙がりました。このほか「債務危機」「地経学的対立」も挙がっています。
「デジタル格差」や「サイバーセキュリティの失敗」などの技術的なリスクも短期・中期的には世界にとって重要な脅威ですが、長期的には順位が下がり最も深刻となり得るリスクには含まれませんでした。
■経済回復のスピードの違いによるリスク
パンデミックに起因して、世界経済は2024年までにパンデミックが発生しなかった場合に比べて2.3%縮小すると予測されており、一次産品価格の上昇、インフレ、債務が新たなリスクとして浮上しています。
一部の国では、ワクチンの急速な普及、デジタル変革の成功、新たな成長機会により、短期的にはパンデミック前のトレンドに戻り、長期的にはより強靭性のある見通しが得られるかもしれません。一方他の多くの国々は、ワクチン接種率の低さ、医療制度や体制への深刻なストレスの継続、デジタル格差、雇用市場の停滞によって経済も縮小します。
■場当たり的な気候変動への適応(対応)は、不平等を増長させる
「気候変動への適応(対応)の失敗」は長期的リスクの第1位となっています。気候変動による影響はすでに顕在化しており、政府や企業は最悪の事態を回避するために動き出していますが、セクターによる対応のスピードや温度差が協調の障壁となっています。
ロックダウンによって一時期温室効果ガス(GHG)排出量は世界的に減少しましたが、すぐに増加傾向に戻りました。炭素集約的産業への依存を続ける国はさらなるリスクに直面すると考えられますが、現在何百万人もの労働者を雇用する炭素集約型産業からの急激なシフトは、経済の変動や失業の深刻化といったリスクを伴います。さらに、性急な環境政策の採用は、自然界に予期せぬ結果をもたらす可能性もあります。
■デジタル化、移民、宇宙に関するリスク
コロナウイルス感染拡大によって加速した「デジタル化」は、社会を大きく変えました。この1年半で、産業は急速にデジタル化し、労働者は可能な限りリモートワークにシフトし、この変化を促進するプラットフォームやデバイスが急増しましたが、同時にサイバーリスクも増加の一途を辿りました。予防には高いコストがかかるだけでなく、偽情報、詐欺、デジタルセキュリティの欠如などリスクが多様化していくことも対策が困難な要因です。
「非自発的な移住」も長期的リスクとして上がっています。2020年には、世界全体で3,400万人以上の海外避難民が発生しましたが、パンデミックの影響や経済保護主義の高まり等が移民にとっての高い障壁となり、移動が困難になっています。 2021年には子供を含む4,500人の移民がその移動の途中で死亡または行方不明となりました。
このほか特に軍事化の促進に伴い、「宇宙」に関連する新たなリスクが出現してきています。宇宙で活動する主体や範囲が増えることで、衝突が生じる可能性が高まるため、宇宙を規制するためのグローバル・ガバナンスの必要性が高まっています。宇宙活動の活性化は、未知の環境負荷を高め、気象観測や気候変動の監視といった公共的なコストが上昇する可能性も指摘されています。
企業にとって、このようなリスクを認識することは戦略立案・実行に不可欠となっています。国や企業、自治体などのさまざまな組織が、グローバルリスクの分析結果を活用し、優れたレジリエンスを構築していくことが期待されます。
「CSR革新室」とは?
- 「CSR革新室」とは、CSRコミュニケートを運営する株式会社YUIDEA(ユイディア)内にある1つの部署です。よりよい社会づくりに貢献すべく、企業のCSR活動、CSRコミュニケーションの革新を支援しています。
CSR革新室 WEF グリーン・リカバリー グローバルリスク グローバルリスク報告書 パンデミック 世界経済フォーラム 気候変動
- 「グローバルリスク報告書2023」ポリクライシス(複合危機)の可能性を指摘 [こちらCSR革新室]
- 【国際】国連やIRENA等、平和維持活動での再エネ転換宣言。デンマーク、ノルウェー、UAE等支援 [Global CSR Topics]
- CO2
- CSR
- CSRレポート
- CSR革新室
- ESG
- EU
- GRI
- IIRC
- SDGs
- YUIDEAセミナー
- アメリカ
- カーボンニュートラル
- サステナビリティ
- サステナビリティレポート
- サプライチェーン
- サーキュラーエコノミー
- セミナー
- セミナー開催
- ダイバーシティ
- プラスチック
- プレスリリース
- マテリアリティ
- リサイクル
- 中国
- 人権
- 再生可能エネルギー
- 取材記事
- 太陽光発電
- 情報開示
- 投資家
- 新型コロナウイルス
- 日本
- 東日本大震災
- 株式会社YUIDEA(旧:株式会社シータス&ゼネラルプレス)
- 気候変動
- 海外CSR
- 温室効果ガス
- 環境省
- 生物多様性
- 社会貢献活動
- 経済産業省
- 統合報告
- 統合報告書
- 自然エネルギー
- 電気自動車