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The GRI Perspective:どのようにすればステークホルダーキャピタリズムを実現できるのか

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※本記事は、GRIから許可を得て、翻訳・掲載しております。 Copyright: Global Reporting Initiative (GRI). This content was created by GRI and has been republished with permission from GRI.

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ブラックロックのCEOであるラリー・フィンク氏は年次書簡で次のように述べました。
「ステークホルダーキャピタリズムとは、社会問題への意識の高さではなく、資本主義である。」
GRIは、この言葉に強く同意します。GRIは25年前、組織とそのステークホルダーの間の透明性とWin-Winな関係こそが、良いビジネスであるという考えに基づいて設立されました。GRIではこれを「マルチステークホルダー・アプローチ」と呼んでいます。
企業が株主・投資家重視の戦略から、ステークホルダー重視のモデルへと移行すべきと言うのは簡単なことです。しかし、それは実際には何を意味するのでしょうか。また、ネットゼロ、社会的包摂、同一賃金、多様性、倫理的な納税などの課題に関して、企業が交わした約束を守るにはどうしたらよいのでしょうか。

ステークホルダーキャピタリズムとは本質的にどういうものなのか

特に1980年代以降に広く支持された新自由主義経済では、企業は株主や投資家に対してのみ説明責任を負うとみなされます。この文脈では、「利潤の最大化」が企業の主な義務であり、社会問題への対応は政府の責任とされます。現在では多くの人が、このような考え方はもはや通用しないと考えています。

株主の利益のために価値を創造するという企業の目的は、より多くのステークホルダーのために、社会との関わりや気候・社会への影響を考慮した、より広い視点へと移行しつつあります。なぜなら、これらのテーマを考慮しないことによって、企業の評判やブランド、人材獲得の競争力、バリューチェーンやサプライチェーン内の環境リスクの軽減と管理、資本市場へのアクセスなど、さまざまな面で不利になるからです。
この動きにおける最近のマイルストーンとしては、世界経済フォーラム(WEF)の国際ビジネス評議会による「コーポレートガバナンスの新しいパラダイム(The New Paradigm of Corporate Governance)」、それに続く「ダボスマニフェスト2020」、さらに米国ビジネスラウンドテーブルによるステークホルダーガバナンスの採用が挙げられます。

ステークホルダーを理解する

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利害関係とは、個人やグループにとって価値のあるもので、組織の活動によって影響を受ける可能性のある関係を指します。影響を受ける可能性のある個人や集団は、ビジネスパートナー、市民社会組織、消費者、顧客、従業員、政府、地域社会、NGO、株主・投資家、サプライヤー、労働組合、脆弱なグループなど、数多く存在します。これらを総称して、ステークホルダーと呼んでいます。

ステークホルダー中心の経済モデルにおいて、企業はステークホルダーの利益を考慮しつつ、投資家にとって魅力的であり続ける必要があります。しかし、それは簡単なことではありません。まず、すべての人を満足させることはできません。そして、競争力を維持するためには、お金を稼ぐ必要があります。ビジネス上の意思決定の中には、特定のステークホルダーの利益と対立するものもあるかもしれません。

ステークホルダーに対して、彼らの利益を守りながら、収益を上げるような行動を説明することは、経済、環境、社会への貢献を世に示す強力なツールとなります。そこで、財務報告基準やGRIのサステナビリティ報告基準の出番となるわけです。

ブラックロックの「ミッシング・リンク」

ラリー・フィンクが「効果的なステークホルダーキャピタリズムを通じて、資本は効率的に配分され、企業は持続的な収益性を達成し、価値は長期的に創造、維持される」と述べているのはもっともなことです。しかし彼の評価は、投資家への財務的に重要な情報の提供を伴わないサステナビリティ報告を支持するものではありません。

ブラックロックはTCFDに基づく報告を推奨しているが、気候変動という単一の課題を対象としており、投資家と報告企業が受けるサステナビリティ課題の財務的影響にのみ焦点を当てたものです。TCFDの開示が適切であるとしても、それはステークホルダーキャピタリズムの真の定義を反映したものではありません。

良いニュースは、マルチステークホルダーを対象とした、環境、社会経済、ガバナンスの課題へのビジネスの影響を考慮した基準である、GRIスタンダードがあることです。GRIスタンダードは、世界の大手企業250社の73%を含む、1万社以上の企業によって自主的に利用されており、世界で最も広く採用されているサステナビリティ報告基準となっています。2020年に世界経済フォーラムが共通のESG指標に関して「ステークホルダーキャピタリズムの進捗を測定:持続可能な価値創造のための共通の指標と一貫した報告を目指して」という報告書を発表した際、21の指標のうち17の指標がGRIの開示に基づいていたことは、驚くにはあたりません。

世界の経済、人々、環境のニーズは、気候の指標や投資家の関心だけにとどまりません。2021年にダウンロードされたGRIスタンダードのトップ10のトピックは、そのことを明確に反映しています。


※GRIの図版をもとにYUIDEAで和文版を作成

この数字は、サステナビリティへの関心が高まっていることの証明です。また、世界中の企業が同じように環境問題から影響を受けているわけではなく、社会問題やガバナンスの面で比較的高いプレッシャーにさらされている企業も多くあるのです。気候変動が企業に与える財務的な影響だけに注目することは、ステークホルダーキャピタリズムが取り払おうとする短期志向に他なりません。

GRI:ステークホルダーキャピタリズムを実行に移す

世界が化石燃料から再生可能エネルギーへの転換を目指す中、雇用の創出や革新的な技術の開発・普及において企業が不可欠な役割を果たしていることを考慮すると、利益を生み出すという目的は否定されるべきではないでしょう。

しかし、企業は持続可能な開発目標(SDGs)を含む、持続可能性に与える影響に沿った目標を設定することも必要です。包括的なサステナビリティ報告と財務報告を適用することは、企業や資産運用会社、アセットオーナー、格付け機関が、利益追求の使命と環境および社会に対する責任の両方を反映したアプローチを求める声に、適切に応えられることを意味します。

ラリー・フィンク氏は、「資本は権利ではない。特権である。」と述べています。それならば、環境と社会経済的な結束に与える影響について完全に透明である企業を報いようではありませんか。GRIが財務報告とサステナビリティ報告の二本柱に基づく、包括的な企業報告システムの構築を強く支持するのは、このためです。

サステナビリティ課題が価値創造に与える影響を組み込んだ企業報告のない、投資家のための株主資本主義は、ほとんど意味がありません。しかし、社会のためのサステナビリティ報告書を伴わないステークホルダーキャピタリズムもまた、意味をなしません。

GRIがお手伝いできること

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GRIは、すべての組織が無償かつ公共財であるGRIスタンダードを利用することを推奨しています。しかし、サステナビリティの報告は容易ではないことを踏まえ、報告組織が質の高い有意義な報告書を作成できるよう、さまざまな製品とサービスを提供しています。GRIコミュニティは、共有と学習のためのピアツーピア・プラットフォームを構築しています。また、GRIアカデミーを通じて、サステナビリティ報告に関する専門性の向上を促進するためのトレーニングカリキュラムを提供しています。

GRIからのお願い

GRIスタンダードは無料で使用できますが、決して安いものではありません。基準の作成と維持は、時間と資源を要する活動です。国際的な非営利団体であり、世界水準のサステナビリティ報告基準を開発・維持することによって、マルチステークホルダーの利益を反映させています。GRIが今後も良い仕事を続け、企業の持続可能性報告書の最先端を走り続けるためには、皆様のご支援が必要です。

GRIが世界で唯一の独立したグローバルなサステナビリティ報告の基準設定機関であることに賛同していただける方は、条件やその他のサービスに関するご相談を承りますので、お気軽にお問い合わせください。

2022/2/7 Global Reporting Initiative (GRI) 【原文はこちら

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The GRI Perspectiveとは
The GRI Perspectiveは、GRIが2022年1月にスタートした、サステナビリティ報告の世界で話題のテーマを掘り下げる定期連載シリーズです。日本企業でサステナビリティに従事する多くの方に同シリーズを読んでいただくため、YUIDEAはGRIから独自に翻訳許可を得て、CSRコミュニケートに掲載しております。

Global Reporting Initiative公式サイト

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