The GRI Perspective:ESG基準とフレームワーク、その他評価機関など
※本記事は、GRIから許可を得て、翻訳・掲載しております。 Copyright: Global Reporting Initiative (GRI). This content was created by GRI and has been republished with permission from GRI.
最近のフィナンシャル・タイムズの記事で、ESG投資の分野は「グリーンウォッシングが蔓延している」と言及されています。最も重要なことは、こうした懸念は制度やシステム全体に対する信頼を低下させるだけでなく、私たちが解決しようとしている社会経済的課題および環境問題に対して脅威をもたらすことです。生物多様性の喪失から気候変動、健康危機から不平等まで、サステナブルな社会の実現に向けた行動は、常に最終的な目標を念頭に置いて始めなければなりません。
企業のサステナビリティ・パフォーマンスを評価する方法が無数にあるため、責任あるビジネスは精査される対象になっています。「グリーンウォッシング」を乗り越えたいという思いが、「サステナビリティ基準を求める動きを加速させた」と、ファイナンシャル・タイムズは述べています。しかし、基準やフレームワーク、ランキング、格付けの違いや、そのアプローチや目的の違いについて、多くの誤った情報が存在しています。
用語の整理
サステナビリティを取り巻く環境は、大きく分けて、基準を発行する組織と、フレームワークや原則を発行する組織の二つに分類することができます。もちろん、両方を行う組織もあるため、完全に分類できるわけではありません。
ランク付け&格付け機関
基準とフレームワークはどちらも、法律での義務化や、同業者や投資家による使用への圧力を経て、多くのステークホルダーに支持されることが、権威の源泉となっています。
他にも、組織の成熟度やESGの実務能力があるかどうかを「点数」で表す格付け機関やESG関連のランキングを付ける団体があります。企業のESG評価は、定量的スコアとリスクカテゴリーで構成されています。報告基準やフレームワークに基づいて開示される情報は、格付け機関やランク付け機関にとって重要なインプットとなります。しかしながら、実際の格付けが何で構成されているかはしばしばブラックボックスとなっています。それでもなお、特に資金調達に関するランキングや格付けの重要性は高まっています。このテーマについては、今後の GRI Perspectiveでより詳細に取り上げていく予定です。
デュープロセスの適用
デロイトのグローバル企業報告リーダーであるVeronica Poole氏は、「基準を効果的なものにするためには、関連する規則への遵守の徹底、監視、ガバナンスと管理、保証、および訓練とともに、世界中で規則に組み込まれる必要がある。」と述べています。まさに、関連する規則への遵守を徹底する能力こそが、基準の特徴です。
フレームワークと比較すると、基準はより厳格で徹底しています。GRIスタンダードは、基準を開発するための要件を提供する、正式に決められた「デュープロセス・プロトコル」に従って開発されます。基準を開発するための要件は、監視委員会によって監視されます。このプロトコルにより、GRIスタンダードは透明性のあるマルチステークホルダー・プロセスに従って開発されていると保証されています。世界中の企業、市民社会、労働者、投資機関、学者、会計士などの専門家が従事し、それぞれの多様な背景や専門知識を生かした合意形成のアプローチを通じて、基準を策定しています。GRIのグローバル・サステナビリティ基準審議会(GSSB) は、定期的にパブリックコメントを募集する期間を設け、基準のドラフトに対するステークホルダーの意見を収集しています。
GRIのデュープロセスの優れた点は、マルチステークホルダー・アプローチにより、サステナビリティのトピックに関する適切な報告とはどのようなものかについて、ステークホルダー間で幅広い合意形成が得られている点です。
サステナビリティ報告基準の動向
サステナビリティのトピックを扱うフレームワークは数多く存在しますが、現在、グローバル規模ではGRIとSASBという二つの報告基準しかありません(それぞれ異なる利用者と範囲を持つ)。しかし、サステナビリティ報告の世界も変わりつつあります。現在、サステナビリティ報告を取り巻く状況では、二つの注目すべき動きが起こっています。
- EUが作成中の欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)は、マルチステークホルダー(投資家を含む)向けのダブルマテリアリティに基づくものです。GRIと欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)が、その共同制作作業を主導しています。
- IFRS財団(新設されたISSBが担当)は、サステナビリティ関連財務情報の開示基準を起草中で、投資家のみを対象とした財務マテリアリティに基づく基準になる予定です。
GRIは、IFRSとEUのアプローチは、競合するものではなく、補完するものであると考えています。異なる基準は、異なる読み手のために異なる目的を持っています。投資家への情報提供のみを目的とした基準は、より広範なステークホルダーに情報を提供するインパクト基準とは、異なる概念に基づいて構築されています。GRIスタンダードは、マルチステークホルダー向けのインパクト報告に特化した唯一のグローバルスタンダードであり、ダブルマテリアリティに基づく報告環境を形成する上で不可欠な要素となっています。
そのため、GRIは、EFRAGおよびISSBと協力して、この包括的なグローバルなサステナビリティ報告基準を構築する上で重要な役割を担っています。そうすることで初めて、財務基準とサステナビリティ基準の二本柱構造を構築することができ、一般情報開示とそれぞれの柱が対等に存在することになるのです。投資家だけでなく、その他のステークホルダーの情報ニーズをカバーすることで、企業のサステナビリティ行動に対する信頼と信用を高めることができます。GRIは、EFRAG、ISSB、政府間組織と協力し、二本柱の報告環境におけるサステナビリティ情報開示を推進します。
信頼性は、説明責任によって生まれます。そして説明責任は、透明性を通じてのみ提供されます。明確な報告義務のないフレームワークでは、この目的を果たすことはできませんが、広く利用されている真にグローバルな企業報告基準に基づく関連情報の公開は、財務マテリアリティとインパクトマテリアリティの両方の観点を支持するため、この目的を達成することができるでしょう。
GRIがお手伝いできること
GRIは、すべての組織が無償かつ公共財であるGRIスタンダードを利用することを推奨しています。しかし、サステナビリティの報告は容易ではないことを踏まえ、報告組織が質の高い有意義な報告書を作成できるよう、さまざまな製品とサービスを提供しています。GRIコミュニティは、共有と学習のためのピアツーピア・プラットフォームを構築しています。また、GRIアカデミーを通じて、サステナビリティ報告に関する専門性の向上を促進するためのトレーニングカリキュラムを提供しています。
GRIからのお願い
GRIスタンダードは無料で使用できますが、決して安いものではありません。基準の作成と維持は、時間と資源を要する活動です。国際的な非営利団体であり、世界水準のサステナビリティ報告基準を開発・維持することによって、マルチステークホルダーの利益を反映させています。GRIが今後も良い仕事を続け、企業の持続可能性報告書の最先端を走り続けるためには、皆様のご支援が必要です。
GRIが世界で唯一の独立したグローバルなサステナビリティ報告の基準設定機関であることに賛同していただける方は、条件やその他のサービスに関するご相談を承りますので、お気軽にお問い合わせください。
2022/3/10 Global Reporting Initiative (GRI) 【原文はこちら】
The GRI Perspectiveとは
The GRI Perspectiveは、GRIが2022年1月にスタートした、サステナビリティ報告の世界で話題のテーマを掘り下げる定期連載シリーズです。日本企業でサステナビリティに従事する多くの方に同シリーズを読んでいただくため、YUIDEAはGRIから独自に翻訳許可を得て、CSRコミュニケートに掲載しております。
Global Reporting Initiative公式サイト
「CSR革新室」とは?
- 「CSR革新室」とは、CSRコミュニケートを運営する株式会社YUIDEA(ユイディア)内にある1つの部署です。よりよい社会づくりに貢献すべく、企業のCSR活動、CSRコミュニケーションの革新を支援しています。
CSR革新室 ESG GRI IFRS SASB The GRI Perspective グリーンウォッシュ サステナビリティ報告 マテリアリティ
- アワード・ランキング紹介 [CSRレポートトレンド]
- ガイドライン解説 [CSRレポートトレンド]
- 調査用サイト紹介 [CSRレポートベンチマーク]
- アラベスク:危機の中の企業の持続可能性① [Global CSR Topics]
- CSR調査データ [CSRレポートトレンド]
- CO2
- CSR
- CSRレポート
- CSR革新室
- ESG
- EU
- GRI
- IIRC
- SDGs
- YUIDEAセミナー
- アメリカ
- カーボンニュートラル
- サステナビリティ
- サステナビリティレポート
- サプライチェーン
- サーキュラーエコノミー
- セミナー開催
- ダイバーシティ
- プラスチック
- プレスリリース
- マテリアリティ
- リサイクル
- 中国
- 人権
- 再生可能エネルギー
- 取材記事
- 太陽光発電
- 情報開示
- 投資家
- 新型コロナウイルス
- 日本
- 東日本大震災
- 株式会社YUIDEA(旧:株式会社シータス&ゼネラルプレス)
- 気候変動
- 海外CSR
- 温室効果ガス
- 環境省
- 生物多様性
- 社会貢献活動
- 経済産業省
- 統合報告
- 統合報告書
- 統合版
- 自然エネルギー
- 電気自動車