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自然資本TNFDドラフト0.2公開。変更点と企業の開示事例

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2022年6月、自然関連財務情報開示フレームワーク(TNFD)のドラフト0.2版が公表されました。最終版の公表は2023年を予定していますが、すでにTNFDを活用した開示を行っている企業もあります。今回は、v0.1から追加された項目と、開示事例についてご紹介します。

TNFDについてはこちら
「TNFD」とは何ですか?





V0.1からの変更点

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2022年3月に公表された0.1版からの大きな変更はなく、LEAP-FI(金融セクター)アプローチのアップデートと下記2点の追加がありました。

1.指標と目標へのアプローチ

(TNFD’s draft approach to metrics and targets)

自然関連の依存関係や影響は非常に複雑ですが、市場参加者は意思決定のための明確でシンプルかつ比較可能な情報を求めています。
この両者のバランスを取ることを目的として、v0.2版では「評価指標(Assessment Metrics)」と「情報開示指標(Disclosure Metrics)」を区別したアプローチが提案されました。

評価指標 TNFDが推奨するLEAPアプローチなど、自然関連のリスクおよび機会をマネジメントするための内部評価プロセス内で使用される指標。 これらの評価指標は、内部の意思決定に情報を提供するもので、情報開示指標で指定されていない限り、開示する必要はありません。(4本柱の「指標と目標」には含まれません)
開示指標 TNFDの開示勧告に沿って市場参加者に開示する必要のある指標(4本柱の「指標と目標」)。すべてではありませんが、一部の評価指標は開示指標でもあります。開示指標はv0.2では詳しく説明されておらず、次回以降に議論と市場フィードバックのためにリリースされる予定となっています。

v0.2では以下のような評価指標の例が示されています。さらに、今後特定のセクター向けの追加指標も開発予定となっています。


(一部抜粋)

また、LEAPアプローチのうち評価(Evaluation)フェーズの「依存関係と影響の指標」に関して、「依存関係と影響の指標に関するガイダンス草案」(Draft guidance for dependency and impact metrics)が追加されました。


2.特定のガイダンスに対するTNFDのアプローチ

(TNFD’s approach to specific guidance)

v0.1へのフィードバック等を通じて、多くの市場参加者が「自然関連のリスクと機会の評価という概念はなじみのないものである」としており、セクター固有のガイダンスだけでなく領域(Realm)や課題(Issue)に関する追加的ガイダンスの必要性が認識されました。 そこで、今後以下のようなガイダンスの開発に取り組むことになっています。


策定予定のガイダンス

セクター 組織がビジネスを行うセクターに合わせた推奨事項/ガイダンス。
自然関連の課題 特定の組織およびセクター全体に関連する、特定の自然関連の問題(依存関係、影響、リスク、および機会)に合わせた推奨事項/ガイダンス。
領域 TNFDによって定義された自然領域(海、淡水、土地、大気)にリンクされた特定のガイダンス/推奨事項。

非金融業界のセクター分類は、SASBが開発したSustainable Industry Classification System®(SICS)を採用しており、その中からTNFDでは下記セクターを優先することを提案しています。

セクター 産業
食品・飲料 ・食肉、鶏肉、乳製品 ・農産物 ・アルコール飲料 ・ノンアルコール飲料 ・加工食品
再生可能資源と代替エネルギー ・林業経営 ・パルプ・紙製品 ・バイオ燃料
インフラストラクチャー ・エンジニアリング ・建設サービス ・水道事業者 ・水道サービス事業 ・電気事業 ・発電事業
採掘・鉱物加工 ・建設資材 ・金属・鉱業 ・石油・ガス-探査と生産
ヘルスケア ・バイオテクノロジー ・医薬品
資源の変換 ・化学品
消費財 ・アパレル、アクセサリー及びフットウエア
運輸 ・クルーズライン ・海運

今後の予定

2023年9月の正式版公表に向けて、2022年10月にv0.3 、2023年2月にv0.4が公表される予定となっています。セクター別ガイダンス等も合わせて作成予定です。 さらに、2023年6月までにパイロットテストが実施され、より実用的なガイダンスになることが期待されています。

開示事例

キリンでは「環境報告書2022」に、「LEAPアプローチ」を活用した情報を開示しています。キリンは2013年から「生物資源」「水資源」「容器包装」「気候変動」の4つの環境課題を、独立したものではなく「相互に関連する環境課題」と認識しており、これはTNFDが示した統合的(ホリスティック)アプローチと共通するものです。
生物資源や水資源などの自然資本は地域や場所によってその特性が異なるためにローカルな視点が必要です。環境報告書2022ではTNFDで示されている「LEAPアプローチ」について、「Locate(場所)」「Evaluate(依存関係と影響)」「Access(リスクと機会の評価)」「Prepare(報告)」の4項目について、3つの地域の状況を開示しています。


【参考リンク】
キリンホールディングスプレスリリース(2022年7月6日)
キリンホールディングス 環境報告書

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