EUタクソノミーに社会版が登場――EU「ソーシャルタクソノミー」とは
EUでは「タクソノミー規則」が法令化されており、企業の事業活動が持続可能な経済活動であるかどうかを一定の基準に照らし合わせて判別する仕組みがあります。 2020年7月の導入当初は環境面のみの基準が設定されていましたが、2022年2月に欧州委員会の有識者組織である「Platform on Sustainable Finance」が「Final Report on Social Taxonomy」という報告書を公表し、社会面の基準が提案されました。従来の環境的タクソノミーに加えて、社会面でも適切な投資が行えるよう、選別・分類方法を示すことを目的としたものです。
「(環境的)EUタクソノミー」についてはこちら
ソーシャルタクソノミーの基本構造
ESGに関連する投資が増えていく中で、社会的に良いことをしていると見せかけているだけの「ソーシャルウォッシュ」が存在するという課題がありました。真に貢献度の高い企業や事業を選別・分類することで、適切な投資を行うことがEUタクソノミーの目的です。
基本的な構造は環境的タクソノミーと共通です。環境的タクソノミーでは6つの環境目標が設定されており、そのうち1つ以上で実質的な貢献を確認した上で、DNSH基準およびミニマムセーフガード基準によって、ネガティブな影響をもつ企業を排除する仕組みです。
社会目標の明確化
ソーシャルタクソノミーにおける社会的目標は3つ設定されています。最終報告書では、下記の目標に貢献する活動を「社会的に持続可能な経済活動」と位置付けました。
①(バリューチェーンを含む)ディーセントワーク
Decent work (including value-chain workers)
②エンドユーザーの適切な生活水準と福祉
Adequate living standards and wellbeing for end-users
③包括的で持続可能なコミュニティと社会
Inclusive and sustainable communities and societies
環境タクソノミーでは、科学的定量基準に基づいて目標が策定されましたが、ソーシャルタクソノミーでは、13の国際規範・原則に基づいて策定されました。SDGsや国連「ビジネスと人権に関する基本原則」、OECD「多国籍企業行動指針」などが使用されています。
それぞれの目標には、より具体的なサブ目標(sub-objectives)も示されています。
例えば「ディーセントワーク」であれば
- ディーセントワークの促進(Promoting decent work)
- 職場での平等と非差別の促進(Promoting equality and non-discrimination at work)
- 上記のサブ目標を含む、リスクベースのデューデリジェンスを実施することにより、バリューチェーンにおいて影響を受ける労働者の人権と権利の尊重を確保する(Ensuring respect for the human rights and workers’ rights of affected workers in the value chain by carrying out risk-based due diligence including on the sub-objective areas listed above.)
といったサブ目標が示され、それぞれに説明が付されています。
貢献の判断基準や排除基準
社会目標に貢献する活動の分類方法として、以下のタイプを提案しています。
- 悪影響を回避し対処する活動
- 商品およびサービス、基本的な経済インフラによる固有のプラスの影響を強化する活動
- 他の分野で大幅なリスク削減を可能にする活動
また、環境タクソノミーと同様に、目標に貢献する活動であっても、他のところで害を及ぼすような活動であれば、それは持続可能ではないとして排除されるというDNSH基準も含まれる予定です(DNSHはDo No Significant Harmの略)。このほか、基本的人権など最低限の取り組みがあるかどうかをミニマムセーフガード基準で評価することが提案されています。
今後のステップ
ソーシャルタクソノミー開発のために、以下の5つのネクストステップが示されています。
- スコーピングノートに従ってミニマムセーフガード基準を明確にする
- アプリケーションとデザインのさまざまなオプションを考慮して、社会的分類法の影響に関する研究を実施する
- 目的とサブ目的に優先順位を付ける根拠を考え出す
- 論理的根拠に従って目的に優先順位を付ける
- 最初の目標とセクターの実質的な貢献と DNSH の基準を定義する
2022年7月には、今後のステップの1番目に関連した「ミニマムセーフガードの案」(Draft Report on Minimum Safeguards)が公表されました。今後もソーシャルタクソノミーの制度化に向けて進んでいく予定となっています。
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