人材戦略のファーストステップ「CHRO設置」とは
経済産業省は2022年5月、「人材版伊藤レポート2.0」を発行しました。初版の「人材版伊藤レポート(2020年9月発行)」以降、国内でも人的資本経営に注目が集まっているものの、いざ実践していくためには人的資本経営への変革が必要です。「人材版伊藤レポート2.0」は日本企業向けの手引きとして作られており、中でも「CHROの設置」が変革の第一歩として強調されています。
経営戦略と人材戦略を連動させるために
企業や個人を取り巻く環境が大きく変化しており、働き方を含めた人材戦略の在り方を考え直すべき時に来ています。国際的な情報開示の枠組みでも、人的資本の視点を盛り込もうとするプロジェクトが進行中です。
「人材版伊藤レポート2.0」によると、人的資本経営のためには「経営戦略と人材戦略の実践」と「情報を可視化して投資家に伝えていくこと」の両輪が必要です。前者を実践する手段として、「CHROの設置」および「全社的経営課題の抽出」が挙げられています。経営トップとCHROを中心に、対話を深め、課題を抽出することが経営戦略と人材戦略の連動につながるのです。
CHROは、Chief Human Resource Officer(最高人事責任者)の略称です。CHROは単に人事部門のトップというだけでなく、経営陣の一員として人材戦略の策定と実行を担う責任者を指します。また、社員・投資家を含むステークホルダーとの対話を主導する人材でもあります。
「人材版伊藤レポート2.0」では、経営陣・取締役会・投資家それぞれの役割を整理しています。中でも経営陣には、企業理念や存在意義(パーパス)、経営戦略を明確化した上で、経営戦略と連動した人材戦略を策定・実行することを求めています。
そのためには、経営戦略とのつながりを意識しながら、重要な人材面の課題について具体的なアクションやKPIを考えることが必要です。CHROには、人材戦略を自ら起案し、CEO・CFOなどの経営陣、取締役と定期的に議論する役割があります。CHROに経営者目線がないことには経営戦略に連動した人材戦略を策定することができません。
CHROを含むCxO※は各部門のまとめ役ではなく、部門間に横串を通す役割が期待されます(CHROは調整型の人事部長とは異なる点に注意が必要です)。そのためには、CxO同士の密な連携が求められます。
※Chief x Officerの略で、xの部分に部門の頭文字が入る。日本語では「最高〇〇責任者」
取組み事例
経済産業省は「人材版伊藤レポート2.0」の補足資料として、実践事例集を作成しています。
アステラス製薬は、社外から新たにGlobal head of HRを招聘しました。人事部門の役割を進化させ、事業部門のリーダー・マネージャーの質を高めるサポートを人事部門が行うことを目指しています。
加えて、HRデータの高度な分析・経営への提示により、経営層や事業部門とともに戦略を実現する人事を標榜しています。
KDDIでは、本社の営業部門で約20年の業務経験を持つ人材を人事部門トップに登用しました。人事部門が経営層・事業部門と定期的にミーティングを実施することで、経営戦略を踏まえた人事施策の実施や、経営層・事業部門への人事戦略の浸透を可能にしています。
まとめ
企業によって直面する課題や事業形態はさまざまであり、各社が主体的に実践方法を考えていく必要があります。ただし、最も重要なのは、「経営戦略と人材戦略を連動させる取り組み」です。どこから手を付けるべきかわからない企業にとっては、CHROを設置することが足掛かりとなります。また、情報開示の面では、国内でも別途検討が進んでおり、2022年8月に内閣官房が「人的資本可視化指針」を公表しています。
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