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CDP2023が開始、プラ関連の新設問も

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CDP(気候変動)の対象は2022年からプライム市場上場全1841社に拡大しましたが、回答率は57%にとどまりました。CDPは未回答の場合、その旨も開示されてしまうので、2022年で間に合わなかった企業にも2023年からの開示が期待されます。本稿では、CDP2023のスケジュールや新規の質問などご紹介します。今年は「プラスチック」関連の質問が「水セキュリティ」のパートへ追加されるなどの変更がありました。

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スケジュール

CDPはオンラインで回答を入力する必要があります。2023年の回答期間は、4月17日~7月26日の予定です。

1月 2023年度のアンケートとガイダンス資料公開
4月17日 オンライン レスポンス システム (ORS)が公開、回答が可能に
7月26日 回答締め切り
9月27日 オンライン レスポンス システム (ORS)が閉鎖、2023年の開示サイクル終了

https://www.cdp.net/en/companies-discloser/how-to-disclose-as-a-company


2023に新たに追加された質問

気候変動

気候変動には下記7項目の新規設問があります

  • C3.5b – 報告年度の、サステナブルファイナンス・タクソノミーと整合した活動による支出/売上の割合
  • C3.5c – タクソノミーへの整合に関連する追加的な文脈および/または検証/保証の情報
  • C7.7 – CDP回答に含まれる子会社の排出量の内訳
  • C7.7a – スコープ1およびスコープ2の総排出量の子会社別の内訳
  • C10.1 – 報告した排出量に対する検証/保証の状況
  • C15.4 – 報告年度の、生物多様性への影響が大きい地域またはその周辺での活動の有無
  • C15.4a – 生物多様性への影響が大きい地域またはその周辺での、報告対象における活動

ここでは「C3.5b – 報告年度の、サステナブルファイナンス・タクソノミーに整合した活動による支出/売上の割合」について少し具体的にご紹介します。

質問の意図

この質問では、企業は、サステナブル ファイナンスの分類法によって持続可能と定義された活動に向けられた/そこから派生した支出と収益の程度が問われています。
サステナブルファイナンス・タクソノミーとは、「ある金融資産がサステナビリティに関する目標の達成に資するかどうか、またどの程度資するかを評価するための基礎となる一連の基準」
と定義されおり、分類方法が示されています。
どの程度財務的に「気候変動対応」やサステナブルファイナンス・タクソノミーに整合しているのかを回答することになります。

具体的な設問の例(一部抜粋)

情報が報告される分類法(タクソノミーの酒類) 報告年における、この活動からのタクソノミーに沿った売上高 報告年における、総売上高に占めるこの活動からのタクソノミーに沿った売上高の割合
以下から選択
□植林
□化学品製造
□建物の建築
など
※100以上の経済活動がリストアップ
以下から選択:
□持続可能な活動のための EU タクソノミー
□その他、具体的にご記入ください

(YUIDEAによる仮訳)


水セキュリティ

水セキュリティには下記3項目の新規設問があります

  • W1.4 貴社の製品に、規制当局により有害物質として分類された物質が含まれているか、その製品の売上高は総売上高の何%程度か
  • W8.1 水質汚染取水量、水衛生、その他の水関連カテゴリに関する目標
  • W10 プラスチック

ここでは、「W10プラスチック」について少し具体的にご紹介します。

水セキュリティにプラスチックが含まれる理由

  • 水の汚染:環境からプラスチックを排除することは、海と淡水の生態系の健全性を回復するために 不可欠です。
  • 業種的な類似:CDPウォーターセキュリティの質問書で開示が求められている業種と、プラスチックを生産・使用する活動を伴う可能性が高いセクターの間には、相関性があります。

企業への主な期待

  • バリューチェーン全体で、収益におけるプラスチックの役割を関連付けすること
  • リスクを把握し、管理すること
  • 期限付きで測定可能な目標を設定し、それに向けて行動を起こすこと

具体的な質問内容

  • W10プラスチックの設問は下記のような項目で構成されています。

W10.1 プラスチックの関連付け
W10.2 潜在的な影響
W10.3 事業に対するリスク
W10.4 目標
W10.5 活動内容
W10.6 プラスチックポリマーの生産に関する指標
W10.7 耐久財・部品に関する指標
W10.8 プラスチック包装材に関する指標

フォレスト

フォレストには、下記5項目の新規設問があります

  • F0.5 開示している事業に対する森林関連影響の報告境界
  • F0.6 操業する国や地域
  • F1.5b 貴社のサプライチェーンの段階に関連するDCF量および非DCF量の内訳
  • F2.3 調達地域その他の生態系における森林減少や自然生態系の転換リスクを判断するために、使用している分類システム
  • F6.10c 開示するコモディティごとの、事業活動を行う各管轄区域/ランドスケープからの生産量/消費量の詳細

ここでは「F1.5b 貴社のサプライチェーンの段階に関連するDCF量および非DCF量の内訳」について少し具体的にご紹介します。

質問の意図

この質問では、調達段階でどの程度森林や生態系に配慮しているかが問われます。 DCFとは、「Deforestation/Conversion Free」の略で、 「森林減少や自然生態系の転換を伴わない方法」と定義されています。 品目は、木材・パームオイル・大豆・ゴム・コーヒーなどが特定されており、品目ごとに森林や生態系に影響を及ぼさない方法で調達した割合の記載が求められます。

具体的な設問の例(一部抜粋)

森林伐採/転用のリスクがない、またはごくわずかな地域からのDCF生産/消費量の割合 モニタリングされているDCF生産・消費量の割合 原産地不明の非DCF生産量/消費量
DCFの木材
非DCFの木材
DCFの大豆
非DCFの大豆

(YUIDEAによる仮訳)


最後に

CDPが調査対象とする企業は、気候変動・水・フォレストといったテーマごとに異なります。 そのため、気候変動しか対象となっていない場合などがありますが、水セキュリティやフォレストといったほかのテーマの質問をチェックすることで、今投資家がどんなテーマに関心があって今後どんな開示が求められていくのか、概要をつかむことができます。2023年では特に「水セキュリティ」の「プラスチック」モジュールの追加が大きな変更でした。

まずはCDPにログインして、自社にはどんな質問が寄せられているのか、対象でないテーマでも自社の業種にはどのような質問が、同業他社や参考にしている企業がどのような回答をしたのかを確認してみてはいかがでしょうか。

【参考】

「CSR革新室」とは?

YUIDEA
「CSR革新室」とは、CSRコミュニケートを運営する株式会社YUIDEA(ユイディア)内にある1つの部署です。よりよい社会づくりに貢献すべく、企業のCSR活動、CSRコミュニケーションの革新を支援しています。

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