TNFDの最終ドラフト、具体的な開示指標案も提示される
自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)は2023年3月、情報開示フレームワークの最終ドラフトであるv0.4を公表しました。これまでの3つのドラフトでは、主に開示企業が自然への依存関係と影響、自然関連のリスクと機会を理解することに焦点が置かれてきました。今回のv0.4において開示提言やLEAPアプローチの調整に加えて開示指標案が提示されたことで、社内での情報整理にとどまらない対外的な情報開示に向けた準備の土台ができつつあります。
1. 開示提言とLEAPアプローチは最終化へ
開示提言に関しては、4つの柱(ガバナンス、戦略、リスクと影響の管理、指標と目標)について開示する際に検討すべき一般的な要求事項が更新されました。(①⑤⑥が追加項目)
① マテリアリティへのアプローチ
② 開示の対象と範囲
③ 自然への依存関係と影響の評価に基づく、リスクと機会の特定
④ 評価において欠かせない、自然との接点の検討
⑤ 他のサステナビリティ課題との統合(整合性や貢献、トレードオフについても考慮する)
⑥ ステークホルダー・エンゲージメント
またLEAPアプローチでは、企業向けのLEAPアプローチを実践する前段階でどこに焦点をあてて分析すべきかを明確にする必要性を強調するため、評価のスコーピング質問がより詳細になりました。
2. 初公開となる開示指標案
TNFDv0.2(2022年6月公開)の段階で、社内での意思決定に使用するための「評価指標」と社外へ説明するための「開示指標」の2種類の指標が提案されていました。今回初めて開示指標案の中身が示されました。
開示指標にはコア開示指標とそれらを補完する追加開示指標の2種類で構成されます。コア開示指標はさらに全セクターに適用されるグローバルコア開示指標と、セクターごとに適用されるセクターコア開示指標に分かれます。
今回、自然への依存関係と影響に関して10個、リスクと機会に関して5個のグローバルコア開示指標の案が示されました。同開示指標は特に開示を強く推奨され、コンプライオアエクスプレインの原則が採用されており、企業は開示しない場合その理由を説明することを求められます。
3. TCFDのスコープ1、2、3を自然の文脈に適応
TNFDではこれまで、TCFDにおけるスコープ1、2、3をどのように自然の文脈に反映させるべきか、議論が進められてきました。今回、スコープ1を直接の事業、スコープ3をバリューチェーンの上流、下流、資金提供活動(金融機関向け)に適応させることが示されました。
4. シナリオ分析のガイダンス
TCFDにおけるシナリオ分析の知見や2023年3月に提示されたシナリオ分析の方法へのフィードバックを受け、今回シナリオ分析に関するガイダンス(Annex4.10)が公表されました。
さまざまなタイプの組織が柔軟にシナリオ分析を実施できるよう、一般的なガイダンスに加え、シナリオ分析のためのツールやワークシートのテンプレートが提示されています。
5. 企業が今からできる準備とは?
今回のv0.4によって、開示提言とLEAPアプローチがおおよそ固まりました。また、TCFDにおけるスコープが自然の文脈に適応され、開示指標案やシナリオ分析のガイダンスも提示されたことで、企業はより明確に自然への依存関係と影響、自然関連のリスクと機会を分析し、具体的な開示のイメージをするための土台が整ったといえるでしょう。これにより、自然資本関連の情報開示がアップデートされていくことが予想されます。
TNFDの最終版が公開されるのは9月ですが、対応にはLEAPアプローチをはじめとした準備が必要です。TNFDがこれまでに公表したドラフトや追加資料を参考に、どのような情報の開示が求められているかを把握したうえで、自社の自然への依存関係と影響、自然関連のリスクと機会を今のうちから検討することが推奨されます。YUIDEAでは、TNFDを含む開示および活動の支援を行っています。対応準備でお悩みの企業担当者さまはぜひ問い合わせフォームからご相談ください。
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