【CLOSE UP】全量買取制度案巡って際立つ温度差
経済産業省が中心となって制度設計を進める自然エネルギーの全量買取制度(FIT、フィードインタリフ)を巡り議論が高まっている。制度案では、太陽光以外の発電電力の一律価格買取、家庭用太陽光発電の余剰電力買取を打ち出しているが、これに環境エネルギー政策研究所(ISEP)が対案を提示。一方で日本経団連は、導入そのものに否定的だ。
ISEPは11月18日、自然エネルギーの全量買取制度に関する要望書を公表した。その中で、太陽光を除く自然エネルギー発電の買取価格のコストベース化、太陽光発電の全量買取、全量買取制度における環境価値の切り離し、の3点を要望している。
そもそも全量買取制度は、政府が閣議決定した地球温暖化対策基本法案やエネルギー基本計画で掲げた、自然エネルギーの導入比率を2020年までに一次エネルギー供給の10%にまで高めるという目標の実現にとって、重要不可欠な施策だ。
経産省の買取制度小委員会では、太陽光以外の自然エネルギー発電を1キロワット時あたり15~20円の一律価格で買い取り、また住宅用太陽光発電については自家消費を上回る余剰電力分を買い取るという内容で検討が進む。
これに対しISEPでは、太陽光以外の自然エネルギー発電に適用する一律価格案に対して「制度設計上問題がある」としてコストベースでの買取を提案する。発電コストは発電施設を設置する地域の実情や規模に応じて変動し、一律価格案では追従できないためだ。ISEPは「そもそも一律価格には根拠がなく、買取価格の見直し時に混乱する恐れがある」と指摘する。
また、太陽光発電の余剰買取についてもISEPは「そもそも政府与党はマニフェストで全量買取を掲げていた」とした上で、「全量買取にすれば住宅用太陽光発電の飛躍的普及が可能。買取に要するコストも短期的には余剰買取案に劣るが、コスト低下が早まり長期的には有利になる」と主張する。
ISEPの様に制度設計に積極的に斬り込む動きがある一方で、制度そのものに否定的なのが日本経団連だ。米倉弘昌会長は17日の内外情勢調査会での講演で、国内排出量取引制度、地球温暖化対策税、そして全量買取制度のいわゆる「3点セット」について「安易な導入に強く反対する」とクギを刺した。導入に伴う費用負担が企業の活力を削ぐ、というのがその主な理由だ。
無論、経団連も温暖化対策を軽視しているわけではない。しかし、全量買取制度への対応を見るにつけ、意欲的に制度設計に向かう意志は感じられず、消極性ばかりが際立つ。(オルタナ編集部=斉藤円華)
(オルタナWeb配信記事 2010年11月19日公開)
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