【CLOSE UP】適切な対策は市民と企業の緊急節電
電力中央研究所はこのほど、日本での今夏の電力不足への対応のため、IEA(国際エネルギー機関)が2005年にまとめた調査報告「緊急節電」(Saving Electricity in a Hurry、以下IEA報告)を紹介するリポート「諸外国における緊急節電の経験」を発表した。自然災害などによって電力不足に直面した各国の対策をまとめたもの。IEA報告では、政府・電力会社などの宣伝活動によって市民と企業へ節電行動をうながすのが対策の中心であるべきと指摘した上で、政府のリーダーシップの重要性を訴えている。
IEA報告では2001年から04年にかけて、米国、ブラジル、欧州、ニュージーランド、カナダ、東京で起こった電力不足を分析し、対応策として節電行動の促進、電力価格の引き上げ、高効率技術の導入の3種類があると分類した。この中で推奨しているのは節電行動の推進で、適切な節電によって停電を回避して経済への悪影響を最小限に食い止めることが必要としている。日本の一部政治家が主張するような自然エネルギーの大量導入策を選択した国はなかった。
緊急節電の結果として、電力ピークの予想需要に比べて、2001年のブラジルは事前準備期間が5カ月あったために20%の削減、03年のカナダ・オンタリオ州では準備期間なしで17%(ただし停電を含む)、01年の米カリフォルニア州では事前準備2週間で14%の削減(停電含む)と、削減に成功した。ただし03年の東京は事前準備期間が8カ月あったにもかかわらず4・5%の削減にとどまった。
価格引き上げによって電力需要が抑制されるとの見方があるが、IEA報告によれば、各国の経験では事務手続きや技術的な問題で時間がかかって節電に間に合わない例が多くあり、「価格引き上げだけに頼ることはできない」としている。また技術導入の効果も短時間では限定的だった。
またIEA報告では家庭、業務、産業、政府の各部門が取るべき対策を紹介。サマータイムの導入では、その節電効果はあまり観察されなかった。そしてマスメディアを通じたキャンペーンで需要家の行動を変えることの重要性を指摘した。具体的な工夫として、「リアルタイムの情報提供」「インターネットからテレビまであらゆるメディアを使った情報提供」を奨励した。また情報の提供では、「愛国心」「カッコよさ」「ユーモア」「参加のインセンティブを高める節電成果の見える化」を強調する工夫が各国であったという。
報告をまとめた木村宰(きむら・おさむ)電中研社会経済研究所主任研究員は、IEA報告では強調されていないが、日本で考えられる対策に言及している。緊急節電を促進するインセンティブとして規制や補助金による誘導があると指摘。電気事業法による電力使用制限、また日本経団連の自主規制に加え、補助金などの活用も必要であると提言した。また省エネルギーセンターなど専門家の活用を行うことも提案している。(オルタナ編集部=石井孝明)4月26日
(オルタナWeb配信記事 2011年4月27日公開)
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