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日本、人身取引の最低基準満たさず コソボとルワンダと同レベル

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会見で話す藤原志帆子さん(写真左)

米国国務省にて今月19日、ヒラリークリントン米国国務長官が人身取引年次報告書2012を発表した。日本は、10年以上連続で人身取引根絶の最低基準を満たさない国(第二階層)に位置づけられた。先進国では最低ランクで、コソボやルーマニア、ルワンダと同じレベルである。

日本が第二階層に位置づけられた理由として、包括的な人身取引対策法がないことや、人身取引被害者用シェルターがないこと、東南アジアへの児童売春ツアーの防止策が十分ではないことらが上げられている。

この報告を受け20日、緊急メディアセミナーが日本外国特派員協会で開催された。主催は、人身取引問題に取り組むNPOポラリスプロジェクトジャパン(東京・渋谷)と移住労働者と連帯する全国ネットワークNGO移住連(東京・文京)。

ポラリスプロジェクトジャパン代表の藤原志帆子さんは「メディアでさえも人身取引問題に対する関心が低い。言葉は知っているが、実態までは知らないのが現状。人身取引根絶に向け、一人ひとりの国民の意識が必須」と話した。

ポラリスプロジェクトジャパンでは、今年5月、日本で初めて一般生活者を対象にした人身取引問題についての緊急意識調査を実施した。調査方法はインターネットを利用し、調査対象は1千人。

結果、人身取引についての認知は9割だが、日本に人身取引被害者が送られていることへの認知は34.9%、日本人が被害に合っていることへの認知は18.7%だった。

藤原さんは、「日本人の認知率の低さには驚いた。ただ、人身取引に関する犯罪(児童ポルノ、強制売春、援助交際、海外への買春ツアー、外国人研修生の強制労働)は深刻な問題として認識されていることは評価できる。現状は、人身取引事件の検挙率は低い。被害者保護体制が欠如しているために、被害者協力を得られないためである」と調査の印象を述べた。

強制労働や性的搾取を目的に人を支配下に置く人身取引は、世界的に最も成長している犯罪産業の一つ。国際労働機関調べでは、2012年6月時点で被害者は1200万人に上る。その8割が女性で半分は子どもである。

2011年、日本政府により買春被害者の女性45人と619人の児童買春被害者が確認されているが、男性被害者は一人も確認されなかった。人身取引年次報告書2012では、「日本には人身取引被害者専用シェルターがなく、人身取引被害者の保護サービスが限られている。日本政府は人身取引防止を訴える努力はしてきたが、効果が足りず、対象となる人びとにその声は届かなかった」と報告されている。

日本で人身取引が発生するきっかけは、街頭スカウトや、恋人と思っていた男性からのあっせんなど様々である。日本に連れられてきて、住んでいる場所も分からずに性風俗店で強制的に働かされるケースもある。被害者が偽装結婚や売春などで逮捕されてしまう事件も発生している。

藤原さんは人身取引根絶に向けて、「周辺の人が人身取引被害に合われているかもしれないと感じたら、まず私たちの団体または警察に電話してほしい。的確な情報があれば対応できる」と話す。(オルタナS副編集長=池田真隆)

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