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リー・ジャパンのジーンズに刻まれたメッセージ

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リー・ジャパンの細川秀和取締役

老舗ジーンズメーカーであるリー・ジャパンでは、全商品の3分の1にあたる約40万本にオーガニックコットンを使用している。しかし、細川秀和取締役は、「販売時には、エシカルとは決して表に出さない。最初に押し付けるのではなく、購入後に気付いて勉強してもらう筋書きを作ることがメーカーの役割」と話す。(聞き手・オルタナS副編集長=池田真隆)

――御社では、オーガニックコットンを使用したジーンズなども販売していますが、エシカルファッションを販売する際に気をつけていることはありますか。

細川:「この商品はエシカルです」と、謡っていないことです。Lee(リー)では、年間120万点の商品を供給し、そのうちの3分の1にあたる40万本弱にオーガニックコットンを使用しています。オーガニックコットン製のジーンズの本数で見れば、日本一の生産数を誇ります。

エシカルと謡わないのは、購入者に買ってから気付いてもらいたいからです。リーのジーンズは、平均で1万円を超えます。10代や20代からしてみたら高額な商品です。なので、額に見合う分だけ、自分を納得させる要因が必要です。

その一つに、オーガニックコットンを100%使用しているなどの「エシカル要素」がありますが、最も強く打ち出すべきではないと考えています。やはり、商品自体への魅力を感じてもらうために、まずは商品自体の「かっこよさ」や「かわいさ」を打ち出すべきです。

最近の若い人なら、自分のお気に入りの服が、実はオーガニックコットンで製造されていたと分かれば、オーガニックコットンのことを勉強しだすのではないでしょうか。今まで、ブログやフェイスブックなどで、そうした若者を何人も見ています。

最初に押し付けることよりも、購入後に気付いて勉強してもらうという筋書きを作ることがメーカーにはできます。そのためには手にとってもらうことが必要です。なので、商品のよさを優先すべきなのです。

――世代別に見ても、若者のエシカル思考は高いです。しかし、ビジネス界では、いまいちの盛り上がりです。

細川:ビジネスでエシカルが盛り上がっていないこととは裏腹に、若者のエシカル商品への需要は高まっています。しかし、どこで買えるのか分からなかったり、どれがエシカルなのか分からないことで、購買機会を潰しています。

私の感覚ですが、若者たちのエシカル商品へのニーズを見ると、需要が供給を超しているのではないかと予測しています。若者を中心に、エシカルを求めるエネルギーは強くなっていると実感しています。

■見た目はワルでも、中身は優しい

――エシカルを盛り上げていくには、どのようなことが必要だとお考えでしょうか。

細川:盛り上げていくには、企業同士の横のつながりを、いかにつくっていけるかだと思います。トレーサビリティを開示することが条件で、連合体となれば、より強くエシカルを発信していけます。これからは各組織ごとにエシカルな情報を多方面に出すのも必要ですが、集合体として発信したり、販売場所を共有したりすることも考えなくてはいけないと思います。

認定NPOのACE(エース)と、「エシカルコットンサミット」を3年前から開催していますが、これも横のつながりをつくるためです。

――エシカルな企業や組織の連合体をつくるうえで懸念点としてあるのは、エシカルの定義です。日本には、まだありません。なので、エシカルとは言ったもの勝ちの状態があり、エシカルプレーヤーの中でも、エシカルに対する姿勢に違いが生まれることがあります。

細川:連合体としては、入り口部分は軽めのエシカルでよいと考えています。定義を厳密にすると、生産コストが掛かると同時に、購買する敷居も高くなります。それよりも、まずは、「かっこいい」や「おしゃれ」だから購入し、後で勉強していく流れを大事にしたいです。そうすることで、好きな服を通して、エシカルとは何かを突き詰められるはずです。ただ安ければ満足という価値観から発展していってほしいですね。

――「かっこいい」や「おしゃれ」を入り口にエシカルを浸透させるのですね。

細川:昨今、オーガニックコットンを謡うときのイメージは優しくて、ふわふわしているものばかりです。この感覚から脱却したいです。見た目は荒く、悪いですが、実は中身はオーガニックコットンやフェアトレードといったように。このギャップが響くと思います。

例えば、手がつけられない一匹狼の不良も、実は裏の優しさがありました。昔のマンガであった様な、不良が喧嘩しあとに一人路地裏に入って、こっそりと捨て犬にミルクをあげる様な・・・。優しさが土台にあって、本当の不良が生まれているものがあります。

ジーンズも同じです。見た目はワルですが、中身は地球に優しくありたいです。

――細川さんがエシカルに関心をもたれたきっかけは何でしょうか。

細川:私が入社したころはケミカルウォッシュの全盛期でした。新人時代、工場へ研修に行ったとき、塩素がすごくきつかったのです。着用していたマスクも日常用のもの程度で、防護服と呼べるものではありませんでした。

目は痛くなり、指の指紋が無くなる程です。本来ジーンズは中古加工にする必要はないのです。一番色の濃い状態から、穿き慣らして、自然と味が出てくるのです。それを無理に加工するので、化学薬品の使用で水質汚染や健康被害の懸念もありました。

現在の日本での生産現場ではその全てが改善されていますが、ジーンズメーカーこそ、環境負荷を考えていかないといけないと思いました。ジーンズなどのファッションには大量生産消費の問題があり、中国などでは児童労働の問題もあります。ジーンズの製造過程や消費の仕方を見ると、けしてエシカルとは言えないと思います。だからこそ、先頭に立たなくてはいけないのです。

ほかのファッションブランドには、ジーンズメーカーでもエシカルなのだから、うちもエシカルになろうと思っていただけたらうれしいですね。

【細川秀和】
大学卒業後、リー・ジャパン株式会社に入社。以後20年以上にわたり国内でのLee製品の企画全般を行う。2007年からはウガンダ産のオーガニックコットン製の製品売上の一部を国際協力NGOであるハンガーフリーワールドを通じて現地での井戸建設を行う「Born in UGANDA Oganic Cotton」プロジェクトを開始。また津波により稲作が困難になった宮城県でコットンの生産を行い復興支援を後押しする「東北コットンプロジェクト」を行っている。

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