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アジアの災害における企業の役割――アジアCSR最前線(2)

国連国際防災戦略(UNISDR)事務局の最近の報告書によれば、またもアジアが災害数と被災者数で世界で最も災害に弱い地域になった。1980年以降、世界の大災害による経済損失を振り返ると、1990年代中盤から経済損失が増大し、その傾向は今も続いている。(CSRアジア会長・リチャード・ウェルフォード、監訳:CSRアジア シニア・プロジェクトマネージャー・高橋佳子)

多くの災害は主に貧しい国々で起こっていて、その経済規模から、経済損失額自体は比較的低いが、それでも、パキスタンの洪水による損失額は同国のGDPの2%近くになり、復興は容易ではない。貧しい国々とって、自然災害は大きな問題になっている。

災害増加が気候変動に関係しているのは確かだ。アジアは台風の動きの真ん中にあり、台風は増え、沿岸部の多くは海面上昇の危険にさらされている。こうした災害によって世界中で民族大移動が起こることが懸念されている。干ばつ、水不足、洪水、嵐に関連した高波や海面上昇によって数億人が環境難民になりかねない。


■増え続ける環境難民

実際、環境難民はすでに推定2,500万人で、降雨傾向が変わり続け、洪水や嵐が頻繁に発生するようになり、高波がバングラデシュや太平洋沿岸諸島のような低地国を襲い始めれば、その数は急増すると推測される。

中国のゴビ砂漠は、年に4千平方マイル拡大していて、周辺3省の住民が家を追われている。太平洋に浮かぶツバルの住民はすでに避難を始めていて、すでに3千人がツバルを離れた。今世紀末までにはさらに数百万人が危険度の高い地域で苦しい生活を強いられることになると考えられる。政治的にも経済的にも倫理的にも、世界の誰もがすぐさま対策を考えるべき時にきている。

これらの課題の重要性を考えれば、一番影響を受けやすい貧困層への対策として、企業が果たせる役割とは何なのか。私は、以下のような方法で気候変動の脅威に立ち向かうことができると考える。

1.気候変動に適応するための戦略を立てる。気候変動がもたらすインフラ損害、事業の中断やサプライチェーンへの脅威に備え、事業や従業員、バリューチェーンに与える影響を予測する。

2.災害予防戦略を立てる。既存のキャパシティ、知識とスキルを活用し、予測出来ない事態に備える方法を検討する。

3.フィランソロピー的な考えから貧困救済に向けた開発戦略に移行し、貧困層に対し災害対策分野で能力強化をする。企業のリソースを活用しコミュニティ投資戦略、社会企業開発、キャパシティ構築を行うことでよい効果がもたらされる。

4.気候変動で最も影響を受けることになる若い世代に呼びかけ未来に備える。持続可能な開発の概念は未来の世代を強調しているが、実際に若い世代を巻き込んでいないことが多い。若い世代の未来のニーズが何かを見極め、必要なスキルを構築することが必要である。

5.環境難民問題を緩和するための戦略をたてる。難民危機が起きる前に政府や国際機関などと協力し、難民が新たな土地や資源、収入源を確保できるような対策を講じる。

6.コミュニティが気候変動の脅威に対応できるよう、企業は臨機応変に必要な技術供与を検討する。特に水資源を守り保全するための技術は欠かせない。

7.予測不可能な災害で貧困層が受ける損失を地域で補填できるよう、資金を提供しマイクロファイナンスとマイクロインシュアランスの取組みを開発する。

8.未来のキャパシティ構築に向けたキャパシティを今構築する。気候変動にどう適応し、どのようなコミュニティ投資が効果的なのかを我々が充分に理解していない。企業には、気候変動対策における様々な研究に助成することを奨励する。

9.気候変動により、世界の貧困層が最も悪影響を受けるという事実を、企業内、従業員、一般市民に伝え、意識を高める。貧困層や難民予備軍を支援するためにどのような社員ボランティア、技術者ボランティアや寄付金集めができるかを検討する。

10.市民団体、大学、研究機関、シンクタンク、コンサルティング会社と協力し、災害で最も被害を受ける人々を対象に戦略を開発する。気候変動に対処する新たなパートナーシップの一部として、政府や国際機関などにロビー活動を行い、影響力を発揮すべきだ。

※オルタナ「CSRmonthly vol.7」(2013年4月5日発行)から抜粋


筆者プロフィール【リチャード・ウェルフォード】 CSR Asia創設者で経済学博士。20年にわたり CSRや環境管理を研究。香港大学教授を定年退職後、2010年にアジア工科大学(AIT)と共同事業であるアジア初のCSR修士課程を創設。国際ビジネス、環境管理、労働人権、企業の社会責任についての著書多数。

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