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CSR活動を後押しする従業員エンゲージメント――下田屋毅の欧州CSR最前線(33)

企業のミッション、ビジョンやCSR戦略を遂行する上で、最初の重要なステップは、従業員とのコミュニケーション、エンゲージメントである。これにより企業と従業員の間に相互の信頼を構築することができる。従業員のエンゲージメントを企業のCSR戦略の中心として実施することは、CSRのコミットメントを成功させる重要な役割を果たす。(在ロンドンCSRコンサルタント・下田屋毅)

■従業員エンゲージメントの成功事例

筆者は、2013年9月12、13日と2日間にわたり、ウクライナのキエフで開催された「ビジネスと人権研修」にオブザーバーとして参加する機会を得た。この研修の主催はウクライナ・グローバル・コンパクト・ネットワーク。英国人権コンサルタント会社トゥエンティ・フィフティがコンテンツを提供、ドイツ・グローバル・コンパクト・ネットワークがスポンサーになっているものだ。

キエフでの研修には、アルセロールミッタル社ウクライナ工場のコンプライアンス担当者が参加していた。同社は「国連ビジネスと人権に関する指導原則に則った人権プログラムの推進」において先進企業である。

彼女から私が研修内で幾度となく聞いた言葉は、「企業が倫理的であるかどうか」ということ。つまり、コンプライアンス担当の彼女でさえ、企業が倫理的であることが重要だと感じていて、コンプライアンスを超えたところに企業があるべきだという認識を持っている。そのことが彼女を通じて伝わってきた。

素晴らしいと感じたことは、アルセロールミッタル社が「人権プログラムの推進」で世界をけん引している状況にあり、そのような企業に勤めることができてうれしいと、彼女自身が話していたことである。

CSR・人権についての取り組みを、企業が実施するに当たって、その取り組みの中で必要なCSR教育が徹底されていること。そして、CSRの推進によって社員が会社に誇りをもっていること。この2点を、ウクライナ工場のコンプライアンス担当者から感じ取ることができたのは、収穫の一つであった。

このように従業員のエンゲージメントに取り組む際に効果的な方法として、次が挙げられる。

1.CSR教育
企業のCSR活動に従業員を巻き込むために、企業のCSRの概念とCSR戦略を全従業員に理解してもらうことは必須である。これによって企業全体のCSRに関するベクトルを一つに合わせることができるようになる。

CSR教育は、CSRに関するトレーニングやセミナー、ワークショップの企画や、Eメール、eラーニング、ウェビナーやハンドブックなどを活用することによって導入が可能である。

2.個々の従業員に対するCSRプログラム
多くの企業は、従業員に対して、環境保護やサステナビリティに関連するものなどCSRプログラムを持っている。従業員がカーボンフットプリントをどのように減らすか、エネルギー効率を上げるか、人権に配慮するかなど、彼らのアイデアを共有する場としてのさまざまなミーティングやクラブ、インフォーマルグループを設けることは重要である。

3.CSR戦略形成のための従業員のフィードバックの活用
企業のCSR戦略向上に関する従業員のアイデアをアンケートやフォーカスグループを通じてシェアすることは、企業と従業員の双方に良い影響を与える。

企業のCSR活動では、CSRの成功戦略を作り上げるために、自社に合ったベストの方法を見つけることが重要である。適切に導入された戦略は、多くの利益を企業にもたらすことになる。

上記に則って、効率的に従業員とのCSRコミュニケーション・エンゲージメントを実施すると、企業には次のメリットを期待することができる。

  • 従業員がCSR戦略を理解し活発に実践するようになる。
  • 従業員のモチベーションが上がり、生産性の向上、顧客へのより良いサービスの提供につながる。
  • 従業員満足度の向上、従業員の幸福感が仕事場に良い影響を与える。
  • 従業員の企業への信頼性の増加、ロイヤリティの向上により離職率が下がる。それによる、リクルート費用や従業員保持コスト、新規従業員への教育コストを削減できる。
  • 職場のメンタルヘルスケアが確保され、ストレス軽減につながり、傷病休業件数日数率が下がる。
  • 工場作業場での労働災害発生の防止につながる。
  • 従業員が画期的なアイデア等を思いつきやすい土壌ができる。
  • 究極的に従業員が、企業のCSR活動について、社外に大きく伝える需要な役割を果たすようになり、企業のレピュテーションが向上する。

CSR戦略を経営戦略として位置付け、従業員のCSRの浸透、理解、そして実行につなげることが、社内でCSRを推進する原動力になる。是非、身近なステークホルダーである従業員とのCSRコミュニケーション・エンゲージメントを見直し・強化をして、CSR活動推進の足掛かりとしていただきたい。

「志」のソーシャル・ビジネス・マガジン「オルタナ」

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