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[CSR]IT活用で業務効率を一気に改善、日本マイクロソフトのNPO支援

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ダンクソフトのサテライトオフィス
(徳島県神山町)。隣にいる
ように打ち合わせができる

「社会課題の解決に奔走する人々を支えたい」。その思いで、日本マイクロソフトはNPOの業務改善を支援している。持てる技術や経験を惜しみなく注ぎ、活動家たちの組織運営力を強化して、より良い社会の早期実現を目指すCSR活動だ。最先端のITは、組織の業務フローを塗り替え、無駄な書類を一掃し、交通費や時間や場所の大幅な節約を可能にした。さらに、空間を超えて人を結び付け、今までにない連携も創出している。(オルタナ編集委員=瀬戸内千代)


■ オフィスから紙とファクシミリが消えた

業務の電子化を徹底している会社がある。システム開発などを手掛ける社員18人のダンクソフトだ。オフィスにはファクスも書類の山も見当たらず、引き出しの無いデスクにモニターが2台ずつ載っている。

書類はすべてクラウドで共有し、2台のモニターで検索機能やコピー&ペーストを駆使して作業時間を短縮している。ファイル共有は、急な欠勤や長期休暇への対応も容易にし、育児中の社員を働きやすくした。

約2年かけて2008年までにペーパーレスを実現した星野晃一郎代表取締役は、「残る書類は契約書など対外的なものだけ。経費精算や仕入れの支払いなども、手数料無料で24時間送金できるネットバンクを使って、社員が直接オンラインで行っている」と話した。

ITを活用して紙や交通費の無駄を排除すると、時間と資金に余裕が生まれる。「より実質的な業務に集中できる」わけである。


■ マイクロソフトのNPO支援とは

同社の近未来的な働き方を支えるのは最先端のITだ。特にインターネットさえあればどこからでもアクセスできるクラウドサービス「Office365」の果たす役割は大きい。

日本マイクロソフトの牧野益巳業務執行役員社長室長は、「忙しく各地を飛び回り少人数で大きな課題に取り組んでいるNPOにこそ、ITを活用してほしい。業務効率が向上すれば、疲弊してバーンアウトしてしまう人を減らせるのではないか。効率化で浮いた時間を課題解決のために使っていただきたい」と語る。

確かに、クラウドサービスで最新の資料を一元管理できれば、事務所に戻る頻度が減る。また、地域住民の大切な個人情報もセキュリティ対策済みのクラウドに入れれば、紙の保管から解放されるだろう。しかし、日本の多くのNPOは財政難かつITにも疎い。

CSRとして2003年からNPO支援を展開している日本マイクロソフトは、NPOの業務改善が社会課題の解決を早めると考え、「テックスープジャパン」の寄贈プログラムに参加。大企業も使う本格的なソフトを、NPOには定価の4‐10%で提供している。

また、いつまでもファクスしか使えないNPOは、企業や自治体との協働も難しいため、2008年からは自治体と連携してNPO向けの研修も始めた。組織の基盤強化を目的に「見やすいニュースレターを出す」「イベント出欠や参加費を管理する」など実際のシーンに沿って、ITを利用した運営手法を初歩からレクチャーするのが特徴。研修後も補助テキストやビデオを無償で提供する。社員のプロボノによるコンサルタント的な個別支援も展開している。


■ 隣室気分のサテライトオフィス

ダンクソフトは、徳島県の神山町(かみやまちょう)の古民家にサテライトオフィスを開き、徳島市内にも拠点を置いた。県内全域に高速の光通信環境が整備されている徳島県は、クラウドサービスの利用に適している。

山間部のサテライトオフィスには、1、2カ月に1度、東京の社員が1週間ほど訪れる。普段は満員電車で通う社員が、山や清流に囲まれて仕事をする。「徳島に行くと社員の表情が豊かになる。製品のクオリティーにも反映されるはずだ」と星野氏もほほ笑む。

就業中は、Office365のオンライン会議システム「Lync(リンク)」によって、古民家の白壁には東京オフィスが、東京のモニターには徳島側の様子が常時映し出されている。広角カメラと高性能マイクがバーチャルな隣室を演出し、距離を忘れて気軽に会話できる。Office365を使いファイルも瞬時に共有。最先端のITは、過疎地の空き家をオフィスに変え、現地の若者4人の雇用も創出した。


■ ITでつながる地域のリーダーたち

ITは、NPO同士の横のつながりも強める。

日本マイクロソフトは岩手県と連携して、沿岸部のICTリーダー育成に取り組んできた。大船渡、釜石、宮古、久慈など各地で講座を展開。約50人のリーダーらに出会うことができた。運営を支援している盛岡のNPO法人ゴーフォワードジャパン大橋裕司理事兼事務局長は、活動のプラットフォームとなる「岩手ICTリーダー交流サイト」をOffice365を使って構築した。広く活動をPRするウェブサイトを作ると同時に、リーダー限定の交流ページを設けた。

大橋氏は「離れた地域にいるリーダーたちの『場』ができた。つながることがNPO同士の刺激になる。いつでもどこでも資料共有、掲示板、カレンダーや写真共有ができるメリットは大きい。組織や地域を超えて運営ノウハウをシェアし、個々の力をまとめて岩手を支えたい」と抱負を語った。


■ Office365を使えば、仕事が変わる

日本マイクロソフトは10月1日、国内のNPOに対し、「Microsoft Office 365」を無償または安価で提供する「Office 365 非営利団体向けプログラム」を開始した。

「Office365」は、Microsoft Office(WordやExcelなど)の最新版に情報共有のためのグループウェアが組み込まれたクラウドサービスで、電子メールやスケジュール共有、オンライン会議などが1つのサービスでできる。これにより、NPOの運営効率の改善を目指す。

今回、日本マイクロソフトが提供するプログラムのE1プランは、通常、1ユーザーあたり月額660円のところ、無償になる。E3プランは、通常、1ユーザーあたり月額1,800円のところ、今回のプログラムでは410円に割引される。申し込みは、日本マイクロソフト企業市民活動のウェブサイトで受け付けている。

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