地方スーパー福島屋、好調の秘密は「講座ビジネス」にあり
地方小売店舗が店内で試食会や料理教室を開催。消費者は商品を見る目を養い、店も消費者とコミュニケーションを重ねることで安定した売上が伸びる――。東京・羽村を中心に食品小売業などを手掛ける福島屋では、店舗スタッフが消費者を対象に連日講座を開き、食材の選び方や調理方法を伝授。そんな同店の「講座ビジネス」が注目を集めている。6日に都内で行われた「フードマーケティングセミナー」(一般社団法人フードトラストプロジェクト主催)で、同社の福島徹会長がその「極意」を開陳した。(オルタナ編集委員=斉藤円華)
■「商品を選ぶ力」を養う
「消費者は商品を売り込まれるのを嫌がる。講座を通じて消費者が商品を選ぶ力、料理を作る力を身につけることで毎日の食生活に喜びが生まれ、食の安全も守られる。
結果、消費者が店の商品を求めることにつながる」。福島氏は「講座ビジネス」の仕組みをこう説明する。
福島屋は羽村を中心にスーパーやレストラン、生花店など9店舗を運営。大手スーパーとの競争にもさらされながら、安売り広告などを用いずに過去40年間、連続黒字経営を達成している。
その「秘密」の一つが講座ビジネスだ。同社では「美味しい時間」と題して、店で扱う商品を使った料理教室や講座、パーティーを連日のように開催する。
「食べ物を選ぶスキルを持たない消費者は多い。店の商品を買ってほしいのは当然だが、その前に商品を選ぶ力を持ってほしいと考えた」(福島氏)。外部から講師を呼ばず、従業員がスタッフとして商品知識を学び、講座を運営。
社内のモチベーションが上がり、消費者と継続的にコミュニケーションを取ることも可能になったという。
消費者が商品を選ぶ力を身につけ、店も消費者のニーズをつぶさに知ることで、結果として売り上げの向上につながる。福島氏は講座ビジネスを「最強の販売方法」と自負する。
■多様性を尊重した商売
福島屋では「講座ビジネス」と並行して、商品知識を身につけた消費者が「買いたい」と思わせる仕組みづくりにも取り組む。農産物は生産者との直接取引で仕入れた自然栽培のものを陳列。
また、食品の安全性を商品ごとにシールで色分けして表示したりもしている。さらにパンや麺などの加工食品は素材を選び、自社生産することで商品力を高めた。
福島氏は現在のビジネス環境を「生産・加工・販売・消費が、それぞれの立場で幸せになろうと努力している。しかしそれは横のコミュニケーションがないと実らない」と分析。
その上で今後に向けて「『伝統文化』を今の技術レベルで再構築する時代が来ている。土着の物、あるいは個々が活性化して社会を作り、全体へと波及するような視点でビジネスを進めたい」と展望した。
セミナーのファシリテーターを務める法政大学の小川孔輔教授は「米国のスーパーは均質な商品を売っている。しかし人間の好き嫌いはみな違う。誰にとってもおいしいはあり得ない。
これからは多様性のあるフードシステムが必要で、福島屋はそうした時流に適合しているのではないか」と評価した。
「志」のソーシャル・ビジネス・マガジン「オルタナ」

「環境とCSRと志のビジネス情報誌」。CSR、LOHAS的なもの、環境保護やエコロジーなど、サステナビリティ(持続可能性)を希求する社会全般の動きを中心に、キャリア・ファッション・カルチャー・インテリアなど、幅広い分野にわたり情報発信を行う。
雑誌の他、CSR担当者とCSR経営者のためのニュースレーター「CSRmonthly」も発行。CSRの研究者や実務担当者など、約20名による最新情報を届けている。
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