Global CSR Topics

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シンガポールの民間セクターと廃棄物問題

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持続可能な事業の実践義務化に向けた最新の動向として、シンガポールでは、敷地面積5万平方フィート以上のショッピングモールと200室以上を有するホテルに対し、2015年第一四半期までに、その後は毎年、廃棄物とリサイクルに関するデータを、シンガポール環境局(NEA)に報告することを義務づける予定だ。報告を怠った企業には5千ドル以下の罰金、さらには1万ドルまでの罰金、または/ならびに3ヶ月までの実刑が科せられる。


NEAの統計によれば、シンガポールでは一般家庭のゴミと産業廃棄物の量が2012年には727万トンであったのに対し、2013年には785万トンと年々増加している。2013年にはその60%がリサイクルされ、37%は焼却され、3%は埋められた。シンガポールは持続可能な開発に向けた青写真2020で掲げられたリサイクル率65%達成に近づいているが、リサイクル率が低い大規模な廃棄物源からのリサイクルも促進しようとしている。特に現行のリサイクル率からの改善が必要なのは、紙/ダンボール類(54%)、ガラス(20%)、食品(13%)、プラスチック(11%)だ。ホテルや小売り産業からの廃棄物の大半はこうした廃棄物だ。

NEAの報道官は、報告義務化に関するストレイツ・タイムズ紙の取材に応え「大規模な商業施設では廃棄物処理のコストが電力料金の約3%にしか過ぎないため、廃棄物削減による節約への反応が概して鈍い。こうした施設から出る廃棄物に対して、経営陣が関心を寄せ、それに対する問題意識を維持してくれることを望んでいる」とした。

4月29日付の同紙の記事によれば、対象企業はこの政策を支持しており、地元企業は下記のように述べている:

  • サンテク・シティ・モールはテナントとの「協力体制」で廃棄物とリサイクルへの監視を強める。
  • マリーナ・ベイ・サンズ(MBS)は2014年末までに廃棄回避率30%達成をめざし、外部の廃棄物処理業者の協力を得て月2回の廃棄物リサイクル・レポートを作成し、四半期ごとに監査を実施する。MBSは2トンの食品廃棄物を清掃用水などにリサイクル使用するための設備を2台、導入した。
  • ローヤル・プラザ・オン・スコッツはすでに廃棄物処理業者から毎月レポートを受け取っており、リサイクル量を現行の年間2トンから増量させることを検討している。

この問題を単なる規制遵守か罰金かの選択ととらえたり、廃棄やリサイクル、再利用量の報告や廃棄物削減による節約とみるのではなく、企業(製造業もサービス業も)は視点を変え、廃棄物販売で利益を得ることはできないのだろうか。より良い廃棄物管理と廃棄物埋め立て削減に向けて、異なる産業の企業が協力しあうことはできないのだろうか。

自然の生態系では廃棄物は存在しない。ある種族が使わなかったものは他の種族の栄養素になるからだ。同様に、1989年にロバート・ニコラス・E.・ガロプーロスがサイエンティフィック・アメリカン誌の記事で提唱して普及させた産業生態系(IE)は、無垢の素材から完成された素材、部品、新製品、中古製品、製品の廃棄までの素材の全循環を最適効率化し、廃棄物を埋め立てるかわりに、産業の生態系に戻そうとするコンセプトである。

ブランデン・R.・アレンビーは、「インダストリアル・エコロジー:環境的に制約された世界のマテリアル・サイエンティスト」のなかで、ビジネスは廃棄物に対するアプローチで3つのカテゴリーに分類できる、とした。

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  • タイプ1-製造に資源を無差別に使用し、環境や地域社会への影響を考慮せずに廃棄物を生み出す直線型
  • タイプ2-一部の廃棄物は産業生態系のなかでリサイクルか再利用し、廃棄物の量を削減しているタイプで、現在の産業の大半はこの分類に入る。
  • タイプ3-エネルギーと廃棄物が常にリサイクル、再利用されており、外部資源への依存を削減し、循環の抜け穴を最小化しているタイプ

企業が製造前後の過程での資源利用を最大限化するというIEのアプローチをサポートするツールも存在する。製品ライフサイクル・アセスメント(LCA)、環境配慮設計(DfE)、持続可能性のための設計(DfS)、ゆりかごからゆりかごへとリサイクル配慮設計(DfR)を含む使用済み製品設計などで、廃棄物から生み出された副産物の再利用や、古くなった製品の部品を分解し、再利用することもできる。

製品を設計する際にそのコンセプトから材質選定、廃棄まで、環境への影響を注意深く考慮したビジネスの例がある。カーギルとPTTグローバル・ケミカルが出資している独立したネイチャーワークス社は100%再生可能資源から作られたバイオポリマーを初めて市場に提供した。インジオはボトル、食品のパッケージ、フィルムその他の製品製造に使えるバイオ・プラスチックだ。

既存のプラスチックと異なり、インジオは石油からではなく非遺伝子組み換えのコーン(甜菜、サトウキビ、麦なども使用可能)からのデキストロース(ぶどう糖)が原材料で、バイオ製品であり生物分解可能であることが、米国基準(ASTM)により認定されている。インジオの製造過程の全過程のフットプリントは様々な尺度でポリウレタン(PP) やテレフタル酸ポリエチレン (PET) といった従来のプラスチックより60%少なく、温室効果ガスの排出と再生可能でないエネルギーの製造利用という観点からは環境や気候変動への影響が少ないことは明らかだ。

使用済みインジオは、廃棄の際の環境への影響の防止と最小化を考慮されている。インジオは100%コンポスト可能(土中の微生物が栄養素として消費することで分解される)で、加水分解により飼料としてリサイクル可能で、テキスタイル、PET、ゴム、皮革などと比べて焼却中の熱発生も少なく、埋め立てられた場合のメタンガス排出もかなり少ない。

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企業が協働するにあたって、ある企業の廃棄物が、他社の重要な資源になりうることもある。下記は、廃棄物で他社が利益を得る例だ。米国を本拠とする国際アップサイクルとリサイクルの企業、テラサイクルはリサイクルが不可または困難な素材を新製品にする会社だ。アジア市場をターゲットとし、テラサイクルは2013年にモンデレズ・インターナショナルと手始めにニュージーランドで事業を開始した。

テラサイクルNZは消費者とあらゆる規模の企業からデザートなどのラッピング素材を集め、庭の敷石、ゴミ箱、公園のベンチなど家庭製品にアップサイクルする。テラサイクルは、歯磨きのチューブ、タバコの吸い殻、乳製品のチューブ、ネスプレッソのカプセルなども集めている。

廃棄物であり他社にとっての宝物を集める会社は他にもある。アディダスの靴用部品のサプライヤーのフラマスは、無垢のポリスチレンの原材料で靴の内部でヒールを構成するパーツ(ヒール・カウンター)を1億1千万足生産するが、代替資源を求め、食品のパッケージのリサイクル資源を50%以上使用したフラマプレンECOヒール・カウンターを製造することに至った。これで埋められるポリスチレン廃棄物を1500トン削減できることになる。アディダス・シューズの2014年春夏コレクションには新たなフラマプレンECOヒール・カウンターが使われている。

IEの導入は難題で既存の企業のインセンティブとは矛盾するように見えるかもしれない。製品の環境負荷をその最初から最後まで削減するための戦略に向けた大規模なリサーチと導入には大規模な投資が必要だ。しかし一方では、環境だけでなく企業の評判にもプラスになり、相互利益にもなるような企業間の新たな同盟や提携も生まれるかもしれない。製品設計、使用素材、廃棄、資金繰りの課題も含めて廃棄物を戦略的に考慮すれば、規制遵守を超えて、持続可能で、競争力増加にもなる資源をもたらすことができるだろう。

写真提供:http://www.prismtech.com/



by Justin Teo
CSRアジア週刊ニュース日本語翻訳版

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