Global CSR Topics

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サプライチェーンにおける森林破壊のリスク

世界中で16億人を超える人々が食料、薬、燃料、仕事や生活の上で森林に依存している。地球の野生動物の半数、植物の3分の2にあたる3千万種の植物や動物が棲息する森林は、生物多様性を保護するために必須である。森林は気候の調整役となり、地球にとっては海に次ぐ炭素の貯蔵庫といえる。森林が伐採されたり、焼滅してしまうと、そこに溜まっていた大量の二酸化炭素が大気に排出される。世界で1年間に排出される二酸化炭素量の15%が森林破壊によるもので、その量は世界の運輸業全体の排出量を上回る。多くの企業はサプライチェーンを通じては森林から必要な原料を得ている。

そうしたなか、CDPは、森林破壊が進行している国々から原料を調達している企業が直面するサプライチェーンのリスクを指摘した新たな報告書を発表した。CDPの森林プログラムの最新データによると、約90%の企業は、主要な商品に関して持続可能な調達に移行することでリスクを軽減出来るという。報告書では森林リスクのある商品に関する情報開示の事例を紹介している。

世界の森林破壊の主な要因は畜産物、パーム油、木材と大豆の4つの分野の産業といわれている。こうしたものは食品から燃料まで様々な業種の多くの企業のサプライチェーンに関係している。過去10年にわたり、毎年1300万ヘクタールの森林が失われており、地球温暖化による気温の上昇を2度以下に抑えるためには、企業は早急に製品と森林破壊、気候変動の関係を断つ必要がある。

同報告書では森林破壊と森林リスクのある商品についての透明性と説明責任を求める投資家の声に応えた企業、市場資本では3兆米ドルにあたる世界152の企業の情報開示を検証している。こうした企業は、サプライチェーン全体が森林破壊に関与しないと公表することで気候関連リスクを軽減する最初のステップになることを知っている。企業が森林破壊に関する誓約をしていることから、企業間で認識が高まっていることがわかる。しかし、報告書を見る限り、誓約したことを実際の行動に移すために企業がすべきことは多い。

企業は森林破壊への対応をチャンスととらえることができる。森林破壊に関する統合的な戦略を実現した企業は少ないが、CDPの森林データによれば、90%近くの企業が、リスクのある商品を一つでも持続可能な調達にすればチャンスが生まれることを認識している。例えばブリティッシュ・エアウェイズは消費者の間で環境問題の認識が高まっていることから、森林破壊を最小限にするような行動は市場競争にとって有利になる、と報告している。

企業にCDPの森林プログラムを通じて開示を求める投資家の署名数は30%増であるが、多くの企業は森林リスクに関して実際に行動を起していないのが現実である。投資家はこうした問題に敏感になっており、投資家やステークホルダーに情報開示しない企業には、自社のサプライチェーンの脆弱さを露呈させるリスクがある。

報告書では、エルメス投資マネージメントが次のように述べている。「長期投資家にとって、気候関連は我々が投資する市場の構造や制度に影響し、従って我々のポートフォリオの価値にも影響すると言える。今日の投資に関する意思決定を意義あるものにし未来への価値創造とするためには、気候変動や、その原因となる森林破壊は、企業にとって中心的な課題でなければならない。森林破壊の問題に取り組み、サプライチェーンから持続可能でない森林に関わる事業を廃絶することにしっかり努力するように、我々は企業に迫っている」。

同報告書は、今後投資家やステークホルダーが、企業に対しサプライチェーンが森林破壊に影響していないかを検討するようにさらに圧力をかけるとみている。森林破壊をもたらすリスクの有無を査定し、確実に防げるよう、バリューチェーンの評価を適切に行うことが企業にとって必要だ。特に、リスクが高いと指摘された上記4つの分野の産業にサプライチェーンが関係している場合には重要となる。しかし、企業はこれをチャンスととらえ、持続可能な調達への企業方針に森林破壊の問題を加え、森林の消滅を防げるよう、その購買力を発揮すべきである。



by Richard Welford
CSRアジア週刊ニュース日本語翻訳版

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